3日目:目的=土産物探し
1 朝食前に運動を
中身の濃かった京都の旅も、いよいよ最終日である。
前日の朝食を待ち合わせ時間優先で適当にすませていた私たちは、最終日の朝食は美味しいモノを食べようと心に誓っていた。そのためのチェックは、2日目の夜にみんなで会議を開いて済ませてある。ついでに昼食を食べる店の目星もつけて、荷物を持ってホテルを出発。またしても『歩き倒し』な1日が始まった。
が、荷物を駅のコインロッカーに預け、目当ての店目指して鴨川を渡ったところで早速蹴つまづく。
店を調べたガイドブックは、コインロッカーに預けた荷物の中、だったのである。困ってもガイドブックを見ればいい、と高をくくっていた私たち、当然所在地もうろ覚えである。
談合を始める先頭2人。言うまでもなく、Pさんと私である。
「おかしい・・・この道がもっとまっすぐ上へ上がれるはずだと思ったんだけど・・・」
「いや、もっと向こうだよ、多分」
「え〜、でも、確かソワレの北だったよ?」
「違うよ、それ。その店は開店が10時からだから諦めたんだよ。これから行く店って、私、河原町三条東入るって記憶にあるもん」
「あ〜〜、そういえばそうかも」
前夜眺めたガイドブックの喫茶店の所在地まで覚えているのが、我ながら不思議で笑える。
それより更に不思議なのは、後続4人が先を行く私たちのナビゲーションに何の疑問も抱かないことだ。前回の京都旅行で『彷徨えるナビゲーション』の名を欲しいままにしたPさんと、祇園を歩くのは今回で2度目の私である。信頼してくれているのか、それとも「放浪も旅の楽しみ」と思ってくれているのか・・・。
ともあれ記憶は正しかったようで、目的の六曜社珈琲店は案外あっさり見つかった。
入ってみると店は以外とこぢんまりしていて、常連さんでほぼ満席状態。なんとか隅の方に広めの席を見つけて、無理矢理6人、同じテーブルに着いた。
オーダーは全員コーヒーとママレードトースト。ママレードのたっぷりのったトーストは私にはちょっと甘いか、と警戒したが、すっきりした甘さで美味だった。
朝食の時間を過ぎて店が空いてきたのを良いことに、そのままそこで軽く1時間は話し込んでしまった私たち。女6人の旅では、語り尽くすということがないのかもしれない。
2 お土産探し
朝食を済ませたら、次の目的は土産物探し。そしてもう一つ、高島屋のNTTプラザのインターネット体験コーナーで遊ぼう、というのもあった。
高島屋に入って最初にNTTに向かい、早速パソコンを1台占領。マックが無かったので、窓使いのTさんに操作を任せた。馴れた手つきでYahooで検索をかけるTさん。文字を打ち込めばいいところまで持ってきてもらって、後はたまり場と化している掲示板への乱入を開始した。
この期に及んで自分は天然ではないと言い張ろうとするMさんと、それを書き込みで否定して行く後続。
事情を知らない人が読んでも、何が何やらさっぱり判らないであろう、限りなく暗号に近い代物となった。
が、ここでも問題はYさんのハンドルネーム。本人が迷って決められないので、周囲の思うつぼである。勝手に「これでいいよね、とりあえず!」と打ち込まれ、更には「変えたかったらパソコン買って自分でアクセスしなきゃいけないんだよ」と言われる始末。大概悪魔な私たちである。(←自分で言う・笑)
それにしても、電脳空間にデビューする前からこんなにも存在を知られてしまったYさん。幸か不幸か、判断は本人に任せることにしよう。
目的を一つ果たして、次に目指すは地階食料品売場。歩き回って頼まれものや土産物を探す。私は漬物、Dさんはじめ他の人たちは、お菓子が主である。こんなところにもそれぞれの好みが現れて、なんだか面白い。
高島屋を出て、更に土産物をゲットするために四条通りを逆戻り。『よーじや』はじめ通り沿いの店を眺めては、気になるものを物色した。
