祝・G20発売!!その2

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前回アップした文章を読み返してみて、さすがに我ながらすさんだ気持ちになってしまった。何もそこまで言わんでもいいだろうに。これじゃ営業妨害だわ。しかしまあ、乗りかかった船なので俺なりの結論が出るまではもうちょっと頑張ってみたい。俺はG20に対して、なぜそんなにも腹が立ったのか。自分でも興味が湧くので、少しばかり突き詰めて考えてみたい。

とりあえずG20、一通り読んだところでの感想は「ああ、これは俺みたいなガンダムファンを対象にした雑誌じゃないんだな」というところだ。それでは「俺のようなガンダムファン」というのは果たしてどういう人間か。

それは例えば、20年間ずっとガンダムを追っかけてきている。今でも毎日ガンダムについて考えない日は一日だってない。本屋へ行くと、アニメ誌と模型誌のコーナーを必ずチェックする。何かガンダムに関する本が出てやしないかと。新聞や雑誌を見ても、テレビを眺めていても、「ガンダム」という単語には敏感に反応する。例えそれがセックスの最中でも(注:セックスしてるときぐらい、テレビは消しましょう)。夜、ガンダムの夢を見る。起きてからまた、ガンダムについて考える。決して飽きない。とにかくガンダムが好き。止められない。ガンダムを愛している。

こういう人間から見ると、G20はひどくつまらない。例えば先日行われた「ガンダムビックバン宣言」というイベントのリポート。一応ガンダム専門誌なのだから扱わない訳にはいかなかったのだろうが、俺なんかはもう複数のアニメ誌や模型誌でその内容をほとんど知ってしまっている。内容はおろか、これが今後のガンダムシーンにおいてどのような意味を持つのか、どう発展していくのか、そういった考察も読んでしまっている。新しい切り口がない訳ではないが、飛ばしてしまう人もいるのではないか。

あるいはガンダムに関する出版物の紹介。ま、これも必要と言えば必要なのだろう。だが前述の通り、このG20はまず書店で入手すること自体かなり困難な雑誌であった。あらかじめこの雑誌がでることを知っていて、なおかつ5〜6軒の本屋巡りも厭わないほどの購買意欲のある客でなければ買えない雑誌だったのだ。現にネット上では、まだ入手できずに困っているという声をしばしば見かける。そういうレアな本が、普通の本屋でも売っているようなガンダム本を紹介してどうしようというのだろう。話が逆のようで、なんだか片腹痛い。

この辺が不思議なのだ。ガンダム専門誌と銘打っているのだから、当然購読者はコアなガンダムファンであろうことを期待していると思って当然だ。ところが自他ともに認めるガンダムファンである俺にしてみると、この雑誌はひどく不満が残るシロモノなのである。おかしい。何か違う。そこでわくのは「もしかしてこの雑誌、ガンダムファンに向けて作られたんじゃないんじゃないだろうか?」という疑問である。それじゃあどういう人が向いてるか、というとおそらくこんな人じゃないか、という気がしてくる。

例えばGショックとかを集めている。「レア物」というだけで、ゲットしたくなる。流行っているらしいものは「一応押さえておく」。「Boon!」とかを買っている。自分の周囲のもろもろが売れ筋ランキングのトップ5で占められているクセに、「他人と一緒はイヤ」などと寝言を言う。そういうわかりやすい、典型的かつ羊のように優秀な「消費者様」である。ガンダムは子供の頃みてた気がするが、いい歳してアニメばっか見ているとおたくとか言われて女にモテないので止めた。もう卒業した。たぶんこういう人ではないだろうか。

ガンダムが流行ってんのか?というのははなはだ疑問なのだが、これがどうやら流行っているらしい。深夜(23:00〜25:00台くらい)の、どーでもいい量産型のおねーちゃんをズラズラ並べたいい加減な情報番組とかでも、ボーッと見てたら「ガンダムが今ブーム」などとクソのようなことを言っていた。

