●J.S.バッハ『マタイ受難曲』BWV244
2000年2月27日(日)13:00/川口リリア音楽ホール
(演奏)
ソプラノ:武田裕子
アルト :小関奈々
テノール:川瀬幹比虎
バス :高井 治(イエス)
バス :初鹿野 剛(大祭司、ピラト)
バス :森野光生(ユダ、ペテロ)
オルガン:福水士帆
合唱 :バッハ協会合唱団
児童合唱:町田コダーイ合唱団
管弦楽 :バッハ協会管弦楽団
指揮・チェンバロ:山田康弘
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今年になってから第1回目のマタイはバッハ協会管弦楽団・合唱団によるもの。このアンサンブルは在京オケのメンバー主として東京芸大出身に山田康弘氏が率いるもの。演奏プログラムの何箇所には「拍手はご遠慮を」と注書きがあり、しかも演奏はぴったり13:00に開始した。最近、演奏時間ちょうどに演奏が始まらないことを期待して数分遅れてくる人が結構いるが、厳粛な音楽が鳴り響く中を慌て歩く人が結構多かった。そんな会場の騒音にも無関心に山田氏は淡々とマタイを進めて行く。これがまた実に素晴らしい音楽なので、多少のドタバタは全く気にはならなかった。
合唱といいアンサンブルといい、とても素晴らしい演奏だ。まるで音楽が悠久の大河の如く流れ行くためか、会場は物音一切しない集中力へと変化してゆく。まさに全ては福音史家を中心に受難の物語へと吸いこまれて行ったのである。まず川瀬の福音史家が安定した語りと歌がずば抜けていたと思う。ソリストでは小関のアルトも聴き応え十分だし、小人数の合唱の力強さ、個々のソロを含むアンサンブルも充実。
ステージレイアウトにも工夫があり、中央のチェンバロの奥に福音史家を、さらにその奥にソリストを。イエスは上部オルガンの左に、大祭司をその右へ。ちょうど福音史家とイエス、大祭司をむすぶ逆三角形がドラマに空間性をもたらしていて、音楽的も立体的に聞えた。それにしてもこの音楽ホールの響きも素晴らしい。休憩を含めての3時間40分はとても短く感じるほど。拍手も一切ないことがさらに厳粛な気分にさせてくれた。今年最初のマタイはとてもとても素晴らしいものであった。