各自望みのものを手に入れて、ほくほく顔で向かう先は、四条麩屋町近くの『かつら』。ここは酒造月桂冠のテナントショップで、1000円でおなかいっぱいになれる美味しいランチを食べさせてくれる(お猪口1杯の日本酒もついている)。私が頼んだのは鰻巻き定食だったが、お菜もいろいろあって量もたっぷり、もちろん鰻巻きも美味で、幸せな昼食だった。
ここでもやっぱりおしゃべりに花が咲いたし、Mさんは相変わらずさくさくと墓穴を掘り続けた。だが、何よりも印象に残ったのがDさんの美味しいモノに対する情熱だった。
レジでお勘定を済ませていると、突然Dさんがカウンターの下を指さして「これ何ですか?」。
店の人曰く、酒粕を使ったお煎餅であるらしい。すかさずDさん「ひとつ下さい」。
Dさんが指さすまでそこにそんなものがあると全く気付かなかった私たちは、「さすがDさん・・・」と敬服の声をあげたのだった。(余談:酒粕煎餅、美味だったそうである)
それでもまだ、解散するには少し時間が早い。ゆっくりおしゃべりを楽しむために、一行はまた別の喫茶店を目指す。(名前も場所もうろ覚えなので、表記はしません。あしからず)
『かつら』からその店まで、結構な距離があったとはいえ、昼食から1時間と経ってはいない。それでもやはりケーキを注文してしまうあたり、『お菓子は別腹』とはよく言ったものだ。
3 秋の京都にさよならを
喫茶店で散々しゃべり倒すこと1時間。
古都の日も傾いて、そろそろ風が涼しくなりはじめるころになって、私たちはお開きにを決めた。
荷物を預けたコインロッカーに戻って、Pさんはそのまま地下鉄で大阪へ、私たちはバスで京都駅へと向かうことにした。
「ここからこう行って、ここにでればバス停だから。じゃ、狐ちゃん、よろしく♪」
明るく手を振って去って行くPさん。残された私に一抹の不安がないわけではなかったが、仕方がない。何しろ他のメンバーは、私をナビと認識してすっかり安心している。迷うほど遠くない、道順も簡単。
(多少迷っても、許されるよね?)
心の声が他の4人に聞こえないのが幸いだった。
結果として、バス停はあっさり見つかり、バスも10分ほどで来たので、問題はなかった。
京都駅に着いた私たち。新幹線ホームを目指す。が、その足が途中で止まった。
--『喫茶・アモン』
紫堂恭子先生の『辺境警備』を読んだことのある人なら笑わずにはいられないネーミングである。
「やっぱり証拠写真は必要だよね」
すかさずカメラを構えた私たちは、周囲の人々から見れば怪しいことこの上ない集団だったに違いない。
撮影を終えて改札を通り過ぎたところで、Tさんとの別れの挨拶が始まる。
「楽しかったねぇ」
「うん。楽しかった!」
「良く歩いたし、今回も」
「それにしても、異様に中身の濃い3日間だったよねぇ」
「やっぱりメールとか掲示板の書き込み読むのと実際会うのとは違うね」
それぞれがそれぞれに感慨深げにしみじみと語る。
「お疲れさま〜」
「じゃあ、元気でね〜〜」
笑って手を振った。
「さあ、帰ろうか」
「また全員一緒に座れるといいね」
ホームへと向かう私たちは、日曜の夕方を甘く見ていた。全員一緒にどころか、自由席はほぼ満席で、誰も座れなかったのである。座席を確保したのは名古屋で人が降りたとき。それでも、立っている間も会話が途切れることはなかったのだから大したものだと言うべきだろう。最後の最後まで体力を要求されたオフだった。
こうして、3日間の京都の旅は、沢山の『お土産』を残して終わりを告げた。
『土産』の多い、楽しいオフだった。
こんなところで、長かったこのオフレポにエンドマークをつけよう。
あとはみなさまがご自分で想像&補足して楽しんでいただきたい。
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