●フィリップス・グラス交響曲第5番
「レクイエム、バルドゥとニルマナカヤ」(日本初演)
2000年1月30日(日)15:00/オーチャードホール
第1楽章「創造以前」/第2楽章「宇宙の創造」/第3楽章「生物の創造」
第4楽章「人類の創造」/第5楽章「愛と喜び」/第6楽章「悪と無知」
第7楽章「苦難」/第8楽章「慈悲」/第9楽章「死」
第10楽章「審判と黙示」/第11楽章「天国」/第12楽章「功徳の聖別」
指揮 :沼尻竜典
演奏 :東京フィルハーモニー交響楽団
ソプラノ:緑川まり
アルト :寺谷千枝子
テノール:福井 敬
バリトン:福島明也
バス :大島 建
合唱 :東京オペラシンガーズ/東京少年少女合唱隊
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昨年のザルツブルク音楽祭の委嘱作品であるフィリップ・グラスのコーラルシンフォニー第5番が日本初演された。休憩なし全12楽章100分は片時も耳を離せない集中力に満ちた音楽と演奏。宇宙の創造前から人類の滅亡、さらに再生までの壮大なドラマを綴ったもだが、単なるレクイエムというよりも壮大な宇宙と歴史を感ぜざるを得なかった。
まず音楽の素晴らしさもさることながら、テキストの重要性をここまで追求した作品も珍しい。題材はヘブライ、サンスクリット、ギリシャ、ズニ、日本、ハワイ、バンツー、キチェー、ペルシャ、ベンガリ、中国、チベット、ヒンディーの言葉による文書から採られているとか。これらが上手く調和させて普遍性を持たせているのが特色だ。
音楽はちょうどオルフの「カルミナ・ブラーナ」運命の女神を思わせるような強烈なリズムと畳み掛けるような推進力に満ち溢れた作風である。回転する音形は巨大な歯車となって、絶対的な回転宇宙を描写する。それに圧倒する合唱とオーケストラの咆哮にソリスト達の語りと歌。テキストがグローバルであるのと同様、音楽の要素にも西欧だけでなく、インドやチベットの影響も感じ取れる。それと同時にバッハの普遍性と同じくグラスの音楽も普遍的に聞えた。
演奏では東京オペラシンガーズが圧倒的に素晴らしい。しかもフォルティッシモが連続し、長時間歌いつづけるという難曲をパーフェクトの出来で。オーケストラもグラスの起伏の大きさを描ききり、緑川まりの圧倒するソプラノ、寺谷の叙情豊かなアルト。3日前のシュレーカー「はるかなる響き」に引き続き、東フィルは絶好調だった。