YMS-15 プロトギャン

(PROTOGANN)


MS-09Rリックドムが暫定的に主力MSに採用されてからも、本格的な次期主力MSの開発は進められていた。本命はジオニック社が開発していたYMS-14であったが、MS-09ドムシリーズの成功でMS開発に自信をつけつつあったツィマッド社は自社開発のMSを以って競合に参加することを決定していた。MS-09Rに次いでこの競合に勝てれば、MS生産の主導権は完全にツィマッド社に移るはずであった。

ツィマッド社は当初YMS-11を次期主力機選定に提出する予定であった。しかし連邦製のMSが戦線に登場すると、状況は一変する。連邦のRXシリーズは戦艦クラスのビーム兵器を標準装備しており、急遽次期主力MSもビーム兵器の装備が絶対条件とされたのである。一方ザクをベースに総合的なブラッシュアップを図ったYMS-11は、所詮ザクの発展機である中型MSでしかなかった。ジェネレーターもMS-09Rのものを流用しており、ビーム兵器を使用するには出力不足と思われた。

そこでツィマッド社では強力なジェネレーターを搭載し、ビーム兵器を使用できる完全な新設計の機体を急遽起すこととなった。YMS-11の開発は一時凍結され、ツィマッド社の総力を挙げて新機体の開発が進められた。機体コンセプトは当時伝説に近い戦績を挙げつつあった連邦のRXシリーズに対抗するべく、高い格闘性能を持った白兵戦用MSとされた。また駆動方式にはYMS-11で開発に成功したフィールドモーターを採用し、滑らかで軽快な駆動を可能としていた。

完成した試作機は全高が19.9mとジオニックのYMS-14を凌ぐ大型MSとなったが、ジェネレーター出力はやや劣っている。エネルギーCAP技術を応用したジオン初のビームサーベルは後発のYMS-14のものよりビームの収束率が悪く、ジェネレーター出力の消費も激しいため、ビーム砲の同時使用は不可能であった。しかし完全な白兵戦用MSとして設計されたため、問題はないとされた。更にMS-11で確立されたマグネット・コーティング技術も採用され、全ての駆動部に同処理を施したフル・マグネットコーティング機として高い運動性能を実現している。試作機は全部で7機作られ、グラナダ基地においてYMS-14との競合に臨んだ。

YMS-15はテストでも良好な結果を示し、特にその人間的な動きを活かした格闘性能は驚異的ですらあった。またアクトザクシリーズ以来の操作性の良さも引き継がれ、パイロット経験の少ない者でもベテランパイロットのように扱うことが出来た。しかし、ビームサーベルを主武装とする純粋な白兵戦用MSであることがネックとなった。使用する火器はMS-06F用のものであり、RX-78並みの威力を持つビームライフルを使用できるYMS-14と比較すると火力で劣っているのは明らかだった。また推進力などの機動性能が劣っている点も指摘された。

更に駆動方式でフィールドモーターを採用している点も問題とされた。就役しているジオンのMSはほとんどが流体パルスシステムを採用しており、前線での整備性や生産性で混乱を起すのは確実であった。既に各MSの操縦方式や部品の規格を統一する統合整備計画(第2期生産計画)の青写真が出来上がっていた時期でもありこれ以上の混乱は避けねばならなかった。ツィマッドとしてはそうしたデメリットを超える価値がフィールドモーターにあると考えていたが、テストでそれを十分に証明することはできなかった。

結局次期主力機は兵器としてのトータルバランスに優れたジオニックのYMS-14に決まり、YMS-15は社内における開発・研究用として引き取られることになった。しかし中世の騎士を思わせる趣味的なデザインが一部の将官たちの目に止まり、仕様を変更して少数ながら量産されている。YMS-15の武装は大型ビームサーベルのみであったが、テストでは暫定的にMMP-78型120mmマシンガンやザクバズーカなどMS-06F用の火器を使用していた。


YMS-15 プロトギャン

全 高 19.9m 自重量 52.7t 総出力 1360kw センサー

有効半径

4400m
頭頂高 19.9m 総重量 68.6t 総推力 56.2t


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