●東京交響楽団定期演奏会/20世紀英国音楽の旗手たち
2000年5月28日(日)14:00/サントリーホール
指揮=秋山和慶
バス・テューバ=渡辺攻
バリトン=勝部太
合唱=東響コーラス
合唱指揮=樋本英一
コンサートマスター=深山尚久
(プログラム)
エルガー :弦楽セレナーデ ホ短調作品20
ヴォ−ン・ウィリアムズ:バス・テューバと管弦楽のための協奏曲ヘ短調
ウォルトン :オラトリオ「ベルシャザールの饗宴」
------------------------------------------------------------------------
今日のプログラムはいずれも始めて聴く珍しい作品ばかり。最初のエルガーはエルガーらしい美しさが特徴。今日の東響は弦の響きがすこぶる素晴らしく、ホールの響きを上手く活かした演奏法。低弦の魅力、中音域から高音域にかけての充実感は素晴らしく、加えてエルガーの心地よい音楽に酔いしれた。
次はヴォ−ン・ウィリアムズのバス・テューバのコンチェルト。これも超低音域を中心にテューバの超絶技巧が聴ける珍しい作品。テューバでこれほどコロコロとコロラトゥーラ的な奏法が可能だとは驚いた。特に2楽章の美しいソロには釘付け。コンチェルト全体の出来も素晴らしく、カーテンコールが延々と続く。
そしてウォルトンのオラトリオ「ベルシャザールの饗宴」。これは何種類ものCDが出ているが、ライブで聴けるのは珍しい。P席を全て埋め尽くした大合唱。フル編成のオーケストラに加えてステージに向って左右のバルコニーに設けられた二つのバンダ。まるでマーラーの一千人の交響曲かと思うほどの大編成で豪快・華麗に描かれた。テキストは旧約聖書ダニエル書、詩篇、イザヤ書、ヨハネ黙示録から取られており、バビロンの栄華と滅亡、そしてユダヤの歓喜に至る壮大なドラマを40分ほどで歌おうというもの。まず東響コーラスが圧倒的な合唱を聞かせたのに加えて、東響の怒涛の演奏で、ホールは地震かと思うほど床からの響きが凄かった。勝部のバリトンも切れ味が良く、テキストが良く聞き取れる。もっともウォルトンのテキストは簡単明瞭な英語で書かれている。音楽的にはオルフのカルミナ・ブラーナの影響もあるようで、フィナーレの盛り上がりにおいてはホルストの惑星のパッセージも見え隠れしているよう。秋山氏の指揮はいつもながらこういった複雑な大曲を上手い指揮捌きで見とおしの良さを見せてくる。今日の定期演奏会は滅多に聴けない曲ばかりで、いずれも満足できた。