← |
PioneerHeaven 「滅びの子」〜スノゥ〜 | ||
−・2・− 電脳の支配者 | ||
それは私にとり、未知そのものの遭遇だった。 「あなた、名はなんというの」 突然投げ込まれた女性型(フィメールタイプ)の語彙(コード)には、強い強制力があった。 ヤンの構築したプロテクトがなければ、解体されていたかもしれない。 それほどに強い語彙だった。 情報(ソース)は【海】の段階だ。世界(プレーン)は形成されていない。 「私」というプログラムが発現するにはまだ早すぎる。 それが「なにか」に認識され、「私」は強制的に解凍させられた。 ――危険だ。 名を、名を持たなければ。 このままでは【海】に呑まれてしまう。 けど解凍は不充分で、私は私の情報を完全にはひきだせなかった。 検索した。 そのたびに走査(スキャン)は凍結した領域にとどまり、エラーを引き起こした。 コードをあてられたことにより、解凍は急速に進められていく。 それでも間に合わない。 かまわず、私ははしらせた。幾多ものスキャニングを。 私は、私は、私は……。 ――やがて。 (もう、名前は決めてあるの) スキャンするブレインデータのなかから、一つのヴィジョンが符号した。 (この子の名前はね……) 認識の正誤を確認している暇などなかった。 私は語彙にむけて、その名を告げた。 わたしの、名前は、 ――アクシア。 |
||
← |