ギャラリートップへ

ねこのいちにち  作者:miesod


某月某日 午前

「今日はなにしようかにゃ・・・?」

自宅の廊下をニューマンの少女が歩いている。
ハンターズでは割と有名・・・いや、名物な少女だ。
通称、みぃ。
本名を呼ぶ人は誰もいない。
家族すら呼ばない。
単に呼びにくいからだ。

ふと、ある部屋の前で足を止める。

「・・・シール、なにしてるのかにゃ?」

扉には『使用人室 第35号』と書いてある。
シールは彼女専属の使用人・・・要はメイドさんである。
メイドと言っても、人間ではなく、アンドロイドなのだが。
みぃの動向の監視のため、彼女もハンターズライセンスを持っていたりする。
本職がメイドなのにライフルを振りまわして戦う姿に、
密かに「冥土ロボシール」なるあだ名が付いているとか何とか・・・。

しかし、メイドが雇えるあたり、彼女の家はかなり裕福らしい。
もっとも、それでトラブルを起こすこともたまにあるのだが。
まぁ、その話はまた今度。

「暇だし、ちょっと覗いて見るかにゃ〜。」

ドアを開けて、中を覗いて見る。

「・・・あ。シール、ゲームしてるにゃ。」

見ると、彼女はテレビに向かって悪戦苦闘していた。

「し、しかもグレートキューブ版不思議惑星オンライン!?
 あたしも持ってないのに何でシールがやってるにゃ・・・!」

グレートキューブ・・・略称GCと呼ばれる新式のゲーム機である。
遊んでいるのは昔人気のあったRPGをリメイクしてオンラインRPGにした
「不思議惑星オンライン」というゲーム・・・通は英語にして略すらしい。PSO。
みぃはすかさずシールの側にかけより、声を掛けた。

「・・・シール、何してるにゃ?」
「!? ミ、ミィ様・・・!?」

慌てて振り向くシール。
キャラクターがボコボコにされていたが、どうでも良いらしい。

「イ、イエ、コレハ・・・ソウ、ミィ様ヘノ御土産デ・・・!」
「御土産・・・にゃ?」
「ソウデス!タダ、チョット興味ガ有ッタモノデ・・・」
「試しに、遊んでたにゃ?」
「ソ、ソノトオリデス!」

ふーん。と気のない返事をするみぃ。
顔にはいぢわるそうな笑みがうかんでいる。

「じゃあそれ、今すぐ貰っていっていいにゃね?」
「オ断リ致シマス。」

真顔で、神速の速さで却下した。

「・・・シール、どうしてかにゃ〜?」
「ソレハソウトミィ様、一緒ニ遊ビマセンカ?
 新シク4人マデ一緒ニ遊ベルヨウニナッタンデスヨ?」
「・・・やけに詳しいにