化け狐のアムステルダム出張報告

 

その7:歳月は人を待たない

 さて、週末である。
 列車の到着時刻は、既にチケットを買った時点で、ホストファミリーに電話で連絡してある。
 電話の向こうでホストマザーは明るく言った。
「じゃあ、待ってるわ♪」
 1泊分の荷物をバッグに詰めて、いざ、出発である。
 アムステルダム中央駅から電車で1時間半。
 降り立った国境の街の駅には、ホストマザーが1番下の女の子を連れてお迎えに来てくれていた。(この末っ子、私がホームステイしていたときにはまだ生まれていなかったのだ。写真は時々送ってくれていたのだが、すっかりにぎやかなお子様に育っていて、驚いた。)
 そこから更に車で15分。数年前に1ヵ月間馴染んだ街並みは、まるで時を止めたように全く変わっていなかったが、それからが驚きの連続だった。
 丁度町のお祭りだとかで、他の子供達は全員それに参加しているとのこと。
 で、着飾った子供達を見に広場にいったのだが……
 お祭りは、馬車を使ってのパレードがあったり、大きな旗を使っての演舞があったりして、小さいながらも見ていてとても楽しかったのだが、ショックだったことに、最初私は、長男が見分けられなかったのである!
 以前はお世辞にもスリムとは言えなかった彼は、すっかり痩せて背も伸びて、将来有望な少年になっていた(^^)。
 次男も相変わらず性格はかわいいままに見目良い少年に育っていてこの子も将来有望(^^)。長女は髪を伸ばしてちょっとしたレディになっていたし、三男も背が伸びて『お兄ちゃん』になっていて(子供が5人いるのだ、私のホストファミリーは・笑)、時間の流れをひしひしと感じてしまった。
 午後は、ホストマザーのご両親に、同じくホストマザーのお姉さん一家など、親しかった人達が集まってくれて、総勢17人のお茶会である。
 改装して私がいた頃とは間取りが相当変わっていたり、その頃にはいなかったがいつのまにか5匹(!)もいたりしたので、一通り家中を案内してもらって、その後はもう、お茶会の準備で大わらわ。ホストマザーが山ほど焼いてくれてあったケーキを切り分けてケーキ皿に乗せ、食器を揃え、コーヒーを淹れ、その他の飲み物を準備した頃……懐かしい顔がやってきた。
 再会の挨拶は、"Hug" だ。
「変わってないねぇ〜」「そっちこそ!」
 そこからはもう、話して、飲んで、食べて、また話して。
 夜はライン河沿いをサイクリングしたり、写真を見せてもらったり、翌日は列車の時間までゲームをしたりお祭りを見に行ったりと、懐かしいやらにぎやかやらで、慌ただしいながらも、本当に楽しい2日間だった。

 

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その8:ゲイゲーム98

 私は全く知らなかったのだが、実は夏のアムステルダムではゲイさんたちの大集会があるらしい。
 その名も、『ゲイゲーム』(なんてストレートな・^^;)。
 どうやら、8月1日から約1週間、世界中から同性の好きな方々が集まってオリンピックのようなことをするらしいのだが、その間アムステルダム市内がそれ一色に染まるらしいのである。
 何しろ、既に『ゲイゲーム』のポスターが街のいたるところに貼ってある。テレビではゲイゲームのCMをやっている。市の近代美術館ではそれらを題材にした美術展が始まるし、街には『Welcom! Gay Game 98』なる垂れ幕がはためいている。
 聞けば、それに参加する方々で、既にホテルは予約でいっぱいとのこと。
 とある先輩など、電話をかける度に「ねぇねぇ、ゲイ見た?」と聞いてきたのだが、そんなこと外見だけで判別つけられるワケがない(苦笑)。
 おかげで、男性が2人以上で歩いていると、つい「そうかな?」と思ってしまって困った困った(苦笑)。
 極めつけにして出色だったのが、とあるポスターだった。
 曰く、

『8月1日から7日
 夜11時から明け方4時まで
 ヨーロッパ最大のゲイパーティ!』

 ポスターの中では、銀河をバックに裸のお兄さん2人が夢見るようなまなざしで微笑んでいた(^^;;;)。
 このポスター、トラムの停留所にも張ってあったので、見かける度に「話のネタに、写真撮っておこうかなぁ……」とは思ったのだが、流石に人目のある中でおもむろにカメラを取り出す勇気は、私にはなかった。
 今思えば、返す返すも口惜しい。

 

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