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第7回 バック・ヤード・パーティー (その1)

人種を問わず、アメリカ人はパーティーが大好きだ。何かと理由をつけてショッチュウやっている。冠婚葬祭、誕生日、何かのアニバーサリー (記念日) はもとより、入学、卒業パーティー、ベイビー・シャワー (出産祝い) 、バチュラー・パーティー (結婚前の最後の独身パーティー) 、変わったところでは、プチ・整形パーティー (合同シワ取りパーティー) 、など、その内容は千差万別だ。しかし、どのようなパーティーでもバンドの生演奏は必然で、我々のようなインディぺンデント (ブッキング・エージェントに所属していない自営) ミュージシャンにとっては日銭を稼ぐ絶好のチャンスだ。比較的、企業の社内行事や冠婚葬祭などフォーマルなパーティーではギャラも高く、ミュージシャンの扱い (楽屋のケータリングなどの質) も良い。個人のホーム・パーティーなどでもバンドを雇う人が多く、ギャラは安いが、飲み放題でそこの家の家庭料理が楽しめたり、いろんなパーティー志向があるので面白い。当地ロス・アンジェルスでは気候も良いので、週末など多くの人が自宅の裏庭 (バック・ヤード) で盛大にやっている。

どちらかと言うと、このようなバック・ヤード・パーティーに出演する方が楽しい。プライベートなので皆フレンドリーだし、飲み放題で家庭料理も食い放題っ!好きな曲を演奏しておひねりをもらい、その銭で一週間分の食料を買って帰る。普段チャンとした会社勤めの人でも週末だけ、ミュージシャンとしてこのようなパーティー・バンドでバリバリやって家族の食費なりを助けている人も多いので尊敬する。

先日、相棒のジェームスがGIGを取ってきた。知り合いの知り合いの知り合い (いったい誰なんだ?) のホーム・パーティー (バック・ヤード・パーティー) のGIGで、主催者はブルーズ・ファンだと言う。俺は「やるっ!」と即答した。

よくよく話を聞いてみるとコスチュマー (TVや映画の衣装さん) のパーティーで、ワーナー・ブラザースやディズニーTV、HBOなどで働いている現役コスチュマーのコンベンション・プライベート・パーティーだそうだ。
「やったじゃんっ!ジェームスっ!」俺は大声で言った。

もし彼らの中に俺達を気に入ってくれる人が出れば何かの1シーンにでも採用してもらえるかもしれないっ!淡い期待が脳裏をかすめる。以前にも誰かのホーム・パーティーで知り合った人の推薦で、ロイ・ゲインズ (テキサスブルース・ギターレジェンド) とのデュオで「ビバリーヒルズ90210」と言うソープ・オペラ (TV昼メロ) の1シーンに出演した事があった。その後、このドラマは「ビバリーヒルズ青春白書」というタイトルで、俺の想像を絶するほど日本で大ブレイクしたそうだ。このような事はバンドのプロモーションとして最高なばかりか、行った先で新たなチャンスがあるかも知れないので、今回は俺とジェームスで何とか良いフック・アップを得たい。ジェームスは「カジュアルGIGだからアロハ・シャツでも着てきな」と言ったが、俺はショウビジネスの現役コスチュマーのパーティーと思うと、その日のステージ衣装に無頓着ではいられない。まして何らかのフック・アップを期待するのなら、それなりの主張が衣装になければアテンションも得られないだろう。かといって無意味なオーバー・プロデュースは避けたい。などと、浮き足立った事を考えていた。

そんな時、ジェームスの奥さんが、
「ジム・ベルーシーのパーソナル・コスチュマーもくるみたいよォ〜」と言った。
俺:「エーッ!」

俺はコレだっ!と思った。ジョン・ベルーシー亡き後、実弟のジム・ベルーシーがブルース・ブラザースをやっている。子供や黒人、他の人種もメンバーに入って映画やCDなども製作しているので、ヒョッとしてその中に東洋人のキャラクターが必要なのではないか?いや、絶対に必要だっ!と勝手に思い込み、ブルース・ブラザースに入っても違和感の無い衣装を着る事にした。コレならいつも着ている自前衣装の応用でOKだし、買わなくてスムっ。そして何とかその人の気を引きつけてその業界にもぐりこみたい。で、もし新生ブルース・ブラザースに入れたら、一生、生活費には困らないだろうし、そればかりか一躍スターダムにのし上がって、キャラクター・グッズの店をオープンしたり、自分の名前のイカス・ブルース・バーとか経営しちゃって好きなバンドをブックしたりと、浅はかな空想が頭をよぎる。夢は果てしない。しかし、雲をつかむような話だが、本当にそれを信じて取り組めば、何らかの結果は出るものだ。考えているだけで、何もやらないよりはマシだ。 まっ!?どうであれ、当たって砕けろっ!だっ!



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