MSM-08 ゾゴック

(ZOGOK)


MSM-07ズゴックは、水陸両用MSとしては異例の高い陸戦性能を示した。開発元のMIP社はこれを受けて、より陸戦性能を重視したMS開発をスタートさせる。大戦中期、ツィマッド社は水陸両用MSゴッグを足がかりに地上用MSドムを成功させ、ジオニック一色だったMS開発に食い込んだ。ドムは宇宙専用機リックドムは暫定的ながら主力MSとして採用され、ツィマッドは一時的ながらジオンMS生産を独占したのである。ペズン計画に参加したスウィネンやMIPも、こうしたツィマッドの成功の後を追おうとしていた。

しかしMSM-04アッガイから地上用MS開発を目指したスウィネンは、アッグガイ、ジュアッグで具体的な成果を挙げることができず、開発は事実上失敗に終わっていた。MIPはこれを踏まえ、ズゴックからより陸戦性能を抽出した試験機を開発することにした。いきなり地上用MSにステップアップするのではなく、もう一段階慎重を期すことにしたのである。

こうして作られたのがMSM-08ゾゴックである。水陸両用MSを地上用MSへと改修する際、最もネックとなるのは冷却の問題である。陸上での水陸両用機はバラストタンクに取り込んだ水を使い、比較的贅沢な冷却を行うことができた。そのため大出力のジェネレーターを搭載し、高いパワー、厚い装甲、火力の強化を実現していたのである。しかし地上専用機は空冷式が主流であり、水冷式のメリットを失いながらも高い性能を維持しなければならなかった。

ゾゴックの原型となったズゴックは水冷と空冷の両方式で冷却を行うハイブリット冷却システムとなっていた。水中では水冷方式で冷却を行い、陸上では水冷式の補助を受けながらも空冷式で冷却を行う。これにより高い陸戦性能を実現した訳だが、ゾゴックではこのハイブリット冷却を残しながらも、より空冷方式を重視した設計となっており、陸上では完全に空冷のみで冷却を行う。

そのためゾゴックではビーム砲を廃し、武装は中・近距離専用のワイドカッター10基のみとした。これは頭部に装備され、ブーメランのように飛ばして使用するものである。来るべき地上専用機に向けて試験的に採用されたものだが、効果は低いものと判断された。大パワーに任せたアイアンネイルも止め、5本指のマニュピレーターとしている。これも来るべき地上用・汎用MSを睨んでのことであるが、作業性が飛躍的に向上したことは言うまでもない。「手」と下腕部の間には水陸両用MS独特のフレキシブルアームがあり、伸縮機能を活かしたアームパンチが可能である。

ゾゴックは地上用試験機であり、評価試験のほとんどはその陸戦性能に主眼を置かれている。水中航行も可能であったが、あくまで補助的なものであった。ゾゴックの性能そのものは決して高いものではなかったが、MIPはここで得られたデータを元に、満を持して地上専用機MS-13ガッシャの開発を進めることができたのである。

ゾゴックは少数ながら量産され、特務MSとして運用された。他の水陸両用機と共同で上陸作戦等に参加し、フレキシブルアームと5本指マニュピレーターの高い作業能力を活かして工兵任務に従事したようである。戦闘にも参加することはあったが、貧弱な武装故に白兵戦しか行えなかった。5本指を活かせば汎用火器も使用可能ではあったが、逆にこれらの火器には耐水性がなかったため、事実上不可能であった。

ゾゴックの武装は前述した10基のワイドカッターとアームパンチ機能のみである。ワイドカッターの威力は低かったが、両肩部・後頭部は固定武装の配置として効果的なことが確認され、続くMS-13では同位置にミサイルランチャーが装備されている。また、アームパンチ機能も精巧な5本指マニュピレーターを破損する恐れが強いため、緊急時のみの使用に限られていた。


MSM-08 ゾゴック

全 高 18.8m 自重量 77.4t 総出力 1688kw 水中速度 47.0kt
頭頂高 18.2m 総重量 107.3t 総推力 97.4t


水陸両用モビルスーツに戻る

MSM-07Sに戻る

MS-13へ進む