ゆず『初のドーム公演 ふたりのビッグ(エッグ)ショー』

2001年 6月29日(金)東京ドーム

3時間の大熱唱!もうこれに尽きるライブだった。

「トビラ」ツアーの最中の昨年の「冬至の日」ライブ。その時行ったライブが衝撃的だった。バンドでのツアー中の2人だけの「ゆず」の凄さ。それに尽きる。そして東京ドームふたりだけのライブがその後すぐ決まった。彼らがツアー最後に発表したときドームでどんなパフォーマンスを繰り広げるか楽しみでもあり不安もよぎった。


テーマはとにかくシンプル。出来るだけ質素な舞台に照明。クレーンに吊るされた最低限のスピーカー。これが基になって話が進んだ。曲順は例によって2人に任せた。今回は単なる通過点として今の「ゆず」を表現することを考えた。曲順の変更は殆どなかった。リハーサルが始まるまでの情報は基本舞台と候補曲だけだった。

今回のライブでの見せ所はやはり本編で客電を消さなかったことだろう。照明の清水 淳さんの提案だったのだが、あえて客電を消さないことで素っ裸の「ゆず」が出てその勢い、それは路上ライブのそれを思い出させるほど素晴らしかった。それはあえて挑戦でも無く、自然にその流れで行くことになった。僕は曲順も流れも知っていながらライブの本編の6曲目位にすでに彼らの勢いを感じてしまって、客電がもうこのまま本編消えないけど全然そんなことを感じさせない程、曲の流れも勢いも出来ていたと感じた。

そしてアンコールをピッチャーマウンドの上でやること。これは過去の野球場ライブでも挑戦したこと。今回も広いドームの「へそ」で歌って欲しかった。ピッチャーマウンドは野球場のフィールドで1番高いところ。花形のピッチャーが輝くところ。そこに「ゆず」が立ちアンコールを歌って欲しかったのだ。そして、本舞台からの移動。これが今回のテーマにもなった。

このライブの前にジャパンアクションエンタープライズの舞台をみんなで観に行った。お芝居とイリュージョンとアクション。そのイリュージョン的なものが出来れば良いかなと思っていた。ただ、現実的に「ゆず」の2人をどう移動させるか?これが大テーマになった。そして、それは時間との勝負でもあった。本編が終り客電が落ち照明ショウを行いその終りに2人がサブステージに移動していてアンコールの1曲目を演奏する。ってのが流れだった。

実際、ドームでの移動は前日までは目測でしか出来なかった。徒歩で何分かかるかとは事前に確認出来ていたが、、。ドームを使っての照明ショウの内容が確認出来たのは前日だった。イメージが出来ていても実際にドームで映し出さなければ表現の仕方が分からないから。本編が終ってから最短での移動時間を割り出し、客電を消すタイミングを決める。そして、そのイメージを考えて北川悠仁と事前に曲を決めてアレンジをした。時間にして5分。この間に移動を完全にしなければならない。それまでの楽器の音色と違った音色がアンコール前に突然出てくることにかなりの抵抗が正直あった。でもそれを感じさせない「何か」が出来れば大丈夫だと思った。

照明ショウの内容がプラネタリウム(星空)だったので考えた末に楽曲を「星がきれい」のCDに入ってるインストに決めた。2コーラス目からは演奏が重厚に成りすぎるので1コーラス目からエンディングにとんで終るように編曲した。この曲の時間が2分45秒。そしてその前に「夕暮れ」のイメージを付けることにした。ドームを考えて「時」の流れを表現しようとした。夕暮れから夜への流れを。「夕暮れどき」という3カウントのカップリングの曲をオルゴールの音色でアレンジした。時間を考えて2コーラスにして2コーラス目には悠仁の手弾きのアンサンブルも入れて少しだけ音が厚くなったりしてるオリジナルの力作だった。多分観客の多くはそこまでは分からなかっただろうが、、。この曲の時間が2分15秒。

