その5:ファンデル公園を彷徨って
ホテルの裏手に、ファンデル公園という市内最大の公園があった。
何が『最大』って、勿論面積である。
まず、池というのが失礼に思えるくらいに広い池がある。その周囲や園内を縫うように散歩道がぐるっと巡っている。広場が至る所にあって、薔薇園(本物の紫の薔薇もあった)もある。動物が放し飼いになっているスペースには、ウサギや馬に、ラマ(!)までいて、ここだけでも下手な学校のグラウンドより確実に広い。外れにはレストラン(の、ようなもの)があって、トドメのように野外ライブステージまであるのだ。
広場ではサッカーやインラインスケートを楽しむ人達が大勢いたし、ジョギングしている人もたくさん見かけた。私は景色を眺めつつ寄り道しながら散歩していたが、ぶらぶら歩いて軽く1時間はつぶせるので、食後の散歩にはもってこいである。
仕事が早く終わって、夕食を済ませても8時過ぎにしかならなかった日など、よく散歩に行った。
……どうして8時過ぎ『にしかならなかった』なんて言うんだ、と、思った方、いますか?
解説しましょう。
ヨーロッパは、緯度が高い。それ故に、真夏の日暮れは、9時過ぎ。10時くらいにならないと、暗くならないのである。8時なんて明るい明るい。お陰で、8時頃に部屋にいると何故か外に行かないといけない気分になるのである。
恐るべし、夏のヨーロッパ。
余談だが……。
広場でサッカーをしている青少年、私が通りかかるとよくこんなことを言った。
「おい、気を付けろよ。女の子が通るぞ!」
全財産賭けたっていい。彼等は、私より年下である。それでも、もとより欧米人に言わせれば年齢不詳なアジア人種の、しかも平均以下の身長しか持ち合わせていない私は、彼等の目には『年下』と映ったらしい。
きっと彼等はこう思ったのだろう。
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ちっちゃい女の子にボールなんて当てちゃいけない。相手が大人でも勿論気を付けなきゃいけないが、子供に当てちゃー、絶対いけない。
だが。
「ありがとう。ごめんね」
微笑みながら答えていた私が、心の中で
(すまんなー。『女の子』じゃねーんだ。悪ぃなー、騙してるみたいで)
と呟いていたのを、勿論心優しい彼等は知る由もない。
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その6:国境越えてドイツに行こう
ウィークデーは山のような仕事に追われても、週末はフリーである(ちゃんと仕事はしてます・笑)。
私は、大学時代1ヵ月だけだが、ドイツ=オランダ国境近くのライン河沿の家にホームステイさせてもらっていたことがある。で、今回の出張が決定した直後に、速攻でその家族に手紙を出した。
「今度出張でオランダ行くんだけど……まだ週末自由になるかどうか判らないんだけど、もしフリーの週末があるようだったら遊びに行っていい?」
帰ってきた答えは、「どのくらい泊まれるの?」(だから、仕事だって・笑)。
自由に過ごせる週末を1回挟むことが判明したので、早速『Thomas
Cookヨーロッパ列車時刻表』を買い込んでにらめっこしつつ、遊びに行く計画を立てた。
まずは、チケット入手。
週末の国際列車(アムステルダム=ケルン間)なので、念のため予約をとっておくことにしたのだが……これが正解だった。
アムステルダム中央駅では、国際列車のチケットは専用の窓口に並んで買うことになっている。私も並んで順番を待った。
が、この順番がなかなか回ってこないのだ。
原因は、ただでさえ購入希望者が多いところにもってきて、大概の人が、『路線や経由地を決めないまま買いにくる』から。
つまり、窓口で係員と相談を始めるわけだ、どの路線がいいとか、どこをまわっていくとか。
1人10分や15分平気で相談するから、並んでからチケット入手までに下手をすると1時間くらいかかってしまうのである。
余程時間に余裕がない限り、アムステルダム中央駅から国際列車に乗ろうと思うなら「当日行ってチケットとればいいや」なんて考えは持たないほうが賢明、だと、私は思う。
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