序文

一年戦争における機動兵器


モビスルーツに代表される機動兵器は、言うまでもなく宇宙世紀における最も重要な兵器体系である。その登場が歴史に与えた影響は軍事や科学技術にとどまらず、政治的・経済的分野にまで及ぶ。ひとつのMS開発が紛争の契機となったり、また逆に戦闘終結の要因を作り出したりすることすらあった。ひとつの兵器体系がこれほどまでに大きな力を持ち、かつ維持し続けたことは人類史上かつてなかったことである。

この機動兵器が歴史に登場したのは、一年戦争(ジオン独立戦争)のことである。宇宙世紀史上最初にし て最大の武力衝突となったこの大戦において、機動兵器はそれまでの兵器・戦術・戦略体系を根本から覆 し、一挙に過去のものとしてしまった。以後、百数十年に渡ってモビルスーツに代表される機動兵器群は人類の歴史に深く関与し続ける。我々はその機動兵器が誕生した瞬間をできるだけ客観的に捉え、機動兵器の姿を浮き彫りにせんとするものである。

ここでは一年戦争に登場した機動兵器を開発史的観点から概観するという意味で、おのおのの形式番号に着目している。これは、殊にジオン製の兵器を見て行く上でたいへん有効な方法であり、ひとつの機種がどのような過程で成立し、またどのように発展していったかを知る上で、最良の手段と思われるからであ る。

一年戦争に前後して連邦、ジオン両国が開発した機動兵器の総数については諸説入り乱れており、その数 はおよそ300〜1000機種ほどと言われている。ここでそれら全てを網羅することは到底できないが、信頼で きる資料に基づき、できるだけ多くの機種について現在わかっている限りの情報を記載している。

大戦終結から長い時間が経過した現在、研究が進む一方で多くの資料が散逸しており、一年戦争に関する 正確な情報はむしろ得がたくなっていると言えよう。特に近年発表される資料には悪質なものも多く、こ うした資料を鵜呑みにする研究者も少なくない。

一方でそのような怪情報がまことしやかに流布すること自体、誠意ある研究者の力量不足を如実に表わして いると言えよう。深く反省するとともに更なる研鑚と自戒、そして何より誠実な態度を、自らを含む全て の研究者に厳しく課したい。


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