●バッハ・コレギウム・ジャパン定期演奏会
 2000年6月8日(木)19:00/東京オペラシティコンサートホール
(プログラム)
 ヨハン・セバスティアン・バッハ:ブランデンブルク協奏曲
 
 コンチェルト第1番へ長調BWV1046
  コルノ・カッチャ:テウニス・ファン・デル・ズヴァルト、塚田聡
  オーボエ:三宮正満、尾崎温子、前橋ゆかり
  ファゴット:堂阪清高
  ヴィオリーノ・ピッコロ:若松夏美
  第1ヴァイオリン:寺神戸亮 第2ヴァイオリン:竹嶋祐子 
  ヴィオラ:赤津眞言 チェロ:鈴木秀美
  通奏低音(コントラバス:桜井茂 チェンバロ:鈴木雅明)
 
 コンチェルト2番へ長調BWV1047
  クラリーノ・トランペット独奏:島田俊雄
  リコーダー独奏:ダン・ラウリン
  オーボエ独奏:三宮正満
  ヴァイオリン独奏:寺神戸亮
  第1ヴァイオリン:高田あずみ 第2ヴァイオリン:竹嶋祐子
  ヴィオラ:森田芳子 コントラバス:桜井茂
  通奏低音(チェロ:鈴木秀美 チェンバロ:鈴木雅明)
  
 コンチェルト3番ト長調BWV1048
  ヴァイオリンTUV:寺神戸亮、若松夏美、竹嶋祐子
  ヴィオラTUV:森田芳子、高田あずみ、赤津眞言
  チェロTUV:鈴木秀美、諸岡範澄、山廣美芽
  通奏低音(コントラバス:桜井茂 チェンバロ:鈴木雅明)
 −休憩−
 
 コンチェルト4番ト長調BWV1049
  ヴァイオリン独奏:寺神戸亮
  リコーダー独奏:ダン・ラウリン、山岡重治
  第1ヴァイオリン:若松夏美 第2ヴァイオリン:高田あずみ 
  ヴィオラ:赤津眞言 チェロ:鈴木秀美 コントラバス:桜井茂
  通奏低音(チェンバロ:鈴木雅明)
 
 コンチェルト5番ニ長調BWV1050
  フラウト・トラヴェルソ独奏:菅きよみ
  ヴァイオリン独奏:若松夏美
  チェンバロ独奏:鈴木雅明
  ヴァイオリン:竹嶋祐子 ヴィオラ:森田芳子 チェロ:鈴木秀美
  コントラバス:桜井茂
 
 コンチェルト6番変ロ長調BWV1051
  ヴィオラTU:寺神戸亮、高田あずみ
  ヴィオラ・ダ・ガンバTU:福沢宏、山廣美芽
  チェロ:鈴木秀美
  通奏低音(ヴィオローネ:桜井茂、チェンバロ:鈴木雅明)
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一夜にしてブランデンブルク全6曲を聞けるチャンスは少ない。しかもBCJの演奏となれば、これは見逃せないところ。さらにフレンチ・ピッチで演奏されのも興味深い。鈴木雅明氏によるプログラム解説によればコンチェルト2番のトランペットのピッチについて詳しく説明されている。これが発端となりフレンチ・ピッチ演奏への経緯が興味深い。加えて島田氏によるクラリーノ・トロンバをベンディング奏法するという。これも大いに期待するところ。実際聴くコンチェルト2番では、やはりホルン型のトランペットの口笛奏法が奇抜であり、アンサンブルとの調和という面ではやや異質な存在に聞えた。しかし島田氏の超絶テクニックは素晴らしく、普段余り聴かないコンチェルト2番がこれほどまでに生命力ある曲であったかと再発見したような印象を受けた。しかしこの演奏法はかなり厳しいようで、微妙な音程のずれはやむを得ない。

第1番と第5番はライブでも良く聴くが、他は余り聞いたことがない。やはりCDで聴くよりもライブで聴くと、微妙な楽器のニュアンスがストレートに伝わってくる。特に古楽の典雅な響きとアンサブルの妙は素晴らしい。フレンチ・ピッチということで全般に落ち着いた色調になっていて、特に3番の弦楽編成では渋さもあって、深みのあるバッハが聞けた。第4番での寺神戸のソロも素晴らしい。第5番での鈴木氏のチェンバロ・ソロはとてもさっぱりしていて早いテンポで音楽がどんどんと進む。むしろ乗りの良さといっても良いくらいで、一気に駆抜ける爽快感があった。個人的には第6番がとても気に入った。ヴィオラ・ダ・ガンバ群が素晴らしく、ヴァイオリン群の渋いアンサンブルも美しい。6番はある意味で色彩的にも地味かもしれないが、本当に味わい深く、新鮮な音楽を聴かせてくれた。

さすがに全6曲を聴くと充実感がある。時間の長さは全く感じさせない多彩さと集中力に満ちていたし、全曲を通すことでブランデンブルク・コンチェルトの魅力が倍増されていたように感じる。それにしてもBCJのプログラム解説は貴重な説明が満載。特にマリッセン氏の楽曲解説は素晴らしい。次回のBCJはヨハネ受難曲を聴く予定。

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