YMS-14 試作型ゲルググ

(PROTOTYPE GELGOOG)


MS-06FザクUの暫定的な後継機としてMS-09Rの採用が決まってからも、本格的な次期主力汎用MSであるMS-11の開発は続いていた。この時期のジオンMS開発には連邦軍のRXタイプが戦線に登場し、顕著な活躍を続けていたことに大きく影響を受けている。特に脅威だったのは、MSが戦艦クラスのビーム兵器を標準装備していたことであり、当然MS-11にもビーム兵器の搭載が求められた。

ジオニック社はMS-09Rと競合して敗れたMS-06R-2の発展型、MS-06R-3によって基礎データはほとんど収集し終わっていたが、MSにビーム兵器の使用を可能とさせるエネルギーCAP技術の開発が大幅に遅れていた。エネルギーCAP技術はジオンから連邦に亡命したミノフスキー博士によって初めて実用化されたが、ジオン国内ではMS-11機体の完成から3ヶ月遅れのUC0079年10月にようやく完成にこぎつけた。この時点でMS-11は他の宇宙戦用特殊MSにナンバーを移すため、MS-14と変更されていた。

完成したYMS-14の開発コンセプトは、RXタイプなどの連邦製MSの影響を強く受けたものだった。第一にエネルギーCAP技術を応用したビーム兵器の標準装備化である。メガ粒子砲としてのビームライフルは文字通り戦艦クラスの出力を誇り、大戦初期のMSには到底考えられない強力な武装であった。また、MSならではの装備であるビームサーベルは近接戦闘において絶大な威力を発揮した。ゲルググに装備されたアルバート社製のツインビームソードは他のどのMSに装備されたビームサーベルと比べても際立って特異な形状をしており、高速で振り回すことによって独特な攻撃が可能であった。

そして連邦的コンセプトの第二は装甲の分離化である。全身に重装甲を施すよりも、盾(シールド)を装備した方が、一見原始的ながら効果的な防禦が可能なことは前線からの報告で判明していた。実際、地上戦において重装甲のドムよりもシールドを装備したグフの方が熟練パイロットに好まれたという。MS-14にはグフよりもはるかに大型のシールドが用意され、RX-78タイプを模し覗き窓としてスリットが設けられている。また、当然ながら大気圏内での運用も想定されており、機動力を向上させるため両腕にジェットエンジン(補助推進機)を装着できるよう設計されていた。しかし実効性は低いものとされ、多くは取り外されダミーとなっている。

また、連邦の影響は運用の面においても見られる。一つは白兵戦用MSと中・長距離支援用MSのコンビネーションである。これは両者を小隊クラスの戦闘単位のなかで同時に運用することで互いの欠点を補完し、高い戦果を目指したもので、連邦軍の中でも驚異的な戦果を挙げていた第13独立部隊の影響が大きいと思われる。このためゲルググは、背部のランドセルを換装することで、高機動タイプのB型、中距離支援型のC型として使用することができるように設計されていた。

もう一つはニュータイプパイロットの明確化に伴うエース部隊の確立である。これも第13独立部隊の影響と思われるが、少数精鋭の集中的使用という構想は間もなく具現化された。突撃機動軍付の本国要請で各部隊のエース級のパイロットたちがグラナダへ招集され、ジョニー・ライデン少佐、トーマス・クルツ中尉、ジェラルド・サカイ大尉など古参を含む31名が集められた。

YMS-14は先行量産という形で25機が試作され、早速グラナダにおいてツィマッド社のYMS-15との競合に臨んだ。火力・機動力・汎用性・生産性に優れたYMS-14はその性能を十分に発揮し、YMS-15を退けて見事次期主力汎用機として採用された。25機の内1機はシャア・アズナブル大佐に渡され、残りの24機は前述のエース部隊で使用されている。

アズナブル大佐によって使用された機体は頭部に指揮官機を示すジオン伝統の飾り棒がつけられており、後にシャア専用ゲルググ(MS-14S)として紹介されているのはこの機体である。この機体は新型のニュータイプ専用モビルアーマー、MAN-08エルメスのテストに同行しており、これがゲルググシリーズ初の実戦参加と見られる。テキサスコロニー及びその宙域で行われたこのテストにおいて大佐は連邦のRX-78-2と接触・交戦し、右腕を損失している。その後のア・バオア・クー攻防戦ではこの修理が間に合わず、大佐は別の機体で出撃した。なお、大佐のYMS-14には冷却系統に問題があったとされている。

なお、この部隊で使用されたYMS-14はそれぞれのパイロットに応じてチューニングが施されており、その後も順次MS-14Aのパーツと交換されていったようである。武装は専用のビームライフルとアルバート社製のなぎなた式ツインビームソード、専用のシールドが用意されていた。


YMS-14 試作型ゲルググ

全 高 19.6m 自重量 42.1t 総出力 1440kw センサー

有効半径

6300m
頭頂高 19.2m 総重量 73.3t 総推力 61.5t


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