平凡な日常・悩ましい年頃

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鬱病になりました。といっても大したことはなくって、仕事中に体が重たくなって動かせなくなったり、頭がジンジン痛くてやっぱり重くて吐きそうで、気分が悪くなったり、まあーそんなもんでしたが。正確には鬱病じゃないと思うんですが、たぶんああいう感じなんだろうな、というのを体験させてもらいました。

原因は仕事です。今の会社に入って丸3年、今年で4年目。そりゃー最初の頃は希望に燃えてたしヤル気もあったし、エライさんに一言でも誉められりゃー舞い上がって、一層バリバリ仕事の励んだものでしたが(ココ参照)。でもね、だんだんわかってきてね、いろんな大人の仕組みがね。要するにこれじゃ、正社員辞めてフリーになった方が、労働時間1/3で収入2倍じゃん、てことに気づいちゃって。確かに将来の安定性はないけど、入ったときからどうせこの会社で一生勤め上げる気は元々なかったし。

で、いつ辞めようかなあとかぼんやり考えつつ、同じような考え持ってる同僚と飲んだり、メールやりとりしてたんです。こんなところで書いてもあんまり面白い話じゃないんですけどね、要はワンマン社長の独裁体制なんですよ。ヒゲの社長は学生運動あがりのくせして中小企業の社長やってるという資本主義の犬なんですけどね。

そんな話してたら、ますます会社のことが嫌になっちゃって、もうーそうなると普段の当ったり前の仕事すらヤル気なくしちゃって、でもそんな手抜き仕事している自分も嫌いだったりして、ヘコむ一方で。そのうち、「2ちゃんねる」の隅っこでウチの会社の悪口が書かれはじめたんですよ。

最初は、2年前に社長と大ゲンカして会社辞めたIさんらしき、ていうかIさん以外これ書く人いないだろ、てな内容で。やっぱIさんてギャグ面白いよなー、頭イイ人だったよなー、とか思ってました。むしろ逆に、「あんだけ頭キレてたIさんが、こんなバレバレの内容書くか?」って疑っちゃうくらいのもので。

でもまあ、今はライバル企業に勤めて同じ客取り合ってる同士のIさんですから、いろいろあったり考えたりしてのことなのでしょう。ところがそのうち、明らかにIさんじゃない別の人間が書き始めたのですよ。それがもーう、元社員どころかどう考えても現社員。でなきゃ絶対書けないような内容が、ボロボロ出てくるのですよ。

曰く、「社長の独裁体制だ」「イエスマンでなければ出世しない」「どんなに正しい意見を言っても、社長に逆らえばアウト」「社長はセクハラ大王」「しかもロリコン」「優秀な社員はここ1〜2年でほとんど辞めてしまい、いま残っているのはイエスマンか、歳食い過ぎて他に行き場がなく、もう一生この会社で生きていくしかない廃棄物か、まだよくわかってない新入社員のド素人だけだ」とかね。

肝が冷えましたよ。こんなもん、イエスマンがさっそくご注進してバレちゃったが最後、社内犯人探し大会というか魔女裁判というか踏み絵が始まるに決まってるじゃないですか。細川踏み絵。とか言ってる場合じゃないですよ。

まあー社長はコンぴータとか疎くって、なにせ世の中にはデータベースソフトというヒジョーに便利なものがあって、顧客管理とかその辺はぜんぶそれでやってしまえばものすごーく楽なんですけど、「私は、そんなもの覚えるつもりはありませんから」っていうだけで、いちいち社員がワープロソフトの手打ちで表とか作成しててほんとバカみたいっすよ俺ら、そんなムダな時間つかってるヒマあるんならもっと実のある仕事したいんですけど。

だいたいなー、データベースソフト使えば並べ替えとか絞り込みとかで必要な顧客の一覧表なんか1秒もかからず出来ちゃうのに、俺らがいったんそういうデータベースソフトで表つくって、それ見ながらバカみたいにワープロソフトで手打ちして表つくって、社長に見せてるってのはどうよ? いってみりゃ、最新のCGで作った映像をプリントアウトして、トレーシングペーパーで手描きで転写してるようなもんだよ。バカみたいだよ。いやバカだよ。俺らが。なんで辞めねーんだこんな会社。狂ってるよ。でもとにかく、社長一人が「俺は使わん」って言えば、それでも全社的にそういうことになっちゃうんだよなあ。やっぱワンマン社長なんだよなあ。

そうこうしてるうちに、ネットだのなんだのに疎いワンマン社長さまも、イエスマンのご注進によって事態を知ることとなりまして。まあー社長はキレましてね。2ちゃんの管理者の方にクレームつけたんですわ。どっかで聞きかじった「何とか法」とかいうのをタテに、書き込んだヤツを特定しろと。ところがあーた、向こうさんにあっさり肩すかしくらいまして、宙ぶらりん状態(あんまりアレだとアレなんで、詳しい事情はカット)。

現在そのスレッドはどうなっているかというと、完全にそのまま。野放し。しばらくはうちの会社の悪口でいろんな人が盛り上がってたみたいだけど、だんだん飽きてくるしね。そうそう新しい話題とかってないし。いつまでもいつまでも「独裁」「セクハラ」「イエスマンばかり」って、それだけじゃ何ヶ月も続かないっすよ。一方、毎日々々せっせと書き続けてらっしゃる方もおりまして、どうやら元は一人というか、しつこいコピペ野郎がひとりで粘着してるんだな、てえのがだんだんわかってきちゃったので、今はもう沈静化してます。やれやれ。

