MS-15 ギャン

(GANN)


ジオニックのYMS-14に対抗する形で次期主力MSの競合に提出されたYMS-15は、高い白兵戦能力を持ちながら生産性や火力など主力MSとしてのバランスに欠けていたために不採用となった。試作された7機はツィマッド社において更なる研究・改良を進められる予定であったが、意外なことにその騎士的なデザインが評価され、各方面から引き合いがくるようになった。

最も早かったのが突撃機動軍のマ・クベ大佐である。大戦初期の大佐は地球攻撃軍に所属しており、地球最大の鉱物資源基地においてレアメタルをはじめとする戦略物資の打ち上げを行っていた。また連邦軍の一大反抗作戦であるオデッサ作戦の際には基地の最高責任者として戦闘を指揮している。この時連邦軍に大きく傾いた戦局を一気に挽回すべく、南極条約を無視して独断で核兵器を投入したエピソードは有名である。しかしこの英断も結局は失敗に終わり、オデッサの戦闘は連邦軍の勝利に終わった。大佐はその後宇宙に上がり、グラナダ基地を拠点とする突撃機動軍第7師団に所属している。

大佐は元々ジオンの中でも政治家タイプの軍人で、自らMSに搭乗して前線を駆け回るようなことはほとんどなかった。一応MSパイロットのライセンスは持っており、地球時代にもグフのカスタム機を所有しているが、もっぱら閲兵式などに参加するためのものであった。従って大佐のパイロットとしての戦績は特にない。宇宙に上がってからの大佐は自機を所有することはなかったが、グラナダにおいて行われた次期主力MS選定を視察した際にYMS-15を高く評価し、キシリア少将を通して自らの専用機とした。

大佐に譲渡されるにあたっては、ツィマッド社の手で若干の改修が行われた。頭部には指揮官用アンテナが追加され、各部の装甲も変更されて、より騎士的なデザインが強調されている。また指摘されていた火力の不足を補うため、専用の武装が追加された。これはシールドの形状を模したミサイルランチャーとでも言うべきもので、56発のシールドミサイルと12発のハイドボムを発射可能であった。シールドミサイルは超小型の針状ミサイルで、大量に同時発射することで目標をぼろぼろにすることができ、特に対MS近接戦闘において絶大な威力を発揮する。

またハイドボムは主に宇宙空間において使用される浮遊機雷で、発射後は自動的に一定の間隔をおいて滞空する。1基が接触によって爆発すると周辺の機雷も連鎖して爆発し、大きなダメージを与える。ハイドボムと呼ばれるのは機雷のステルス性が極めて高く、目視でも発見しづらいためである。

なおこれらを発射するランチャーはより騎士的なイメージを強調するためか、シールドの形状を模している。しかし実際はミサイルや機雷を満載した爆発物の塊であり、従ってこれを盾として使用することは自機にとって法外かつ一方的に危険な行為と言え、一切のメリットは感じられない。これらの特異な装備は大佐自身のアイデアによって開発された言わばワンメイクの武装であり、それ以外のMSが使用した記録はない。

こうして完成した機体はMS-15として正式採用され、大佐に引き渡された。大佐はこの機体を駆って当時驚異的な戦果を挙げていた連邦軍のRX-78-2に単身戦いを挑んでいる。この戦闘はテキサスコロニーで行われ、大佐はギャンの性能を十二分に活用した戦略家らしい戦いで善戦したものの撃破され、戦死した。

この大佐らしくない行動には様々な憶測があるが、オデッサ戦の敗退以降、閑職に近い待遇にあった大佐がその地位を取り戻すため、多少の無理を押してでも不得意なMS戦闘に挑んだのではないか、という説が一般的である。ニュータイプの実戦投入に成功し、また自らもニュータイプとして高い戦果を挙げていたシャア・アズナブル大佐に対する焦りもあったとされ、作戦対象にRX-78-2を選んだのもこのためと思われる(シャア大佐は度々このRX-78-2と交戦しつつも、撃破できないでいた)。

最終的には撃破されたものの、ギャンの性能は十分なものであった。特にその扱いやすさ、操作性の高さについては、MSパイロットとしての実績がほとんどないマ・クベ大佐があのRX-78-2と対等に渡り合うことができた事実が証明している。フィールドモーター駆動とマグネット・コーティング技術による軽快な運動性能は、ビームサーベルを使ってフェンシングのようなすばやい突きを連続して繰り出し、遂にはガンダムの側頭部に損傷を与えている。本来RXシリーズとの白兵戦を主眼として開発されたMS-15ギャンを象徴した一瞬と言えるだろう。


MS-15 ギャン

全 高 19.9m 自重量 52.7t 総出力 1360kw センサー

有効半径

4400m
頭頂高 19.9m 総重量 68.6t 総推力 56.2t


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