●東京バレエ団創立35周年記念公演
 モーリス・ベジャール振付
 「くるみ割り人形」全2幕/東京初演
 2000年4月2日(日)15:00/東京文化会館
(キャスト)
 第1幕
  高橋竜太(ビム)
  吉岡美佳(母)
  古川和則(猫のフェリックス)
  首藤康之(マリウス・プティパ、メフィスト、M...)
  高村順子(妹のクロード、プチ・ファウスト)
  高岸直樹、芝岡紀斗(光の天使)
  井脇幸江、佐野志織(妖精)
  飯田宗孝(マジック・キューピー)
 第2幕
  武石光嗣、倉谷武史、平野玲(スペイン闘牛士)
  早川恵子(中国バトン)
  首藤康之、遠藤千春(アラブ)
  荒井祐子、大島正樹(ソ連)
  古川和則(フェリックスと仲間たち)
  井脇幸江、森田雅順(パリ)
  斎藤友佳理、木村和夫(グラン・パ・ド・ドゥ)
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久々に見るバレエ。しかもベジャールの「くるみ割り」となればどんな舞台なのかとワクワクする。結果は予想とおり、奇想天外にしかも十分に楽しめる内容だった。そもそも「くるみ割り人形」を見たのはBSくらいしかなく、ライブではマリオネットの人形劇くらいのもの。チャイコフスキーのバレエ通りのお話ならばさして面白いとも思わないが、ベジャールの脚色はとても面白く、同時に感慨に満ちたものだった。

彼の幼年時代からの自叙伝を綴ったというストーリ設定からしてユニークだが、TVモニターが天井から降りてきて、彼自身のナレーションもまた異色。ベジャールの上手い日本語のおかげで見る方としてはイメージ付けがしっかりとし、壮大なバレエが楽しめた。

ベジャールの父がくるみを割るのが好きだったという話から美しいバレリーナであった母のイメージも良く伝わり、なぜかベジャールを通して「くるみ割り」が現実味を帯びてくる。ストーリーとは直接関係の無いスペインや中国、ロシア、パリといった要素も巧みにブレンドされ不思議と全体の統一感もあった。もちろんベジャール自叙伝でまとめられている訳であるが、やはり舞台に置かれた巨大なミロのヴィーナス像が全体をまとめるシンボルになっていたようだ。第1幕冒頭と第2幕フィナーレが同じ場面設定で、このお話はひとつの夢であったことを告げるのだが、クリスマスのプレゼントが「ミロのヴィーナス」のミニチュアだったとは・・・これにはびっくりした。バレエの素晴らしさはコメントするまでもなく、美しい舞台とともに見事というほかない。特にヴィーナス像の前で雪が降りながらの壮麗なバレエは圧巻だった。文句無しに楽しめた。


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