2006/1/21〜5/25 ゆず/体育館ツアー2006「リボン」

長く短くそしてやっぱり長かったツアーが終った。20会場38公演、1本1本を振り返るとどれもこれも思い出が詰まったライブだった。僕の中では母親がツアー中に亡くなった事を含めて全ての「リボン」ツアーが思い出になり今、終った。

昨年の11月にレコーディング中のデモを貰って僕自身2度目のラスベガスに向かった。日産スタジアムが終った段階でひとつの大きな区切りが着き、次のツアーはどのような新曲が出来、どのような楽曲を中心にしてどのようなツアーに成るのか?を考えながら。往復の機内と滞在中ホテルでiPodから「リボン」がずっと流れてた。等身大の街の中での出来事の唄達。全曲に色があり素直に何度も聞き込む事が出来た。真っ暗の機内での「しんしん」「女神」「夕立ち」は特に印象が強かった。もちろん「リアル」のサビ部分の「〜カッコ悪い僕らの唄を カッコつけて唄い続けるんだ〜」は「ゆず」の今後への意思表明の答えだと感じた。

舞台セットの話のポイントは「コンビニ」だった。アンコールで「コンビニ」セットを創り「もうすぐ30才」を演じる。幕を使いたい。

本編では新しい「ゆず」をテーマに「何か」新しいもの。色々試行錯誤を繰り返して舞台セットが出来上がって行った。バンドのバックに簀の子状のドームビジョンをどうしても使いたかった。日産スタジアムでも同様に使ったのだが、メンバーをシルエットにしたり、映像をバックに出来たり、色で染めたり、、。「ゆず」には映像は欠かせないので大きなLEDを2階部分に4分割式に開閉出来るようにした。組み合わせをそれぞれ数字にして「1−2−1」とか「2−0−2」とかパターンを決め曲の流れで動きを作った。その後ろにホリゾント幕をしたかったのだが、それに近い発想で白い幕にLEDをあてて染める事にした。これも開閉出来たら嬉しいなと話したら見事に開閉式になった。そして、天井部分では「ゆず」では初めてトラスを動かす事にした。3つの輪状のモノを上下と傾きを変える事が出来るように。LED の開閉のパターンとトラスの動き、白幕の動きを曲順に合せて作り込んだ。

舞台セットと同様に曲順審議委員会も毎度の事ながら話し合い、北川悠仁会心の曲順発表があり、それを中心にリハーサルが進んだ。今回のツアーで1度もブレなかったのが曲順だった。早い段階から曲順を決め、それについての演出プランを模索した。ブロックに分けて1つ1つしっかりコンセプトを決めて作り込んで行った。

オープニングの「ニンジン」の悠仁始まりは良かった。忘れもしない目茶苦茶チューニングで始まったあの日のライブも今では忘れられない思い出だし、毎回毎回緊張感のあるオープニングだった。「桜木町」「栄光の架橋」はどうしても今回演じるべき曲だと思った。「桜木町」は白幕を寄せて小島パパの電飾プランでどう見せるか。2番はいろいろ試行錯誤したが綺麗に見えたと思う。「栄光の架橋」はオーケストラ的な大掛かりなアレンジは日産スタジアムでやったので真逆の最小の編成でやった。そしてこの照明とドームビジョンの明暗には凝った。さいたまスーパーアリーナでのゲネ中に又もや照明の小野川信夫氏と二人で今回はムービングの霜山氏も交えて、光りの点き方、消し方、動きを全て構成して作った。曲頭はショウの始まりの如くドームビジョンがセンターから輝き出しSTAR DOG'Sのメンバーをシルエットにしていく。その為に演奏してないメンバーにも残って貰った。そして「矢」と称した「ゆず」の二人の間から客席中央上部に放たれる光り。明と暗の世界。限りなく光りの数を減らして創り出したかった。間奏では昼田洋二にスポットが当り「ゆず」の二人がシルエットに。そして大サビでの矢の太さと最後の言葉での動き。「心に滲みる」がテーマで、それは勝者と敗者だけでは無く「人生の明暗」を劇的に表現したかった。初日の感動は今でも忘れられない出来だった。意味のある照明が僕は好きだ。

