●キーロフ・オペラ日本公演 ヴェルディ『運命の力』
 2000年1月26日(水)18:30/NHKホール
 演出:エライジャ・モシンスキー
 指揮:ワレリー・ゲルギエフ
 レオノーラ   :マリーナ・シャグチ
 アルヴァーロ  :ゲガム・グリゴリアン
 カルロ     :ニコライ・プチリーン
 プレツィオジッラ:マリアンナ・タラーソワ
 グァルディアーノ神父:ゲンナジー・ゲズズベンコフ
 フラ・メリトーネ:ゲオルギー・ザスターヴニィ
 カラトラーヴァ伯爵:グリゴリー・カラセフ
 村長      :エフゲニー・ニキーティン
 トラブーコ   :ニコライ・ガシーエフ
 軍医      :ユーリー・ラプテフ
 クルラ     :スヴェトラーナ・ヴォルコワ
 キーロフ歌劇場管弦楽団・合唱団
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先週の「オランダ人」に期待を外されたため、今日の公演については半信半疑な状態で臨んだ。ワーグナーはダメだったがヴェルディはどうか?このような気持ちでオペラを見るのは面白くない。序曲ではオーケストラがまずまず鳴っていて、ゲルギエフの緊張が確かに音楽も伝わっている。ようやく眠れる獅子が目を覚まし始めたか。が、まだまだ全開ではなく、どうも断片的に聞える。

幕が開くと圧迫感を感じる伯爵邸の部屋。レオノーラ役のゴルチャコーワは昨年事故にあい、歯の治療中で歌えないという。この件に関するお知らせとお詫びを上演直前にアナウンスされると、ますますマイナスの気分になってくる。面白くない。しかし代役のシャグチは結構いけるではないか。最初の歌い出しで彼女の美声に魅了されてしまった。

第3幕からはアルヴァーロ(グリゴリアン)とカルロ(プチ−リン)の緊迫した場面。ここで彼ら二人の素晴らしい歌が聴けた。しかもドラマに熱が入っている。開放的なイタリアオペラというよりも凝縮したドラマ性を感じる。この緊張に煽られてか、オーケストラのヴォルテージも上昇。この時ゲルギエフの独特な持ち上げるような手の振りが見られるようになった気がする。第4幕も同様、緊張感が持続し、特にシャグチのレオノーラが素晴らしかった。今回は初演版ということで大詰めはアルヴァーロも死んでしまう。その時彼が残した言葉、「私は地獄からの使者だ。人類は滅亡だ。」に衝撃を覚えた。今回の「運命の力」でようやくオペラらしさを感じた。次回の「スペード」に期待したい。


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