●クロード・フランク/ピアノ・リサイタル
2000年2月12日(土)14:00/カザルスホール
(プログラム)
シューベルト :ピアノソナタ第21番変ロ長調D.960
ドビュッシー :前奏曲集
風変わりなラヴィーヌ将軍/西風の見たもの/
亜麻色の髪の乙女/花火
−休憩−
バッハ :トッカータ ハ短調BWV.911
ベートーヴェン:ピアノソナタ第32番ハ短調作品111
(アンコール)
モーツァルト :アンダンテ
シューマン :アラベスク
-----------------------------------------------------------------------
シュナーベル最後の弟子となったクロード・フランクのピアノリサイタルはプログラムの多彩さといい、その演奏の充実ぶりに大いに沸き立つものであった。構成は大きく3つのパートに分れている。最初と最後にシューベルトとベートーヴェンのピアノソナタを据え、中間部にドビュッシーとバッハ。実によく練られたプログラミングである。
最初のシューベルト。変ロ長調のこの作品は昨日のキシュのリサイタルでも取上げられたもので、偶然にも今日の最初の演目とは驚いた。キシュの演奏は輪郭のはっきりとしたピアニズムに溢れていたが、フランクの演奏は対照的だ。もっと大らかで優しい雄大さを感じさせる。40分に及ぶこの大作を、時間のたつもの忘れるほどに聞き入ることができたのは、何よりもフランクの音楽性の素晴らしさによるところだろう。
前半はシューベルトをじっくり聞いても疲れを感じさせることはなく、続くドビュッシーでまたまたピアノの多彩さを楽しめた。後半のバッハ。これも素晴らしい。まるでピアノが万華鏡の如く即興を奏で、ピアノという楽器を超越してしまったようだ。
後半のベートーヴェン。当然ながら最初のシューベルトとの対になっているのは明らかで、その第1楽章の深い響きで一瞬にして厳格なベートーヴェンの世界に引きずり込まれてしまった。第2楽章の崇高で、宙を舞うような清らかさは絶品。今日演奏された楽曲の数々を集約するような、そんな締めくくりのようにも聞えた。全てはベートーヴェン32番の第二楽章で回顧され、悟りの頂点に達するとでも言うのは大げさだが、そんな気がした。