FODOPOLIO
「描・写」:松井宏方/写真展 Photo after oil


松井宏方の「フォドポリオ」
陰里鐵郎(美術評論家/横浜美術館長)
2000年の春のころであったろうか、久しぶりに現れた松井宏方は一本の筒を小脇に抱えていた。中から取りだしたものは建築の図面ではなく、二枚の絵画風作品であった。「これで展覧会ができるか」、これぞ彼のいう「フォドポリオ」の作品であった。オイル・アフター・フォトならぬフォトアフター・オイルという訳である。「描・写」の作品。松井ならではの発想と創作の、それぞれの過程についての松井的江戸弁の解説に私は開き惚れた。  建築家として長くイタリアで活躍、帰国後は建築設計の教授として大学で教鞭をとってきた彼は、眼と脳と手先を駆使したイメージ表現を学生に強いたという。そして、絵画(油彩画)の観賞体験、それが繊細であることにも驚かされたが、そうした経験の集積の上に彼の新しい思考と実験があって、この「フォトアフター・オイル」の作品は生み出されている。
 畏友のこの果敢な挑戦に乾杯。
集中・拡散・停滞/120×80cm,2000年
カルド・デクマヌス
120×80cm,1995年,南日本美術展建築部門出品(1995年)
ボロミーニの円柱
/120×80cm,2000年(R.Sinisgalliのデザインによる)

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