「ダスティンホフマン」からは新譜「リボン」のコーナー。「ヒーロー見参」は岩沢ワールド満載の曲に悠仁の遊び心が混ざった構成に。追加公演では岩ちゃんハープを増やし悠仁もその場で絵を描くという手法を取り入れて素晴らしい出来になったと思う。ライブ感を出しての見所。毎回のパフォーマンスの高さに驚きながら楽しみだった。「チェリートレイン」は男の子の誰もが通る道。切なくとも輝いてる感じが良い。追加公演ではサオ(ギター類のネックのある楽器を呼ぶ)隊を結成してトレインをして観客との距離感を狭くしたかった。振り付けも毎回のアドリブで面白かった。「イナバウァー」忘れられないパフォーマンスに!!

「夕立ち」は進化して行った。映像の鶴ちゃんに「何か」不変性をテーマにした映像をお願いして小野川さんには動きが無いスケール感を作り込んで貰った。色々な意見交換の中、日々変化を少しずつ加えて行った曲。ツアーの中盤では「静」の中の「力強さ」「不変」へのテーマみたいなのが出来上がったと思った。舞台の後ろの大黒幕(黒い大きな幕)をこの曲1曲の為染めた。唄ってる場所は変わらないが背景の変化で小さな空間が終りには大きな背景に成り、やがて包み込むよう空間での終りという感じ。大好きな曲でやりたかった事を表現出来たと思う。

「しんしん」で雪を降らしたい。「いつか」の雪とは違う素晴らしい雪を。飛行機の中でこの曲のイメージが出来てた。雪の見せ方はなるべく後で長く見せるのは飽きるので劇的に見せるには?と悩んだ。イントロにははどうしても暖い灯が欲しかった。イメージは「かまくら」の中で陽炎の様に。思い出になってしまった過去の恋愛を懐かしむ様に。盛り上がりでは照明ショウを曲の音にリンクして決め所を作った。1拍の休符でのキメ。そして後奏で映像が2つに分れてLEDが左右に開き、少し遅れて白幕も左右に開く。「ゆず」はリフターで舞台下にハケ着替えに。そして雪が「しんしん」と降る。静寂。ケン坊にゲネプロの前に電話でピアノのイメージの曲をお願いして曲間を埋めた。そのメロディで白幕とLEDがポジションに動いて「ゆず」の二人登場。これを何度も練習して作り込んだ。雪が会場の状況で毎度毎度違う降り方になったりして苦労した。また、雪当ての照明の場所も堀ちゃん(道具のスペシャリスト)がセットを細工してくれてかなり良くなった。

「静寂」とか「固唾を呑む」様な会場が静まり返るシーンを1つでも多く作る事が出来るかが大事な事。ライブでしか出来ない醍醐味。出来た時の喜び。それを難しいが何度も悩みながら求めた。

「青」は日産スタジアムでやらなかった曲。冬の代表曲。追加公演では変更案もあったけどやり切る事にした。「嗚呼、青春の日々」そして「夏色」「超特急」この流れは良かった。特に「超特急」での花道での熱唱はやりたかった。トラスも動き、映像、照明、電飾各パートが最高に輝く瞬間を二人が動く事で一体感があった。

この後の静寂は狙って暗転の間を創った。歓声が落ち着きはじめて空気感が変わる瞬間を待ってから二人のサスが点き喋り始める。前の曲までの空気とは違う空気で「女神」への喋り。「女神」の唄の入り方は「ゆず」ならでは芸当。阿吽の呼吸。素晴らしい。鶴ちゃんの映像があって、照明の大きな空間を照す変化。曲の中で大きなそして神秘性と輝きを持った壮大曲に仕上がった。このライブのテーマは「女神」と「リアル」を何処まで作り込めるかだった。「女神」の映像は壮大な感じがあり「生」への表現、ビッグバンでの宇宙誕生の如く、小さな世界での唄い出しがやがてアリーナ全体を照す如くの光線の数々。その壮大感が表現出来たと思う。「夕立ち」の時の舞台側の壮大性とは違う世界の会場全体での壮大感をやりたかった。そして、本編最後の「リアル」へ。

