MS-13 ガッシャ

(GATSHA)


MSM-07ズゴックの成功を足がかりに、MIP社は本格的な陸戦用MSの開発を進めた。まず冷却機構をはじめ各部を陸戦向きに改修した水陸両用MSゾゴックを試作、ここから得られたデータを基に完成したのがMS-13、ガッシャである。ガッシャはこれまでの地上用MSと、ひいてはジオニック以来のザク系から全くはずれ、独立した開発系統を持つMSといえる。

ガッシャの特徴を一言で表現するなら、「地上専用ズゴック」という言葉が最もふさわしいだろう。MIP社のズゴックは、一年戦争中最も優秀な水陸両用MSとされている。陸上での運動性能は並みの地上用MSに匹敵しつつも、それを上回る格闘性能・攻撃能力を有していた。この高い性能を汎用MSとして活かしたい、という発想はごく自然に浮かぶものであろう。ガッシャは、汎用MSの前段階として開発された地上専用機である。

しかし、開発は予想以上に難航した。地上専用機開発のノウハウはゾゴックである程度得られてはいたが、ズゴックほどの高性能を達成するのは非常に困難であった。というのもズゴックの高性能は、水陸両用機であることと密接に結びついていたからである。

ズゴックは他の水陸両用MSと同じく、機体外の水を冷却に使用している。地上では空冷方式も併用しているものの、バラストタンクに取り込んだ水での冷却も行っている。これによって大出力ジェネレーターの搭載を可能としているのであり、ズゴックの高性能は全てこの大出力に基づくものなのである。

厚い装甲と堅牢な構造に支えられた高い防禦力、にもかかわらず維持された高機動性、強力なアクチュエーターのパワー、そして何よりビーム兵器をはじめとする大火力。ズゴックの優秀さは全て、大出力のジェネレーターを持っていること、ひいては水を使った贅沢な冷却が行えることに由来していたのである。

従って空冷方式を前提とする「地上用ズゴック」の開発は、否が応でも縮小の方向へと向かわざるを得なかった。ガッシャはズゴックと同程度の性能を持つ陸戦用MSを目指していたが、結果としてズゴックをスケールダウンしたMSとなってしまったのである。

ジェネレーターの出力は半分以下になった結果装甲は軽減され、各部のパワーも低下した。高い格闘性能を持つクローは作業性を重視したコンバットネイルになり、ビーム兵器の搭載ももちろん不可能となった。ガッシャの火力は両肩部の4連装収納式ミサイルポッド2基のみである。なお、ミサイルポッドの配置はMSM-08ゾゴックでのデータが活かされていた。またその影響から全周モニターが廃止されており、それを補うため背部に2本のブレード状対地センサーを装備されている。

こうして完成したガッシャは、地上用ズゴックというより縮小版ズゴックとでもいうべきMSとなった。汎用性は低いことから特殊専用MSとして位置づけられており、生産台数は決して多くはない。MIP社は当初、これをベースに宇宙専用機の開発も視野に入れていたようだが、開発は中断されている。

これはガッシャの性能が不十分であったためか、あるいはMIP社内に別の理由が存在したのか、現在のところ確認できる資料は見つかっていない。大戦後の歴史を見ても、ズゴックの直系の後継機・発展機と言えるようなMSは見当たらない。かろうじてレプリカの類が存在する程度である。

ガッシャの武装は前述した通り、両肩部の4連装収納式ミサイルポッド2基とクローに準じたコンバットネイルのみである。特殊ハンマーガンなる武装について記述した資料もあるが、その存在もどのような武装であったかについても、確認されていない。


MS-13 ガッシャ

全 高 17.5m 自重量 89.7t 総出力 1076kw 地上速度 55km/h
頭頂高 15.1m 総重量 116.5t 総推力 42.9t


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