普段ガンダムのガの字もでないような雑誌でも、最近は急に思い出したかのように小特集を組んだりしてる(例:週刊プレイボーイ)。どの特集も「20年も続いた人気の秘密とは?」みたいなウスい内容で、根っからのガンダムファンにはどうでもいい内容だが。結局のところ、世の中でガンダムそのものが流行っている訳では決してなくて、メディアの人達の間で「ガンダムが流行っている」とアナウンスすること自体が流行っているだけなのだ。この違い、わかっていただけるだろうか。

おそらくG20、その流れを汲む雑誌なのだろう。だから「なんかー、今ガンダムが流行ってるらしいしー、売れてるDJの人とかもー、ガンダムのTシャツとか着てるしー、だから一応チェックしとこうかな、みたいな」とか言ってる口が半開きのクソガキにはおあつらえ向き、というかそういう層を狙って出た雑誌なんではないか。作りも「STUDIO VOICE」みたいだし、文体もネタもなんとなく「VOW!」っぽいし。そういう初心者向けだから「そもそもガンダムって?」というところから話を進めなければならないし、したがってコアなファンほど退屈になる。

ただだからといって「これからガンダムについてもっとよく知りたい」という人に応えてくれるかというと必ずしもそうではない。奥深い「ガンダムワールド」の入門書という役割は決して果たせていない。「とりあえず押さえた」だけで、深く追求していこうという姿勢はまるで見えない。そういう意味でもこの雑誌は「ウスい」。

その手のウスい記事には「懐かしいなあ」とか「20年も続いてるんだねえ」みたいな表現が必ずといっていいほど出て来るのだが、そこでは20年間を支えた存在への視点がまったく欠けている。そう、ガンダムはただなんとなくだらだらと20年続いてきた訳じゃない。誰かが20年間、支えてきたのだ。それはもちろん、ガンダムおたくと呼ばれる人々である。口幅ったいが、俺もその一人のつもりだ。

20年続いてきたのは、ガンダム作品を出し続けてきた製作会社の努力でもあるが、一方でその製品を買い、本を買い、ビデオを借り、映画の切符を買い、TVのチャンネルを合わせてきたガンダムファンのおかげでもある。この存在がなければ、企業だって新製品を出すことはできないのだ。繰り返し言う。ただなんとなく続いてきたわけじゃない。誰かが身銭を切って、続けさせてきたのだ。

ガンダムを心から愛する人たちが、自らのサイフを痛めながらも支えてきた結果が20年という時間なのである。悪いけど「子供のころは見てたなあ」なんて人に「へーまだやってんだあ」なんて安易に言って欲しくない。ガンダムなめんな。ガンダムおたくをなめるな。である。

昨今の「ガンダムブーム」とやらは、ヒップホップやサブカル的な文脈での流行なのだろう。言わば「スポーン」みたいなアメコミが流行ったりするのと同じ流れで、ファッションとしてのアイテムである。街で言えば吉祥寺とか、下北沢とか。そういう「私は他人とはちょっと違うのよ」をアピールしたい系の人々が都合のいい道具としてガンダムを「フィーチャー」してきただけなのだろう。

だから本当にガンダムが好きなわけではもちろんない。今この時点において、ガンダムの周辺にまとわりついている「ちょっと流行ってる」ぽい雰囲気のみに利用価値を見出しているに過ぎない。したがって、そういう流行はすぐに廃れる。そしてまた、次から次へと新しいものを見つけては引っ張り出し、使い捨てていくだけである。「こないだまではコレ、今はコレ、今度はコレ」というように。

一方、20年間ガンダムを追いかけてきた連中はどうか?彼らはいわゆるガンダムおたくであり、いい歳をしてアニメを見、プラモデルを作り、デヘデヘ言ってきた輩である。セイラさんでオナニーをしたり、ゲルググを操縦することを夢想してきたバカ共である。彼らはクラスで気持ち悪がられ、女の子にはもちろんモテず、母親が買ってきたセーターとジーパンに身を固めてアニメショップを潤してきた。