宇宙空間の世界観から照明が消えた瞬間に「さぁ本当の愛を確かめに行くんだ」この文字を読んだ瞬間に岩沢厚治の生ギター1本のイントロへ。悠仁のエレキギターの始まりで岩ちゃんの生ギターが本編最後の曲。兎に角「きらびやか」がテーマの曲。大サビからは花吹雪を降らせる事に。そのキメの部分では虹を意識した。全体の照明を消して「虹」が客席に届くように。その一瞬の虹の後に宙に舞う色とりどりの花吹雪がやりたかった。その花吹雪の形にはこだわった。短冊状が一番長く綺麗に舞う。これを多くして、それにいろいろな他の形を混ぜ色も出来る限りの色を混ぜてもらった。ステージも多くの色が輝くように。会場全体が1つの「きらびやか」な世界になるように。電飾もハデにお願いした。この曲で全てがやり切った如く全てを点けた。そしてエンディング「〜カッコ悪い僕らの唄を カッコつけて唄い続けるんだ〜」「〜この悲しみさえ受け止めて さぁ本当の愛を探しに行くんだ〜」この二人の部分は出来るだけ質素になるように。最後のエンディングはリハーサル中模索して最終的に力強くワンコードで厚みを増して終えるやり方に決めた。ここまでの本編約2時間のドラマでどれだけ感動が創れるか?だった。そして第2幕へ、、。

「コンビニ」のプランをどう実現させるか?これが大きなテーマだった。一番最初の打ち合わせプランは、幕が出てきて、幕が開きそこには本物のコンビニが出現しするだった。だが現実的に検証して行き、そのセットを隠す所も出す場所も無かった。幕に関してはアンコールの段階でトラスを下げて幕を吊り付けて上げるで決まった。観客の前での大転換。そして幕の中でポイントでコンビニを表現する事になった。連日色々なコンビニ行ってはアイデアを出し合った。メンバーの衣装も考えた。ロゴも。合羽橋に行って小物も買ってきた。凄い手作りだった。1階部分の背景はドームビジョンでSTAR DOG'Sの回りに壁を作る事で徐々にコンビニが出来上がっていった。追加公演では各イベンターに花もお願いして「新装開店」の文字も入れてもらった。レジと肉まんセットとおでんのセットそれに象徴する看板でバランスを取り、レジには岩ちゃんが立ち、お立ち台を用意した。因みにレジの台上でマイクスタンドになっていた某飴はスタッフへの差し入れをそのまま舞台で使った。公演毎に飴が減って行ったけど。

「もうすぐ30才」の歌詞の流れで背景とセットを考えた。部屋とテレビ、街中、携帯、タクシー、カラオケ。部屋はゲネの最中に悠仁と買いに行った。スタンドと観葉植物も。テレビの映像も「ゆず」の昔の映像を使った。街中のすれ違う人達をどうするかも悩んだ。子供が難しくキックボードと走る事でスピードで表現した。主人公の北澤悠次が街中で勘違いしたり、絡まれたり、幸せのカップルだったり、、。各スタッフが皆頑張って演じてくれた。タクシーのシーンと最初のナレーションには各会場名を入れた。カラオケも少し前の所謂「カラオケbox」を作った。38本目がどうなるかは最初からの思いでもあった。初日は大変だった。

登場シーンの前に全体の意味付けをしたナレーションがあって主人公の登場。女性との話し合うシーン。最初は実演という話もあったが抽象的なシルエットに決まった。声優を考えた時に「日高のり子」さんに決定。快諾して頂き、通常公演も追加公演も観に来て頂いた。ストーリーは悠仁が作り実際に話ながら収録した。それをサンプラーに取り込みライブは悠仁のセリフと間を合わせた。毎回毎回新しい何かが生まれたショウだった。

