居眠り運転の後遺症

居眠り運転の後遺症
 居眠り運転….絶対にやらないと確信を持っていた自分が,これをやってしまった ショックは強烈であった….また居眠り運転をするのではないか….そういう恐怖が 絶えず心にあった.                               自分でも信じられぬ部分があって,何か重大な病気があって,それで眠ったのか? そんな不安もあって,病院での検査も受けたが,脳にも内蔵にも異常はなかった…. 眠気と戦かいながらの運転が愚かであったのだ.                  人間は習慣的に必ず睡眠をとる.最終的に眠気には勝てない.緊張は持続しない. 当初,ラジオも点けられなかった俺様が,あろうことか,眠気覚ましに,カラオケを 歌うようにもなった….                             運転に対する緊張感と,危険に対する認識が薄れていればこそ,十分なスピードも 出せる.^_^; それでも意識の上では,安全運転をしていると思い込んでいるのだ. 夢を見ている状態と変わらない….                        ずっと続いていた眠気….それは,その後も続いていた.長距離の運転は,暫く, 控えていた.眠らないようにと,眠気覚ましのガムなども欠かさない状態が続いた. 噛み続けることで刺激を与え続けようとの試みであった.              普段,どんなに安全運転に注意していても,その注意をしている自分自身が眠って しまっては何の意味もない.無謀運転と何ら変わりがない.ひとたび人命を損なえば 問答無用の殺人にも等しい….                          十五年間の中での,ほんの一瞬の油断である.もし,小学生の列にでも突っ込んで いたら….もはや一切の弁解は通用しない….そういう想像が脳裏を過る….それを 考えれば宝くじ当選にも等しい幸運だった….                   それだけに,こんな幸運は二度とないだろうと言う思いもあった.運転中に眠気を 感じる状態は,既に,運転自体に緊張感がなくなっている.眠気は,緊張感の欠如を 象徴する….                                  夜,眠りに就くとき…,最初は目覚めた状態から,気づかぬうちに眠ってしまう. いつ自分が眠ったのか,その記憶をたどることは出来ない.電車内で,いつの間にか 眠ってしまうのも同じである.                          自分では,決して眠るつもりがないのに眠ってしまう….それがために,時には, 乗り越してしまうこともある….それと同じことが運転中にも起こる.それは,結局 無意識に緊張を解いているところから起きる….                  起きているつもりが眠ってしまう怖さがある….この恐怖から,ベッドに入っても 眠ろうとして,ハッと目を覚ます.あの居眠り運転の瞬間が,無意識に再現されて, さながら運転中に眠ったような錯覚を起こしたり….                二度と起こすまいという気持ちと,またやるかも知れないとする不安が混合して, 奇妙な精神的な後遺症を残していた.例え,人命に被害を出さなくとも,交通事故は かなりの衝撃が後に残る.                            必要以上に恐れることもマイナスである.恐怖を感じることは,ある意味で未来を 予知する一端でもある.怖さを感じたら,怖さがなくなるまで,行動を抑制するのが 賢明な方法である.                               疲れがある時の運転は出来れば控えたい….然し,多くの人間は,自分の体調とか 気分に関係なく,毎日,仕事をこなさなければならない.自分だけの都合で,運転を やめることも出来ないのが実情である.                      俺様も,時にそういう状況の中で運転を強行する….39度の熱のある中で運転した 経験もある.俺様には,免許取得以来,ずっと続けているオマジナイがある.それは 車の周囲にバリアーを張って近づく人間の安全を守る祈りである.          密教の九字を切って,車の前に現れる障害物の一切を,安全に除去するイメージを 心の中に作り上げる.一種の気休めに過ぎないのだが,それによって自分の心の中に 安全への配慮を定着させる効果がある….                     何事にも,どうしても自分の力の及ばぬ部分がある.その部分は,自分を信頼する 以外にはない.そうあれと願うことは,全く願わぬよりはマシかも知れぬ.出掛けて 行く家族の安全は,自分の力は及ばぬ….                     つまらぬ惰眠をむさぼる時間があったら,祈る時間に充てるのがよかろう.別段, 外の神サマを拝む必要もない.自分の分身を飛ばして,そばについているイメージで よいのだ.                                   走っている車の先にも,どんな危険が潜んでいるか解らぬ….通い慣れた道には, 安心感がある.恐らくそこを通る全ての人間が同じパターンで生活して,同じ注意を 払って行動している….                             毎日の大半が,無事で居られるのは,同じ時間帯に,皆が同じパターンで行動して 自分もその中に組み入れられているから? 違う時間帯に同じ道を通ると,初めての 道と同じ緊張が生じることもある….例えば,夜と昼では….            だが,慣れていると思うのは,自分の思い込みだけで,同じ道というのは,二度と 通ることはないのが真理である.同じ道を何回通っても,それはその度に全く違った 道なのである.                                 同じ道だと思うのは,過去の記憶がそう思わせているだけで,夕べ帰ってきた道は 実は存在しない….その道は,一晩眠った『8光時間』の彼方に消えている.もはや 通ることも見ることも出来ない.                         既に,地球が1/3回転してしまった後の世界を,新たに移動するのである.もし 宇宙的な時間と空間の移動を捉えられる感覚があれば,宇宙は,一瞬ごとに,劇的な 変化を起こしていることが分かるだろう.                     そんな宇宙からの放射を受けた地上も,見た目には解らぬ部分で,何らかの大きな 変動を起こしている….醒めた目で,新しく作られた世界を移動する感覚で,畏敬の 念を以て,行動するなら,とても眠れたものではない…?              宇宙は,決して休みも眠りもしない.その化身の一端である人体もまた,一瞬とて 休みを取ることはない.例えば,体が眠っても,心臓は決して止まらない.呼吸とて 止まらない.眠っている怠け者は一体誰なのか? ** 悪魔 **       

   交通安全について考える
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