MS-06V ザクタンク

(ZAKUTANK)


モビルスーツが人間型をしている主な理由は、宇宙空間においてAMBACを行うためであるが、そこから得られたメリットは実に大きい。その一つが通常兵器にない汎用性、作業性の高さである。人間とほぼ同じ動作が可能で、5本指の手を持つMSは、戦闘そのものだけでなく戦争遂行上必要な土木・建設作業をも軽々とこなすことが出来た。これはMS-05ザクTの開発当初から既に織り込まれていたことで、ブリティッシュ作戦では核パルスエンジンの設置作業にザクが活躍していたし、ザクによるザクの修理・整備はもちろん、主兵装であるMMP-78型120mmマシンガン(通称ザクマシンガン)の分解・整備・組み立てすら可能であった。

一方UC0079年2月から始まった地球侵攻作戦において、MSは戦力の中心ではあったものの、その全てではなかった。地上でのMSは戦車や航空機といった通常兵器と連携を取りながらでないと、効果的な運用がなされなかったのである。その中でMSは万能兵器的な運用はされず、その重装甲と大火力を活かしてもっぱら戦闘のみに投入されていた。

ある程度予想されていたことだが、地上戦闘は宇宙のように圧倒的という訳にはいかず、損傷を受けるMSも少なくなかった。ある程度の損傷はもちろんザクによって修理が可能であったが、深刻な損傷を受け戦闘不能となったMSの処分は大きな問題であった。MSはその性能に違わぬ超高級兵器であり、そうやすやすと廃棄する訳にはいかなかったのである。

そこで戦闘能力の欠如したMSを再利用すべく、兵站や工兵部門への転換が行われた。精密で高い作業能力を持つMSのマニュピレーターを純粋な作業機として再利用したのである。一方で戦闘不能となったMSの殆どは脚部を中心とした歩行系の損害を被ったものであった。大質量を持つMSの歩行システムは1G下での行動を支えるため、かなり頑強に出来ている。それは逆に、一旦破壊されてしまえば前線の設備程度では到底まかなうことができないことを意味していた。

そこでザクの上半身をマゼラベースの上にマウントするプランが考案された。マゼラベースは地球攻撃軍地上戦力の中核を担う大型主力戦車マゼラアタックの車輌部分である。マゼラアタックは単独飛行を行う砲塔部分のマゼラトップと車輌部分のマゼラベースに分離することが可能な、兵器史上類を見ない特異な戦車であったが、マゼラトップの飛行時間は5分程度と極端に短く、またその損害も多かった。足を失ったザクと砲塔を失ったマゼラベースの組み合わせは、いかにも間に合わせながら、前線では効率の良い組み合わせだったのである。

最も初期にこの組み合わせを行ったのは、アフリカ戦線において活躍した工作作業中隊と言われている。マゼラトップと接続する砲塔基部を排除し、代わりにザクの上半身をマウントする腰ユニットが設けられたこのMSは、一応MS-06Vという形式番号を与えられているものの、作業は全て現地で行われており正式に工場で生産されたものは1機もない。上部にマウントされるMSは全てザクであり、グフなど他のMSがこの改造に使用された例は現在のところ確認できていない。

純粋に作業機として使用されたため、多くはコクピット前面の装甲を排除してオペレーターの視界を広げているが、必要に応じてコントロールボックスを外部へ出したものも存在する。更にコントロールボックスを背部特設クレーンの先端に設置したものや、マニュピレーターをロングタイプに改造したものなど、再利用機故に機体毎の差異が非常に激しいのがこのMSの特徴である。

MS-06Vの使用例として有名なのは、ボルネオ駐屯の工作部隊に所属したグリーンマカクであろう。地上兵器の進撃を困難にする熱帯特有の密林において、その特製の長大なマニュピレーターを効果的に使用して味方の侵攻を支援した。濃緑色一色に塗装されたこれらの機体は特にMS-06V-6の番号を与えられており、アフリカ砂漠地帯で活躍した「ランドシープ」と並んでよく知られている。

また作業機として活躍したザクタンクだが、少数ながら戦闘に参加した機体も存在する。多くのザクタンクはマゼラベースから引き継いだ機関砲を残していたが、その上左右にアウトリガーやストンパーを持ち、ロケットポッドを追加装備したもの、MSトレーラーやキュイ揚兵戦車を牽引したものなどがある。いずれにせよ本体同様、追加武装も現地改造によるものなので、機体毎の差異は激しい。


MS-06V ザクタンク

全 高 機体による 自重量 機体による 総出力 機体による 地上速度 機体による
頭頂高 機体による 総重量 機体による 総推力 機体による


地上用モビルスーツに戻る

MS-06Jに戻る

MS-12へ進む