全体の流れが出来てゲネをしてみて、やはりセットチェンジの時間が長いと感じたが当初10分という目安だったのであえて初日をやってみた。でも、やはり長過ぎて、その夜にスタッフ打ち合わせをして如何に時間を短縮するかが議題になった。暗転の中での作業をやって良いのか待つのか?アンコール待ちの感覚を変えてみる事にした。先ず「ゆず」とSTAR DOG'Sがいなくなって暗くなった段階で転換開始。幕様のトラスの上下には1分掛った。舞台上のセット以外の2階部分のセットを先行して開始した。幕を付けて上げたところで舞台上のセットを開始。メンバーが位置に着いて終了。毎回、時間との戦いだった。場内アナウスも「第2幕」と幕にこだわった事と時間がかかるのを事前に伝えたかったから。

内容的には回を重ねる毎に各パートが良くなって行った。会場の年代別の方々を写す映像班のセンスには毎回脱帽でした。因みにカラオケの判定の鐘は実はバンマスがやってた。リハーサルでたまたまやったのが大受け。彼のセンスには毎回驚く。

4月になり追加公演の話が出始めた。驚いたのは札幌公演の話。1日目は通常公演、2日目を追加公演。スケジュール的には考える時間はあったが実際のリハーサルも構想を話し合う時間も少なかった。舞台は花道を作る。演目としては曲の入れ替えと内容の充実。そして「もうすぐ30才」の新たなる展開が決まった。脚本も考えられバーの件が決まった。主人公北澤悠次の数ヶ月後の生き様。岩ちゃんのコンビニ店員からタクシー運転手への変身。通行人も別の流れを考えた。でも問題はバーのバーテンダーと謎の女性を誰が演じるかだった。本物俳優をツアーに同行するのは難しい。ツアースタッフを探した。バーテンダーには電源の鶴見さんを。女性は悠仁の願いでドライバーのユウコリンこと小松原さんに決定。声優は鶴ちゃん手配でお願いした。横浜に来た声優の女性の方が声とは想像違いの女性で驚いた。

バーでは悠仁の動作と視線をカメラの氏家善明氏が向き等を綿密に打ち合わせをした。また当初バーの件だけだったのを運転手も「時間軸」で捉えてみた。岩ちゃんの芸達者振り見事。バーでの恋の駆け引きを遠く舞台で休憩中の運転手が同じ時刻で何やらしてるって感じ。良い味あったな〜。でも一番難しかったのは「落ち」だった。最終日の南海キャンディーズは面白かった。「落ち」も見事に見せてくれた。素晴らしい〜。因みに登場シーンのシルエット役は通常公演のシルエットはモデルだけど追加公演のシルエットは悠仁の女装だった。札幌公演では追加公演のゲネをしてから通常公演を行い、2日目は追加公演の初日を行なった。舞台スタッフは日々遅くまで舞台設営で頑張ってくれた。その後すぐの長野公演が又もや通常公演だった。この長野をどれだけ大事に出来るかも課題だと思った。「ゆず」も各スタッフも期待に見事に応えるように素晴らしいライブになったと思う。

思うままにずらずら書いてしまった。なかなか38公演の心身疲労は抜けず今に至ってる。「ゆず」の二人に先ずお疲れ様。最終日「夏色」で踊りに出たけど1曲でしっかり息が上がってしまった。お見逸れしました。ゆっくり休んでまた頑張りましょう。そしてそれを支えてくれたSTAR DOG'Sのメンバーと各スタッフと全国の関係者の皆様お疲れ様とありがとう。それから全国でライブ会場に足を運んでくれた観客の皆さん本当に心からありがとうございました。満足行くライブだったでしょうか?毎回毎回大きなハードルになるけど、多くの観客がまた行きたいと思ってくれるそんなライブをこれからも目指して「ゆず」とスタッフと共に創くって行きたいです。もっともっと良いライブと言われる事を目指して精進しようと思います。

最後に青森のリハーサルの時に僕と僕の母親に捧げてくれた「白鳥」忘れる事の出来ない心に滲みた瞬間だった。ありがとう。

                                     2006年6月6日午後6時。目黒の事務所にて