MS-10 ペズン・ドワッジ

(PEZN DWADGE)


ホバー移動により画期的な高速移動を行うMS-09は地上の各戦線において大活躍しただけでなく、ツィマッド社ジオニックに匹敵する巨大メーカーに成長させた。これまでMS開発をジオニック一辺倒に頼っていたジオン軍もこの新展開に注目し、ツィマッドを含むMS新規参入メーカーを集めて共同研究を行う一大プロジェクトを開始した。これがペズン計画である。

このプロジェクト名はジオンの小惑星基地ペズンを中心に行われたことに由来し、その研究施設的性格から存在自体が極秘とされていた。ここに集められたメーカーはツィマッド、MIPスウィネンなどで、ジオニック的発想にはない新機軸のMS開発が期待された。しかし一方ではMS-11(後のYMS-14)の開発が遅れていたジオニック開発陣を刺激する意味もあったとされている。

ペズン計画に参加した技術陣の士気は非常に高かった。中でもドムを成功させたツィマッドはこのプロジェクトに懸けており、複数の新開発を進めるとともに、更なるドムの改良から手をつけることとなった。当時ドムは高い機動力と操作性で地上用MSの頂点を極めていたが、前線からは奇妙な報告が届いていた。

それは熟練パイロットほどドムではなくグフを希望するという傾向で、これはある程度根拠のあることであった。高い機動力と重装甲を持つドムは砲撃戦を得意とする一方、グフには高い白兵・格闘能力があったからである。これは高度な運動アルゴリズムとMS駆動のノウハウに支えられているからで、MSそのものを誕生させたジオニックに一日の長があることは仕方がないことであった。

ツィマッドはこの点を考慮し、格闘能力の強化を中心にドムの改良を始めた。完成予定のMSには「ドムを超越したもの」という意味を込めて「ドワッジ」という名称が予定されていた。名称が機体に先行するのは極めて異例なことであり、当時の期待の高さがうかがえる。開発計画は更に発展し、ドムを超える新MSを目指す「ドワッジ計画」が、ペズン計画内の小プロジェクトとしてスタートした。

改修にあたってはまず各部の装甲を整理・強化し、必要な部分により集中させた。結果として全体の装甲は軽減されているが、最大装甲厚はドムを上回っている。またドム最大の特徴であるホバー能力は残したものの、その能力は大幅に縮小された。これによって脚部はシェイプアップされて自由度が増し、敵MSを「蹴る」ことも可能となっている。また胸部の拡散ビーム砲も出力強化が図られたが、エネルギーCAPを使用していないため、やはり威力は低かった。

このMSの最大の特徴は、両腕に装備したヒートアーマーであろう。下腕部を覆う形で取り付けられた一枚板の装甲は大変厚く頑丈なもので、3本の小型スパイクが取り付けられている。これだけでも格闘戦では有効なものだが、ヒートアーマーの最大の特徴は、その名の通り自ら発熱して対象物を溶かすことができる点にあった。これはヒートホークやヒートサーベルと全く同じ原理であり、ホバー能力を縮小したおかげで余剰となったジェネレーター出力を利用したものである。

こうして完成した機体は予定通りドワッジと命名され、量産に移された。しかし前線での評判は芳しくなく、グフはおろかドムよりも敬遠されるという結果に終わっている。原因は様々だが、格闘性能を重視した結果機体のバランスを大きく崩してしまったことが挙げられるだろう。元来ドムが持っていた良さが失われただけでなく、代わりに獲得した格闘性能も決してそれを埋め合わせる程のものではなかったようである。

結果としてMS-10は失敗に終わったが、ドワッジ計画そのものが解消された訳ではなかった。その後もドムの改良は続けられ、最終的にMS-09Gでドムシリーズは完成されている。格闘性能に関してはMS-11アクトザクを経たMS-15ギャンで見事に昇華された。ペズン計画当初の意気込みはMS-10で空回りした形にはなったが、その後のツィマッドはこの反省を見事に生かしたと言えよう。このMSは当初ドワッジと呼称されていたが、MS-09Gの完成に伴い「ペズン・ドワッジ」として区別されている。

ペズン・ドワッジの武装には改良型ジャイアント・バズとヒートサーベルが用意されていた。また固定武装として胸部に拡散ビーム砲を装備している。


MS-10 ペズン・ドワッジ

全 高 ? m 自重量 ? t 総出力 ? kw センサー

有効半径

? m
頭頂高 ? m 総重量 ? t 総推力 ? t


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