●東京フィルハーモニー交響楽団オペラコンチェルタンテ
 シュレーカー作曲『はるかなる響き』全3幕(日本初演)
 2000年1月27日(木)18:30/オーチャードホール
 指揮:大野和士
 グレーテ     :岩井理花
 フリッツ     :吉田浩之
 グラウマン    :藪西正道
 グラウマン夫人  :与田朝子
 ガストハウス主人 :大澤 建
 老女       :寺谷千枝子
 旅まわりの役者  :泉 良平
 ヴィゲリウス博士 :大久保光哉
 伯爵/警官    :河野克典
 騎士       :井上幸一
 ルドルフ     :山口俊彦
 ミッツィ/少女  :林 満里子
 ミリー/ウェイトレス:堪山貴子
 マリー      :五月女智恵
 スペイン女    :久保田尚子
 不審な人     :真野郁夫
 コーラスボーイ1 :倉石 真
 コーラスボーイ2 :吉川誠二
 バリトン・ソロ  :大森一英
 合唱       :東京オペラシンガーズ
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この作品は、ナチスに敗退音楽のレッテルを貼られた為、現在でも滅多に演奏されないとか。何とも歴史の影響力の大きさを感じるが、大変素晴らしいオペラだった。ロマン豊かな叙情が何とも素晴らしい。沸き立つ希望や大自然に潜んでいた「はるかなる響き」の音楽には大いに感動した。

音楽的にはマーラー、ワーグナー、R.シュトラウス時にはヴェリズモ・オペラの要素を併せ持ち、これらが上手くブレンドし、ひとつの大きな流れを作り出しているように感じた。単なるつなぎ合わせでなく、全幕を通しての統一感があり、見事な長編オペラを形作っていると思う。

演奏にも趣向が凝らされていて、オーケストラ背後のステージ段にもヴェネチア楽団とジプシー楽団のアンサンブルを配置し、演奏が極めて多元的。そのためか音楽の響きに奥行きがあり、立体的な音楽を楽しめた。歌手陣とオーケストラのバランスは絶妙という他なく、ドラマを優先させつつ、音楽も楽しませてくれるという贅沢さ。グレーテ(岩井)、フリッツ(吉田)の歌も十二分に作品の魅力を引出していた。

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