加工された情報を考える
最近，我が妻が入院していることもあって，俺様も付き添って病院で過ごす時間が 多い．その結果，テレビをよく見るようになった．そんな中，殺人犯が日本テレビに 自らの主張を展開する場面をみた． 報道された事実とは違うので，自らの口で主張したいとの申込みがあったようだ． ここで俺様は，マスコミの新しい報道傾向を見た思いがした．犯罪容疑で手配された 人間が，マスコミの前に現れる機会が生まれていることだ． 一度，逮捕されてしまうと，もはや容疑者には，実質的に言論の自由はなくなる． 公に自らの口から広く一般に主張を展開するチャンスを奪われてしまう．裁判とて， 実質的にマスコミにしか開かれていない． 日本では，裁判が行われる現場の映像が，一切公開されない不思議な現実がある． 裁判の模様は，取材する記者の独断と偏見に基づいた印象でしか伝えられないのだ． 伝える記者は，国民よりも判断力，洞察力共に上なのか？ 日本語のアクセントすら怪しい変な日本人記者の，間接的な情報だけに頼る裁判の 情報にどれだけの正確さが期待出来ようか？ 一般国民に公開することが何か特別の 弊害を生むのだろうか？ 恐らく，裁判の実態は，一般の常識から程遠く，そこで展開される審理の経過では とても事実を明らかに出来る場所からはほど遠い，まやかしと欺瞞に満ちた雰囲気が 支配的な世界なのだろう． マスコミが伝える裁判のニュースだけでは，裁判の現状を視聴者が自らの判断力で 個々別々に独自の見解を下せる材料とはならない．頭の軽い記者の伝える情報だけが 事実となっている．知る権利に奉仕される部分はない． 警察の取り調べから裁判まで，全てが何らかの形で加工されて既製品の情報として 流通する仕組みなのである．マスコミの現状は，国民に生の情報が伝えられる機能を 完璧にと失っている． 特に，マスコミでは加工されない情報を，未熟なものとして排斥する傾向がある． 一定の時間の中に意図的な情報を，凝縮した製品に仕上げてから送り出すシステムが 定着している． それ故に，例に挙げた指名手配された容疑者のインタビューにしても，それなりに 加工が施されて，時間内に報道を完遂されるように仕組んでいるのである．従って， 必ずしも生の情報とは言えない…． 例えば，先に同じ日本テレビで，国松長官を狙撃したとされる警察官の供述場面が 放映された．警察は，この放映に対して，日本テレビに抗議をしたとされるが，誠に バカバカしい行動である． 何故，あのビデオが放映されたことに不都合が生まれるのか？ 恐らく，警察側は あのビデオ放映で，彼が犯人だと印象付けられることを恐れるのかも知れぬ．だが， 俺様は，彼の拳銃の構え方に不自然さを感じた． 警察では，拳銃射撃に関して，あのような構え方が指導されるのかどうか知らぬ． 然し，俺様の印象では，あの両手撃ちの構えは素人のものである．僅かに銃を扱った 経験の片鱗が見られる程度である． 但し，射撃の腕が相応にあれば，どのような構えでも２０メートル程度の距離では 人に命中させることは，それ程難しいことではない．例えば，両手で構えることは， 決して射撃の精度を高めることにはならぬ． 俺様位の射撃の名人になれば？ 精度の高い拳銃射撃を行うとすれば，片手撃ちに 頼るのが自然なのである．ビデオに写っている警官が，右足に重心を傾けて，左足を 後ろに引いた姿勢を取った…． 「オイオイ…．何なんだよその構えは…，それにその持ち方は，両手で拳銃を構える 意味がまったくないゾ？」ビデオを見ながら，俺様は，そうつぶやいていた．勿論， それは俺様の独善的な常識で判断することである． 例えば，両手撃ちとは，正確な射撃を行う役には立たない．反動から拳銃を素早く 引き戻して，速射を以て連射するところにその意味がある．それ故に，左手の位置は 掌が右手を正面からしっかりガードさせる． 左指は右手の甲を掴んでいなければ，その意味はない．ところが，この警察官は， 単純に拳銃を持った右手に添えているだけの構えである．警察では，果して，こんな 両手撃ちなど果して指導しているのかどうか？ おまけに，右足に掛けて足の力の配分が右に強い７：３の割合と言った．これでは 基本的に，フワフワして狙いなど定まらんゾ．明らかに，この構えは警察以外からの 情報に基づいて確立された？ 俺様がそのビデオを見た印象を語れば，以上のようになる．視聴者の下す判断は， 千差万別である．これは，俺様と言う人間の独善的な見方に過ぎぬ．必要なことは， 容疑者とされる人間の言葉を直接見聞することである． その生の情報から，個々の人間が自らの判断を下すことが必要なのだ．報道が全て 事実だとは限らぬ真理があるが，加工された情報に慣らされて，自分で判断を下せぬ 人間が増えている． ロクな判断力もないコメンテーターと称される人間に，お仕着せの印象を語らせて それを以て，もはやそれ以上の判断の必要もない情報とする．マスコミが糾弾すれば その対象は，全てが悪となる…． 今や，マスコミは，真理を語る神にも等しい存在へと昇格している．深遠な真理に 触れる機会が全く存在しない世界で，浅薄な画一的論理で断定的なコメントを流し， それが神聖な報道であるとされてしまう…． やたらアクセントが怪しいアナウンサーが目立つ．『枯れ木』の乗りで『彼氏』と 発音する若者と同じレベルである．要するに，頭がミーハーなままに，使い慣れない 言葉をにわかに使う弊害が出ている． マスコミの情報には，様々な加工が施されている．見かけは連続している映像でも 僅かに飛んでいる箇所の連続で，無数の繋ぎ合わせの痕跡歴然たる情報が，あたかも その短い連続の中で起こったかのような錯覚を起こさせる…． 例えば，賛成の意見を言う通行人の場面を無数に繋ぎ合わせると，通行人の全てが 賛成しているような錯覚を与える．一人の賛成意見を得るまでに，どれだけの無駄な 映像がカットされているか？ それは決して伝えられない． 故に，一見，生の情報のように見えるものでも，既に加工がなされている可能性も ある．ただ，報道の中で，法律の建前とは別に，容疑者となった人間には，実質的に 人権は完璧に剥奪される．冤罪の温床にもなる． むしろ，加工された報道の弊害から，戦前以上に偏った報道がなされ，千差万別の 意見の存在を，見せ掛けの上で，一つに統一してしまう情報操作が巧妙に行われて， 国民は，それを無批判に受け入れている． 国家権力は，確実に，国民から考える能力を奪おうとしている．マスコミの論調に 迎合している自分がいたら，本当に自分がそう考えているのかどうか，改めて自らに 問い掛けてみる必要がある．** akuma **
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