「夕暮れどき」はLEDを使って映像界の巨匠鶴岡さん(鶴チャン)にお願いして夕暮れを創ってもらった。鶴チャンには本当に毎回毎回驚かされる。今回も開場中の販売物の映像、開演前の愛川欽也&うつみ宮土里さんの映像。「またあおう」の映像。これらは全て鶴岡さんの手にかかったもの。ちなみにバックスクリーンに出た「ふたりのビッグ(エッグ)ショー」と「ロゴ」は悠仁の手書き文字。その「夕暮れどき」のLED映像からドームの屋根を使った大きな展開でプラネタリウムにドームが変わっていった。




さて、今回もうひとつの裏テーマがあった。これはかなり現実的な話だ。それは「時間」だった。これはとても大きな問題だった。通常東京ドームでの公演時間は夜の9時を基本としてるそうだ。夜間の騒音問題らしい。そして今回相当無理をお願いして9時30分までその時間を延ばしてもらった。でもそれ以上は音を出すことが出来なくなるのだ。時間との戦いは、最後の通しリハーサルが終ってからの大問題になってしまった。「ゆず」の通常のライブでは話があったり、お客さんとのやり取りがあったりして長引いていくものだ。今回もどんなライブになるかは蓋を開けてみなければ分からなかったのだ。スタジオでお客さんがいない中での通しリハーサルでその時間は2時間40分を指していたのだ。1曲1曲は短くともギターの持ち替えから話の流れ、曲の終り方まで、、。

今回の公演日が平日の金曜日と言うこともあって開演が6時30分だった。大きな問題を抱えてしまった。通しリハーサルの後、ボズの稲葉氏、黒幕黒木氏、と「ゆず」との緊急ミーティングは1時間30分も続いた。それは重く辛い話が続いた。「時間」との戦い。曲をカットする方法も考えたが、通しをやって流れは凄く良いのはみんな理解をしていた。ただ時間が読めない。そして時間が足りない。開演時間の厳守と省けるところを省く。そしてアンコールへの間を短くする。解決案はその時出来ることを出来るだけしっかり敏速にやることに決めた。重く辛い決断だった。本番の出来でアンコールの演奏出来る曲数が決まってしまうのだ。アンコールの移動も出来る限りの短縮をしなければならない。

「ゆず」の2人は過去自由にライブを楽しんできたと思う。今回、ドームに向けてなるべくしゃべるのをやめて曲に専念してお客さんをアオルのも減らす方向に考えていた。それでもやはり曲によってはアオルことは必要だし、《M C》(曲と曲の間のおしゃべり)は大事な要素だと思う。それらを引っ括めて今回のドームライブは「時間」との戦いになってしまった事は僕には大きな反省点でもある。時間を気にしないでライブをやって欲しかった。その真夜中、彼らは路上に出て歌った。そして僕も行った。本番三日前の出来事だった。
彼らは納得をしてくれた。とにかく頑張る。東京ドーム公演の開演時間がぴったりだったのはこの為だったのだ。被害を被った方にはただただすみませんでした。
開場中、多くの観客を速やかに誘導してくれたシミズスポーツとライブパワーには心より感謝します。



ドームでは「音」を考えた。ギター、タンバリン、ピアニカ、ハーモニカーそして声。これらをしっかり伝える。本編は出来る自信があった。ただ、アンコールは未知数だった。野球場の時は最初から本舞台からのスピーカーシステムでライブをやった。今回は移動してからどうするか?サブステージに移動してから観客の多くは向きを180度変えて「ゆず」を観る。その時、音がどちらの方向から飛んで来る(聞えるか)を考えた。彼らの方向から音が聞えるのが常套なのだ。でもそこには大量のスピーカーは置けないのだ。出来る限りサブステージの存在を隠しておきたかったから。

そして、今回「ゆず」が移動してからのアンコールは大事な曲が続くのだ。音をどうするか?サブステージの周りにスピーカーを置いてトライしてみたが音量的に足りない。そして保護的にメインスピーカーを出したら音の遅れが気になってしまうのだ。音は距離によって伝わり方が違ってくる。ドームになれば本当に音がグルングルンに回ってしまうのだ。それを気持ち良く伝えるためにディレイスピーカー(遅れてきた音に合わせて音を出す)を置いて対応するのだが、それでも観る位置によってかなり変わってしまうのだ。特にサブステージに関しては、無理を承知でトライしたのだから、、、。選択が迫られた瞬間だった。音響担当に望月康生とその社長の伊澤俊司氏、そして黒幕BL/DG(ビーエル)黒木氏とで考えて結論を出した。音が小さくて自然に聞えるか不自然だけど大きな音量を選べる方かの選択だったのだが、黒木氏の一言で決めた。「ここはドーム大きな事をしよう」と。迷いが無くなった。結果、本番での観客の声援の大きさは想像を超えていて、この選択は正しかったと振り返って思う。後の問題は「ゆず」の2人の演奏状況なのだ。

