●鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン
ヨハン・セバスティアン・バッハ:マタイ受難曲BWV244(1736年版)
2000年4月21日(金)18:30/サントリーホール
(演奏)
福音書記者(テノール1):ヤン・コボウ
イエス(バス1) :ペーター・コーイ
ユダ、ペテロ、ピラト、大祭司U(バス2):クルト・ヴィトマー
大祭司T :浦野智行
証人T(アルト2) :波多野睦美
証人U(テノール2) :鈴木 准
女中T(ソプラノ1) :ミア・パーション
女中U :野々下由香里
アルト1 :マイケル・チャンス
指揮 :鈴木雅明
管弦楽・合唱 :バッハ・コレギウム・ジャパン
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今年6回目のマタイ受難曲。聖金曜日の今日、BCJの演奏で聴けるとは嬉しい限り。マタイではよく大合唱による演奏に出くわすが、やはりBCJのように少数精鋭の合唱は素晴らしい。マタイはそもそも教会で演奏された経緯から考えても、小合唱が望ましいのではないだろうか。大分前に出されたCD、リフキン指揮のバッハ・アンサンブルのミサ曲ロ短調では少数というよりもソリストを束ねた合唱で、芯の通った透明なハーモニーに魅了されたが、ちょうど今日の合唱も少数であることの良さが発揮されていたように思う。
BCJの古楽アンサンブルも安定し、合唱とのバランスも実に見事。エヴァンゲリストの語りも流れがあって、音楽が途切れない。何と言っても鈴木氏の巧みな抑揚がすばらしい。ただ残念なのは、楽曲毎に客席からの咳払い目立ったこと。楽曲間は途切れない緊張が持続しているのだから、ここは静かにして欲しいと思った。
演奏上で面白かったのは少年合唱のパートをソプラノ二人がオルガン前で歌わせたこと。第1部の最後では合唱の後方、ステージ壁ぎわで歌われた。さてソリストではヴィトマーを除いて皆素晴らしい歌を聞かせてくれる。コボウのエヴァンゲリストは少し軽すぎる印象を受けたが、語りが一筆書きのように流暢であり、楽曲を上手くつないでいたし、軽快な語りは受難曲全体に一種の軽やかさを醸し出していたように感じた。音楽のアクセントとともに緊迫したドラマの表現も十分。コラールの荘厳さも感動的だった。聖金曜日のマタイともなれば拍手はしないはずだが、演奏の素晴らしさから大きな喝采に包まれた。