ムーンライダーズ 『OVER the MOON/晩秋のジャパンツアー2006』

30周年の記念すべきムーンライダーズ(鈴木慶一、岡田 徹、かしぶち哲郎、武川雅寛、白井良明、鈴木博文)のツアーが無事終った。

夏に日比谷野外音楽堂で多くのゲストを迎えての記念ライブを行ってた関係で今回は新譜「MOON OVER the ROSEBUD」の楽曲を中心としたツアーになった。毎度ながら鈴木慶一氏とプランを一緒に考えた。毎回毎回この時が楽しい時間だ。曲順と全体の構成のコンセプトそれに台本まで毎回慶一さんの方から提示されると見事に筋書きがあって感動する。事前に渡され聞き込んだ新譜は相当良く、自分なりのイメージも付け加えて構成して行った。今回はツアーで各会場の大きさが違い、最後の渋谷 C.C.Lemonホール(旧名称・渋谷公会堂)に標準を置いたコンセプトで始動した。大きく分けて前半と後半の2部構成。紗幕を使う。出来るだけ紗幕の中で演奏する。「窓から差し込む光」「机」「イス」「ガイコツ」など、、、。

内容的には前半9曲までを完全な組曲の如く流れを創った。紗幕越しに見えるメンバー。それに映像も客席側から映写する事で面白さも増す演出。上手にはホテルをイメージさせる机。全ての事が「時」の流れを感じさせる。直前に参加が決まったコーラスのサチも良いアクセントが出せた。

開場時に通常流れるB.Gも無し。最初に流れる音は新譜から。それも客電が点いたままでの始まり。やがて客電が落ち、暗闇から机に座ったパーティが終った様子の6人が窓から差し込む光に照される。そして武川氏だけ立ち上がり舞台を横切り雄叫び。メンバーが立ち位置に移動して演奏へ。2曲目の「A Song for All Good Lovers」は映像との絡み。この畳掛けは今回のショウの凄く良い見せ場だと思う。3曲目の「WHEATHERMAN」からがサポートメンバーの矢部浩志のドラムも加わりサウンドに厚みが出る。

各会場での悪条件の中、制作を担当した菊池が頑張ってくれて映像を全ての会場で出せた。とても大事な事だった。映像の長さもあるので出すタイミング、大きさ等を各会場で考えて行った。コンピューターで誰もが簡単に映像を出せる時代になり便利だけど何事も大事なのはそのコンセプトだと思う。タイミングも大事だし何を出すのかも。センスって大事だなと最近つくづく思う。難しいけど、、。

渋谷 C.C.Lemonホールで紗幕の無くし方が難しかった。前半の最後に紗幕が無くなり2部になる大事な切り替わる所。通常、上方向に幕は無くなるのだが、そののり代分が足りなく飛び切らないのだ。振り落とす事にした。「Scum Party」の最後の「〜プール方が騒々しいな〜」の後の慶一さんのAGに合わせつつ、映像のガイコツの無くなり方も見つつの本番1回の「キメ」の部分だ。イメージあったけど何度も練習が出来ずに各スタッフと慶一さんにタイミングを伝える。リハーサルは見事に失敗。照明が合わない。音合わせに変更。時間も無く本番に賭けた。本番は上手く行った。珍しく舞台で自分で切っ掛けの合図を出した。

今回はツアーでライブが終る度事にダメだしをして次回のライブに繋げて行った。各スタッフも前向きに捉えて意見交換をした。大阪 なんばHatchは特に良かった。良い会場だったしライブも良かった。勿論、渋谷 C.C.Lemonホールはコンセプトが全部出来て良かった。ただ、通常のツアーだと機材等が持ち回る事が出来るが、今回のツアーは楽器のみの持ち込んでのツアーだった。渋谷 C.C.Lemonホールが実質初日だった。あと4本ツアーを機材を持ち回って、最後もう1度渋谷 C.C.Lemonホールで出来たら相当完成度が上がっていたと言い切れるほど今回のスタッフの意気込みは素晴らしかったし自分自身完成度が高かったしまだやり残したもっと良くなる部分が多かった。それでも今回のツアーはコンセプトがしっかり出来ていて面白かった。


毎回、毎回、鈴木慶一さんとの意見交換は楽しく、本番がとても楽しみになる。出来る限りで良いものを創りというコンセプトが大好きだ。そして、大人が見終わった後、そのライブについていろいろ語り合えるのが素晴らしいと思う。良いライブツアーだった。