愛という憎悪、イェー

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thee michelle gun elephantの「スモーキン・ビリー」という曲をご存知だろうか。いやもうすんげーカッコいいので是非聴いてもらいたい。やっぱロックは男根である。そそり勃ったチンポコである。バタフライナイフ持った不良少年である。女にロックンロールができるか。理解できるか。体現できるか。その証拠に、女性で大成したロックンローラーがかつていたか。ジャニス・ジョプリンか。奥井香か。ノッコかSHOW-YAかアン・ルイスか。ブルースなら女にもできる。だがロックのロールたるものは、やっぱりチンポコがないとできんのだよ。クリトリスじゃ足りんのだよ。シーナ? 顔は男じゃん。


友達ん家でダラダラとぐろを巻いていた時。

「ミッシェル・ガン・エレファントってバンドがあってさあ、これがすんげーカッコいいんだよ。今出てる『スモーキン・ビリー』って曲があんだけどさ、そん中で『愛と、言う、ぞォ、イェ〜〜〜!!』っていう歌詞があんだよ。いやすっげえ言葉だよな。だって『愛と、言う、ぞ』だぜ? んで『イェ〜〜〜!!』だぜ? そんなの出てこねえよフツー。メチャクチャかっこいいよ。コイツらマジですげえよ」

彼はこうして力説するのだが、なぜかその時、俺はあんまり興が乗らなかったのだ。だからホビージャパンかなんかをペラペラめくりながら、「ふーんそーなんだー」と軽く受け流してしまった。しかし偶然なのか運命か、その数日後、俺は深夜TVで彼らのプロモビデオと遭遇することになる。


「愛と、言う、ぞォ、イェ〜〜〜!!」 


その瞬間、俺の後頭部にズギャ〜〜〜ンとオーバードライブが波紋疾走し、手足の先までビリビリと震えが来た。「すげえよこれマジでカッコいいよスゲエ歌詞だよ、だって『愛と、言う、ぞォ』だゼ? んで『イェ〜〜〜!!』だゼ? そんなの出てこねえよフツー。メチャクチャかっこいいよ。コイツらマジですげえよ」目が覚めた俺。感動する俺。興奮してしゃべりまくる俺。その前で彼女は「ふーんそーなんだー」と言いながら、ぴあをペラペラめくるのであった。

これを読んだだけじゃ伝わらないかもしれない。いや本来そういうものなのだ。曲と演奏に乗って、初めて力を持つ言葉なのだ。歌詞ってそういうものなのだ。だから是非、機会があったら聴いて欲しい。ものすごく力強くて、カッコいい言葉だ。骨太でゴリゴリした、ロックの歌詞だ。そこいらの「信じていれば大丈夫」的な癒しソングの卑しさなんて微塵もない。ロックかくあるべし。男根かくあるべし。乾いたチンポが天を貫く。冷たい夜を精子が疾走る。『愛と、言う、ぞォ、イェ〜〜〜!!』


さっそく買いに行った。邦楽のCDって、いつまで\3000を堅持するつもりなんだろう。輸入版なんて\1800くらいが常識だぜ。そりゃ売れなくなるって。よっぽど欲しいもんじゃなきゃ買わないって。ポケットビスケッツの成功をちったあ見習うべきだと思うね俺は。しかしコイツは別。\3000プラス消費税だってちっとも痛くない。本やビデオもそうだけど、よいCDを買うことは人生にとって大きな喜びだ。スタンプカードも喜びだ。「一応押さえとく」なんて買い方するくらいなら、何にも買わない方がいいのだ。

「ありがとうございました〜」

へっへっへ買ってきやしたぜ。ズルズルベロリとビニールをはがす。ほとんど拝むような気持ちでデッキにぶち込む。ああ読み込む時間がわずわらしい。「針が降りる瞬間の、胸の鼓動焼きつけろ」b〜yプリンセスプリンセスってやつだなゲハハ。フイーーン。ブブブブブ。拝聴。感動。実にいい。こういうのに飢えてたんだな久しく。やっぱロックは男根だよ。そそり勃ったチンポコなんだよ。『愛と、言う、ぞォ、イェ〜〜〜!!』

うっとりした気持ちで歌詞カードを眺める。また作りがいかにもな感じでいいねえ。なんでこうどいつもこいつも頬がコケてるんだ? やっぱロッカーは太っちゃダメだよなあ。ブクブク太った体で"I wanna be anarchy"とか言われてもなあ。いやアレはアレで立派なアナーキーだからいいと思うんだけどね。

件の「スモーキン・ビリー」の歌詞を読む。うんうん「ヤニで固めた」かあ。いいねいいねえ。不良少年にタバコは欠かせないもんねえ。機嫌をよくして読み進めると、歌詞カードにはこう書いてあった。


「愛という憎悪 yeah!」 


………だっせえ、俺ら。


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