●横山幸雄/ピアノリサイタル
2000年6月10日(土)11:30/サントリーホール
(プログラム)
ベートーヴェン
幻想曲 ロ長調(ト短調)作品77
ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調作品27−1
ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調作品27−2《月光》
−休憩−
ディアベッリのワルツの主題による33の変奏曲 ハ長調作品120
(アンコール)
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ《悲愴》より第2楽章
バガテル作品33−5
ピアノ・ソナタ《悲愴》より第3楽章
-----------------------------------------------------------------------
今日は3本立てのメニュー。食事に例えれば前菜が横山氏のベートーヴェンとすればメインがモンテカルロの椿姫で、デザートがパイヤールとなる。が、横山氏の素晴らしさは前菜どころでは無くてれっきとしたメインである。プログラムもオール・ベートーヴェン。しかも幻想風ソナタ・シリーズの2作品と後期の傑作を並べた魅力度。開演前から俄然、期待が高まる。マチネーといえば欧州では大抵11時開演。日本ではこの時間設定は余り見かけないが、今日のように11時頃から始る演奏会が増えても良いのでは。
さて最初の幻想曲から実に端正なベートーヴェンを聴かせてくれた。目を閉じて聴いているとブレンデルを思わせるような風格も感じられるし、何よりも音楽が生きている。ピアノの充実した響きと余裕をもった懐の深さが素晴らしい。後半のディアベッリに至ってはこの長大な作品を長いと感じさせずに実に多彩な変化あるものに仕上げている。アンコールも3つ演奏された。ピアノを弾くことに喜びを感じている様がストレートに伝わってくる。ちなみに彩の国ベートーヴェン・シリーズの集大成ともいえるCD全集が完成したとのこと。巨匠のこれからの演奏がとても楽しみである。