●カナディアン・バロック・オペラ・カンパニー・オペラ・アトリエ
モーツァルト歌劇『ドン・ジョバンニ』(英語上演)
2000年6月4日(日)14:00/新国立・中劇場
監督:マーシャル・ピンコスキー
指揮:アンドリュー・パロット
(キャスト)
レポレロ :ポール・グリンドレイ
ドン・ジョバンニ :マシュー・ハーグリーヴズ
ドンナ・アンナ :ジャッカリン・ショート
騎士長 :ゲイリー・リライア
ドン・オッターヴィオ:ション・テシアー
ドンナ・エルヴィラ :メレディス・ホール
マゼット :カーティス・サリヴァン
ツェルリーナ :ナタリー・ポーリン
アトリエ・バレエ・ダンサー
オペラ・アトリエ合唱団
オペラ・アトリエ古楽オーケストラ
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新国立中劇場に入るのは初めて。すり鉢状の構造は音が良く響きそうだし、舞台も見やすい。座席は7列目のセンターであったが実際にはピットから4列目で視界は良好。舞台に近い分、オペラの世界に飛込むような臨場感に溢れている。
古楽器によるアンサンブルは最初の序曲ではやけに音が小さいと感じたが、オペラが始ると歌い手たちとのバランスがとてもよく、充実したサウンドとなる。演奏はとてもソフトな響きで、いわゆるガット弦の優しい響きとくすんだ木管と金管がとても優雅な響き醸し出していた。
英語によるセリフと歌は思ったほど違和感がなく、むしろ英語の流暢さがドラマの流れを良くしているほど。それよりも、セリフをオリジナルから多少アレンジしているところもあったが、さほど違和感は無い。歌手たちもすこぶる優秀で、演技の表現力は素晴らしい。アリアや音楽を前面に押し出すのではなく、いわゆる当時のお芝居としてのオペラをありのまま再現しているような素朴さを感じた。この素朴さは以前に来日したプラハ室内歌劇のモーツァルトにも共通しているように思う。
舞台セットは全幕を通して共通となっているが、多少のアレンジで場面に変化を付けている。舞台セットを替える必要がないので、ドラマはとてもスピーディ。そして歌手、合唱、ダンサーによる多彩な演技が舞台をデコレートし、視覚的にも不満は無し。むしろ彼らの素晴らしい演技力によってドラマに惹き付けられる。
ちなみにオペラ・アトリエのサイトによると今シーズンはジョン・バティスト・リュリの「セルセ」を上演するとか。何とも珍しいオペラだが、次回の来日公演では是非、こういった貴重なオペラを紹介して欲しい。