●東京フィルハーモニー交響楽団定期演奏会
2000年6月16日(金)19:00/オーチャードホール
 指揮:ヤーノシュ・コヴァーチュ
(プログラム)
 ヤナーチェク:狂詩曲「タラス・ブーリバ」
        アンドレイの死/オスタップの死/タラスの予言と死
 スメタナ  :連作交響詩「わが祖国」全曲
        ヴィシェフラフト/ヴルタヴァ/シャルーカ/
        ボヘミアの森の草原/ターボル/ブラーニク




今日のプログラムは待望の「わが祖国」。これに「タラス・ブーリバ」まで演奏
されるというから何とも豪華なカップリングとなった。これら東欧音楽を指揮す
るのはハンガリーのコヴァーチュとなれば、きっと素晴らしい演奏になるに違い
ないと直感し、チケットは発売日当日にゲットした。それにしても客席の入りが
悪いのは実に勿体無い。恐らく満席だろうと予想していたのだが。

前半のタラス・ブーリバから東欧独特の哀愁が漂い、イングリッシュ・ホルンの
憂いを帯びた音色に魅了されてしまった。この音楽はタラス・ブーリバの息子ふ
たりの死と自らの運命と将来への期待を描いた作品。ストーリーからして激動そ
のものではあるが、ヤナーチェクの音楽は実に深みがある。ただ悲劇的ダイナミ
ックさだけでなく、静かな感情の起伏に彩られた微妙なニュアンスが感じられる。
そういった情感が、巧みなコヴァーチュのコントロールで隈なく描写された。

後半も素晴らしすぎる演奏であった。「わが祖国」については昨年来日した小林
研一郎&チェコフィルの感動の名演が記憶に新しいが、コヴァーチュの指揮もま
た感動的であった。彼の指揮のリズムは一貫して安定していて、概ねゆったりと
朗々とオーケストラを鳴らす。フォルテとピアノのバランスも素晴らしく、フォ
ルティッシモを素早く切り上げた後は、オケを決して力ませず、包み込むような
ピアニッシモで情感を湛える。ヴィシェフラトのハープの開始も、テンポを落と
してたっぷりと響かせる。ヴルタヴァの悠々たる流れも見事。シャルーカのダイ
ナミズムも凄い。ボヘミアの森の実に楽しい情景。ターボルからブラーニクに架
けての祈りの響き。全てが息を呑む思いで集中することが出来た。日曜日に同じ
組み合わせでドヴォルザーク8番を聞くが、とても楽しみである。

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