●ザルツブルク八重奏団
 2000年6月20日(火)19:00/東京文化会館小ホール
(演奏)
 マルクス・トマシ(第1ヴァイオリン)
 アレッサンドロ・ボルゴマネロ(第2ヴァイオリン)
 ヘーベルト・リンツベルガー(ヴィオラ)
 マルクス・プジェ(チェロ)
 ブリタ・ビュルグシュヴェンツナー(コントラバス)
 ラインハルト・グッチー(クラリネット)
 ヨーゼフ・シュテルリンガー(ホルン)
 エドゥアルト・ヴィンマー(ファゴット)
(共演)
 雨谷麻世(ソプラノ)
 斎藤雅広(ピアノ)

(プログラム)
 ショーソン :終わりなき歌 作品37
 フォーレ  :ピアノ四重奏曲第1番ハ短調作品15
 フランセ  :ディヴェルティスマン
 フランセ  :八重奏曲
(アンコール)
 ヨハン・シュトラウス:「こうもり」序曲
 ヨハン・シュトラウス:アンネン・ポルカ




ザルツブルク八重奏団はおもにモーツァルテウム管弦楽団やカメラータ・アカデ
ミカのメンバーにより編成されたアンサンブル。第1ヴァイオリンのトマシとチ
ェロのプジェは毎年夏の音楽祭でも良く見かける。今日はフランスの室内楽が聴
けるということで楽しみにしていた。

ここの小ホールを訪れるのは随分と久しぶりである。改修されたとはいえコンク
リートの壁が何とも殺風景。どこか東京カテドラルをミニチュアにしたように見
える。見かけによらず音が良さそうだ。案の定、響きはとても素晴らしくショー
ソンの抒情の豊かさに驚かされた。この曲は彼の白鳥の歌となった名曲で、雨谷
のブリリアントな美声が魅力一杯の音楽にしてくれる。アンサンブルはピアノ五
重奏によるもので、ソプラノと溶け合う様は見事というほかない。歌と戯れるよ
うにヴァイオリン、チェロ、ヴィオラがそれぞれの調べを奏でつつピアノのパッ
セージが抒情をかきたてる。10分ほどの小品ながら、フランス風エスプリも彷
彿とさせながら夢のような世界を描き出す。

続くフォーレでもしっかりとした弦楽四重奏とピアノがアンサンブルの妙を作り
出す。この作品は秋になると良く聴くのであるが、初夏に聞いても素晴らしい。
全体のアンサンブルとして響きすぎるくらいではあるが、実に渋くて華麗でもあ
る。

後半は一変してフランス20世紀の作曲家フランセの作品をふたつ。いずれも諧
謔のユーモアをたたえたもので、比較的短い作品だ。ディヴェルティスマンはピ
アノ五重奏にファゴットという珍しい編成。ファゴットがソロを務めるが、これ
はまさに音楽の喜劇役者で、音楽の冗談といってもよい。八重奏曲はシューベル
トの八重奏を偲んでウィーン八重奏団からの依頼で作曲された作品だとか。これ
も田園風景を思わせる長閑な作品で、ユーモア一杯。終楽章ではウィンナ・ワル
ツをパロディックに仕上げた作風であり、フランス的オーストリア風といった感
じ。アンコールにはヨハン・シュトラウスをふたつ。面白いことに「こうもり」
序曲では、チェロの譜面台にトライアングルが吊られており、小太鼓はヴィオラ
とホルンの間。トライアングルはもちろんチェロ奏者が鳴らすのであるが、小太
鼓はヴィオラとホルンが交互に忙しく演奏していた。

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