●ドレスデン国立歌劇場管弦楽団・日本公演
2000年1月23日(日)15:00/サントリーホール
(演奏)
指揮 :ジュゼッペ・シノーポリ
ソプラノ:イヴリン・ヘリツィウス
テノール:ローランド・ワーゲンフューラー
バス :フィリップ・カン
(プログラム)
ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」第1幕
−休憩−
ワーグナー:楽劇「神々の黄昏」より
夜明けとジークフリートのラインへの旅
ジークフリートの葬送行進曲
ブリュンヒルデの自己犠牲
終曲
(アンコール)ジークフリートの葬送行進曲
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ワルキューレ第1幕前奏、嵐の場面。しょっぱなから弦のトレモロが深い響きで耳を捉えて離さない。嵐の鼓動は一度は遠ざかり、再び襲い掛かってくる。これにブラスが咆哮し始め、嵐はいよいよ本格化した。ジークムントとジークリンデの場面、何とも素晴らしい歌声であることか。もはやコンサート形式を越えて、ワーグナーの楽劇が目に見えてくるようだ。シノーポリの指揮は全く無駄が無く、オーケストラからワーグナーの重厚な世界を描き出す。
ドレスデンシュターツカペレはいぶし銀とよく謳われるが、これは本当だった。ビロードを重ねたようなしなやかな弦でワーグナーのあの官能的で魅惑の音楽を奏でられると堪らない。管・弦・打のハーモニーも素晴らしく、特に左右に配置したティンパニは強烈だった。これはオペラだ、いや楽劇だ。これが顕著だったのはジークムントとフンディングのくだり。二人の間の長い沈黙。この時のピアニッシモと無音の緊張感。コンサート形式でこの静止状態をここまで迫力あるものに出きるのかと驚いた。
「冬の嵐が過ぎて」の場面からはワーグナーの魔力が凝縮されている。シノーポリはこれを200%の魅力へと導いていく。ワーゲンフューラーのヘルデンで甘いテノール、ヘリツィウスのデリカシーに富んだソプラノはワーグナーの世界にぴったりだ。特にフルオーケストラにも負けないヘリツィウスのドラマティックさは凄い。これであのデリカシー豊かな美しさが保たれいるのだから驚異に近い。ノートゥングの輝きとジークリンデとジークムントの歓喜のうちに第1幕はクライマックスとなった。凄い。凄すぎるワルキューレだった。
後半は「神々の黄昏」まで飛んでしまうのが多少違和感を感じない訳ではない。やはりワルキューレ1幕を聞くと第3幕のワルキューレの騎行、ヴォータンの別れまでを聴きたいもの。とはいえ、神々の黄昏も圧倒するサウンドとヘリツィウスのブリュンヒルデが聞けた。とにかくゼンパー・オーパーのオーケストラはとにかくワーグナーが上手い。シノーポリの飛びあがる指揮にも機敏に反応し、ド
ラマとの融合はさすが。ヘリツィウスのブリュンヒルデも若々しいながら、立派なドラマチックソプラノ。今年になってベスト・ワンの演奏会であった。