突発小話『もらっとく三蔵』 ──コンコン。 この太陽を、離さない。
躊躇いがちなノックに続いて聞き慣れた声がちいさく囁く。
「…………さんぞー?」
ドアを開けた途端視界に飛び込んできたモノに頭を抱えた。
「……………。なんだ、猿、ソレは」
「あの……悟浄と八戒が……」
「あいつらが、何だって?」
「三蔵の誕生日プレゼント、どうしようって悩んでたら、悟浄と八戒が、三蔵のこと好きかって、俺に訊くから……」
「……で?」
「それで、うんって答えたら……」
「答えたら?」
「そしたら、こうしてみたらって……」
(それで今のコイツのこの姿か。ナニを考えているんだあいつらは……っ!)
いや。連中の考えていることなど一目瞭然だった。
コイツの、今の、この姿──細い首にふんわりと結ばれたリボン。茶色の髪と金の瞳に、案外と似合う、薄紫。
黙り込んだのを、不快の証拠と受け取ったのだろうか。金目の小猿が俯く。
「ははっ……やっぱいらねーよな、こんなの……ごめん」
「お前は?」
「え?」
「お前はどうなんだ。連中にそうしろと言われたから来たのか。」
来たいと思ったからでなく? もしもそうなら、そんなモノはいらない。
紡ぎだした言葉に続く苦いモノを、けれど打ち砕くように悟空が。迷いのない瞳で。
「違う。……違う、よ、さんぞー。俺、おれは……」
──太陽。そんな言葉が心に浮かんだ。
「……なら」
「え……?」
見開かれる金に、手を伸ばす。
「それなら……もらっとく。」
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