でさー、一方でオイラの方じゃ子供できちゃって。いついつ頃、お子さんが生まれますよって言われたってああそうですかとしかいえませんわね。で、嫁も働いてるから育休だの保育園だのの問題が持ち上がってきて、こーれがまた頭痛い。実際、俺が会社辞めてフリーになったら、多少収入は減っても子供の面倒はみれるんだよな。で、ますます退社&フリー化計画盛り上がったり。

もう悩みまくりのお年頃ですよ。1日おきに「よしゃ、やっぱ会社辞めよう!」「いや、正社員続けた方がいいよ!」がくるくる入れ替わる感じですから。頭も痺れますって。

全然まとめになってないんだけど、30プラスマイナス3歳くらいって、そういう年頃なんじゃないかなあ、と思ったんです。というのもここんとこ、古い友人と電話で話したら、やっぱそういうこと考えてるみたいなんだよね。


ケース1:高校時代からの友人(今年32歳)

やっぱり会社辞めて、フリーになろうとか思ってる。給料低すぎるから。死ぬほど働いてるのに、ぜんぜん見合ってない。しかし今担当している仕事には愛着があり、離れたくない気もある。わりと悩ましい話だし、状況は全然違うんだけど今の俺に似てないこともない(やってる仕事に比べて収入が少ない、フリーを考えてる、などの点で)。

ケース2:大学時代の友人(今年30歳)

大学卒業後、大手コンビニエンス会社に就職したけど(俺らの仲間うちでは一番の大企業に勤めた)、毎週北海道と東京を往復する日々。仕事はキツいけど大手で給料はいいし(今の俺よりはるかに良い。良すぎ。聞いてて少しキレた)、このままクビになることもなく老後を迎えられるんだろうけど、やりがいみたいのがないし自分が生きてる実感もない。で、今は会社辞めて税理士試験の勉強中。一人で生きていける力が欲しい。1時間程度の電話だったが、その間に4〜5回は「寄らば大樹の陰だと思ってたけどさぁ〜」を連発したのが印象に残った。

ケース3:今の会社の同僚AとB(今年29歳と28歳)

理系でかなり高学歴だった彼らは、今の会社に見切りをつけ、辞めてしまった。今年医学部を受験するつもり。予備校の模試を受けたら偏差値80くらいだったというので、東大理科III類とかを目指さない限り(いやそれでも確率は十分高いのだろうが)、おそらく、ほぼ間違いなく国公立の医学部に合格するだろう。しかし彼らが医学部を卒業し、いっぱしの医者として収入が得られるようになるころには、35〜6歳。ま、そういう意味では今がギリギリの決断の時期だったとも言えるが。35歳まで学生で無収入。親が金持ちなのかもしれんが、それってどうなのよというのが俺の正直な感想。


30プラスマイナス3歳くらいって、ちょうど学校出て、何年か社会で働くようになって、世の中の仕組みがなんとなくわかってきて、自分の能力とか限界とか向き不向きみたいのもだんだん見えてきて、さあ、じゃあ、そっからどうするっていう年頃なんだよね。学校出たての時なんて、なーんにもわかっちゃいないスカタンだから、そりゃ面接とかで「御社のことをうんたらかんたら」とか「わたくしはこの会社でなんたら」とか「自己実現がどうたら」とか便秘のウンコみたいなこと言ってるんだけど、あれは何かの飼い主に教えられた通りに言わされてるだけだから、実際俺も言ってたしね。

で、何年か働いてちょうど30プラスマイナス3歳、人によってスタート違うし個人差もあるけど、だいたいそれくらいの時期に「第二のスタート」つうか「本物のスタート」が来るんだよな。実はそれまでのは準備運動でしたって。あるいは予選タイム計ってただけでしたって。だから失敗しても実は大丈夫だったんでしたって。んーでじゃあこっからが本番ですよ〜よろしくお願いします5秒前、3、2……キュー! って言われて心臓もキューだし金玉もキューってなっちゃってるのが俺。俺ら。そんなジェネレーション。

高校生の頃、30歳なんてもうすげーおっさんというかオヤジだと思ってたよ。酸いも甘いも噛み締めて、花も嵐も乗り越えて、もうこっちが逆立ちしたって絶対かなわないくらいの、ものすごいスンゲー大人の大人だと思ってたけど、ぜんぜんそんなことないんだな。俺や俺の周りだけが際だってダメ人間なんじゃなくて、やっぱこの年代はそういうことを考えるものなんだと思う。てえことはだ、きっと35になっても40になっても50、60になっても、なんかそういうことってあるんだろう。「なんかさー、60なんてスゲーおじいさんだと思ってたけど、いざ自分がなってみると全然そんなことねーよなー。これからの人生どうすべえかって悩みまくりの毎日だよ。俺らの周り、やっぱみんなそうだし、そういう世代に来ちゃったってことなんだろうなー」

……そんなこと言う60歳、ちょっと素敵かも。


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