世界初の「電波系」は誰だ。

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2〜3年前から少々気になっている疑問がある。それは「世界(あるいは日本)で初めて電波を受信したのは誰か」ということだ。電波や受信という概念はかつて「私って他の人とはちょっと違うのよ」系の方々に好んで愛好されたギャグではあるが、近年根本敬とか村崎百郎とかその辺の人々によってすっかりメジャーなものとなり、今じゃ飲み屋で女の子の言うことに全て「そーそーそーだよねーわかるわかる」という返事しかしない口が半開きでスパゲッティーやハンバーグが大好きな日焼けのアンちゃんまで軽いジャブに使うくらいになってしまった。

ま、電波なんてものは平たく言えば幻聴であり、精神分裂病その他の典型的な症状に過ぎない。もちろん分裂病以外でも幻聴はおこるが、100人に1人と言われる分裂病が最もメジャーな要因に挙げられるだろう。大昔から幻聴そのものは存在していたわけで、ただ当時は「電波」の代わりに「神の声」とか「悪魔の囁き」とか呼ばれていたに過ぎない。中世ヨーロッパの魔女とか、日本の狐憑きとか。

ただその幻聴を「電波」として認識・表現した最初の人は誰なのか。それはいつ頃のことなのか、とても知りたい。日本に限って言えば、それはおそらく第2次大戦後、昭和30年代の高度成長期あたりではないかと勝手に想像している。

なぜそんなものが知りたいかというと、私が考えるにそれがとっても近代的なことと思えるからだ。変な話だが「近代とは何か」というのは実は私の個人的テーマの一つであり、他にも「ある晴れた日曜の午後、広末と手をつないで公園を散歩したい」とか「ビグロ(MA-05)に生まれ変わってサラミスやマゼランを沈めまくりたい」とかいろいろあるのだがとにかくそういった訳でとても気になっているのだ。精神科の学会誌とか過去の記録とかを調べればわかるのだろうが、思ってるだけで気力もなく、そのうちそのうちの機会をただ待ってるだけなのだが。

耳ではないどこからか、何かの声が聞こえてくる。その人がそれを神でも悪魔でも天使でも狐でもなく「電波」だと思ったとき、それは産業革命以来の近代的な科学文明がそれこそ「末端」まで浸透した、記念すべき瞬間ではなかったのだろうか。あるいは普通教育とかエレクトロニクスとかそういった感じのものが完全に普及しきったことを証左する、輝かしい瞬間ではなかったろうか。

同様の理由で「宇宙からのメッセージ」や「霊界からのテレパシー」を初めて受け取った人も、それぞれのネクストステージ、あるいは発展・分化・退行のプロセスを知る上で重要な手がかりになると思われる。ま「宇宙の意志」は映画「2001年」以降に間違いないと思うけどね。

さて1998年5月現在、「誰だ!俺の頭ん中に電子メール送ってくる奴は!」という人を、私は寡聞にして知らない。そろそろ出てきてもいいかもしれないし、もういるかもしれない。そしてそれは、パソコンやインターネットとかいうものが本格的に浸透しはじめた一つの記念碑になると思うのだ。「頭の中のポストペットが1秒に20件ほどメールを持ってくるのでうるさくてしょうがない」なんて人は楽しいながらも大変そうだが、それはそれで一つの地平を切り開いたと言えなくもないこともないか。ないですね。


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