MSM-10 ゾック

(ZOCK)


MSM-10ゾックは大戦中のジオン水陸両用MSのみならず、宇宙世紀のMS史上から見ても極めて特異な存在である。前後対称の機体、MA並みの大出力・重装甲、MSでありながら歩行が不可能なこと、どれをとっても他に類を見ない。ゾックがこうした特異な機種であるのも、全てはその開発コンセプトに起因している。

水陸両用MSは海岸・河川からの上陸作戦で活躍した。これは水陸両用MSの大きな利点であったが、同時にこの上陸時は最も標的となりやすく、被害が集中していた。そこで上陸時の中・長距離支援を行うために開発されたのがこのゾックである。開発はツィマッド社のスタッフが中心となっており、スウィネン社の技術者も少数参加していた。

ゾックは攻撃力に主眼を置いて開発されており、機体には8門もの大出力メガ粒子砲とフォノンメーザー砲1門が装備されている。これは並みのMSをはるかに上回っており、MAか移動砲座なみの大火力である。メガ粒子砲は機体前後面にそれぞれ4門ずつ固定装備されており、頭頂部のフォノンメーザー砲は水中航行時・対空迎撃に使用したと思われる。メガ粒子砲の配置に関しては、MSM-04Gジュアッグのデータが活かされていた。

この大火力を稼動させるため、搭載している反応炉は通常のMSの2〜3倍の出力を持つ。これは効率のよい水による冷却が可能な水陸両用MSならではのことだろう。しかし必然的に機体は大型化し、運動性能・格闘性能は望むべくもない。また防禦力に関しては、装甲の材料強度も含めて最高の技術が投入されている。水陸両用MS独特の堅牢さも加わって、一年戦争中のジオンMSとしては最も防御力の高いMSの一つと言えるだろう。

これらの長所を活かし、短所をカバーするのが前後対称という独特な機体構造である。前後面に4門ずつメガ粒子砲を固定装備することで、鈍重な機体にもかかわらずわずかな移動でどの方向にも攻撃が可能となる。また緊急時にも方向転換することなく移動でき、その上攻撃を続けながらの後退も可能である。一見奇異に見える機体も合理的な理由に基づいており、ゾックはこれがうまく機能した一例といえるだろう。

ゾックには一応「脚」がついているが、これはほとんどダミーに近く、歩行は全く不可能である。実際の移動は脚部及び前後面に張り出したフレアに内蔵されているホバーで行う。従って陸上でもある程度の運動能力は持っており、外見から受ける印象ほど鈍重であったわけではない。実際にはゴッグにやや劣る程度であったとされている。

ゾックの武装は前述の通り大出力メガ粒子砲8門にフォノンメーザー砲1門に加え、マニュピレーターにはアイアンネイルを装備しているが、どれほどの効果があったかは疑問である。むしろ不安定な機体をサポートするAMBACを期待する意味が大きかったのではないだろうか。ジオンではこれ以上の機体の大型化は本来MSが持つ利点を失うだけと判断し、これ以降はMAの開発に力を入れていくこととなる。

ゾックは試作機として3機が建造されてことが確認されている。そのうち2号機はジャブロー攻略戦に参加しており、ボラフスキニフ曹長というパイロット名も記録に残っている。曹長の2号機は攻略戦でRX-78-2に撃破され、彼も戦死した。また残る1、3号機の消息は不明である。


MSM-10 ゾック

全 高 23.9m 自重量 167.6t 総出力 3849kw 水中速度 63.0kt
頭頂高 23.9m 総重量 229.0t 総推力 253.0t


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