そこまで極端な例はないにしても、やっぱりどっかでデメリットを背負ってきたのは間違いない。初対面の人に「趣味は映画鑑賞です」とゴマ化したり、彼女が遊びに来るときは有り余るガンプラを押し入れに隠したりしてきた。カムアウトしてしまった人間には笑い話だが「いい歳してアニメが好きなんてバレたらどうしよう」「このまま一生、童貞だったらどうしよう」とかビクビクしてきたのだ、みんな。

それでもガンダムがやめられなかった。だってガンダム好きだから。ガンダムを愛しているから。20周年の歴史の裏には、こういうアニオタの青春の死骸が累々と横たわっているのだ。それを忘れちゃいかんと思う。ガンダムと名のついた本はとりあえず買う。だって次にいつ、ガンダム本が出るかどうかわかんないんだもの。今買っておかないと、次にいつ買えるかどうかわからないんだもの。

そうして支えてきたおかげで、20年目という栄光を迎えることができた。今年は例年になく、書籍を始めガンダム関連の動きがにぎやかな年である。正直言ってうれしい。その上なんと、ガンダム専門の雑誌が出るというではないか。そりゃすげえ。ああガンダムやっててよかった。20年追っかけてきた甲斐があった。うれっしー。

しかしその中で出てきた雑誌は「ああガンダムね、あったあった。懐かしー」と言う人達向けの内容であった。自分たちにはちっとも面白くない。みんなにバカにされながらもガンダムを支えてきたのは自分たちなのに、出てきたガンダム専門誌は、かつて自分たちをバカにしたような連中の方を向いているのだ。なんという報われない話だろう。俺の怒りは、そこからくる逆ギレではなかったか、と思う。

ブームというのはそういうものかも知れない。20年の間に、ガンダムの世界はあまりにも高度に深化されすぎ、一見さんには到底入り込めないような敷居の高いものになってしまった。そこについて行ける人はもうごく限られてしまっている。よくわからない人、マニア度の低い一般人を巻き込まない限り、大きなムーブメントなんて起こりっこない。でもそれで、自分たちが愛してきたガンダムの姿が変質していくとしたら、ブームなんていらない、というガンダムおたくを誰か責めることができるだろうか。

だんだん書いてるうちに自分でも訳がわかんなくなってきた。今読み返してみたが、話が何度もおんなじところをループしているようだ。いい加減オチをつけて止めたい。とりあえずG20という雑誌、アニオタでブサイク軍に所属する私にとっては、なんだかオシャレ軍の方を向いて作られているように感じたのだ。しかしG20なんてタイトルの雑誌が出せるのは、間違いなく我々ブサイク軍のおかげなんある。その辺のところ、もうちょっと報われたかったな、というところか。まあ単純に考えて、ガンダムおたくが喜ばないガンダム本出してもしょうがねえよ、ってそれだけでもいいんですけどね。

G20は隔月刊で、第2号の発売は10月31日だそうだ。ここまで悪口並べといて何だが、俺はもちろん次も買うつもりである。それは「もうちょっとマシになってるかも知れない」という期待もあるが、そんなことは抜きにして、もう買うことを決めているのだ。それは何故かというと、ガンダムに関する商品が売れてくれないと、ガンダムは続かないからだ。

俺はガンダムを愛している。愛とは無償のもので、決して見返りを求めたりはしないものだ。だから俺は今日も、ガンダムの商品を買い続ける。それがどんなにヒドいものでも、旧来のガンダムファンをコケにするようなものであっても。なぜなら俺は、ガンダムを愛しているからだ。

あと蛇足ながらG20、「ジー・ツー・オー」と読むらしい。もしかして万が一ひょっとしてそんなことはまさか到底有り得ないとは思うんですけど、反町クンがドラマやってるマガジンのあの漫画とかけてるんでしょうか。いやまさかね。こんなにセンスのいい、オッシャレーな雑誌作ってる人がそんなオヤジギャグみたいなダジャレ言うわけないよね。そうだよね。


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