今回、この演出が決まってからリハーサルスタジオでは音がグルングルンに回ってる環境でも出来るシステムを考えてリハーサルをしていた。それはイヤーモニターシステムと言って自分の必要とする音を電波でとばしてワイヤレスシステムで直接耳で聴くシステム。これを実践に使ってみて本舞台では片耳で充分なのだが、サブステージではどうか?両耳で聴くことによりしっかりモニターできるはずだが、、。リハーサルでは大丈夫だったがドームではどうだろうか?ドームでのリハーサルは大丈夫だった。決して近い席の観客を観ない(手拍子は確実に遅れ、歌も遅れるから)で耳からの音を頼りに演奏をするというかなりハードな演奏が求められたのだが、、。

そしてあってはならない野球場の時にも起きた出来事で悠仁の通常使ってない片耳の方が断線していて使いものにならなかったのだ。これが今回又もや本番中に起きた出来事である。普通、断線はそう滅多に起きない事で今回もリハーサルから相当この繰り返しをしていたのだが、、。当日のドームでのリハーサルまで大丈夫だったのに、余程悠仁とは相性が良くないのだろう。悠仁はアンコール1曲目の「嗚呼、青春の日々」をこの最悪の状況で歌いきったのである。「〜元気があれば何でも出来る〜」凄いぞ悠仁!!
その本番中のトラブルの時、岩沢厚治(岩チャン)に直接尋ねたら「大丈夫」という答え。冷静だったな〜。まぁこの日の2人の出来は想像を遥かに越えるほど素晴らしく力強かったと思う。そのトラブルも乗り越えて張り叫んだ「シュビドゥバー」は5万5千人に届いたはず。伝説を創った瞬間だと思う。最後の曲「てっぺん」は忘れられない曲になるだろう。もっとも岩チャンは揺れるステージと戦ってたらしいけど、、。


今回のドームを振り変えると各セクションがしっかり構成を考えて仕事をしたと思う。「夏色」での銀テープ5000本はとても高く綺麗だった。早くビデオが観たい。
そして「ゆず」の2人がしっかり自分の持っている力を出せたこと。それが大きかったと思う。1回限りの大きなステージだからこそ悔いの残らないライブをして欲しかったし。

アンコールを含めて2時間55分のステージ。全く持って圧巻だったと思う。今の日本でこれだけのステージを2人だけで出来るアーチストは見当たらないと思う。今後、彼らを目指して出てくるであろうアーチストにももっとも刺激的なライブパフォーマンスだったと思う。そして彼らのこれからにとってもとても大事なステップと成ったステージだったと思う。まだまだ「ゆず」の2人には余力があるはず。そうまだまだ、、、。



昨日、今度出る「歌時記」を聴いた。エンジニアの市川君の頑張りに拍手。「素晴らしい」の一言。

そして、東京ドームのライブは決して決して夢では無かったと言うこと。

   
   2001/ 7/ 3 事務所にて


演奏曲

M-1 春一番 M-2 OPENING M-3 いこう M-4 ところで M-5 四時五分

M-6 大バカ者 M-7 〜風まかせ〜 M-8 境界線 M-9 ねぇ

M-10 する〜 M-11 遊園地 M-12 地下街 M-13 人生芸無

M-14 サヨナラバス M-15 からっぽ M-16 雨と泪 M-17 手紙

M-18 月曜日の週末 M-19 始まりの場所 M-20 シャララン

M-21 センチメンタル M-22 くず星 M-23 心のままに

M-24 夏色 M-25 贈る詩 M-26 3カウント M-27 少年 M-28 友達の唄

EN-1 嗚呼、青春の日々 EN-2 飛べない鳥 EN-3 いつか EN-4 シュビドゥバー EN-5 蛍の光 EN-6 てっぺん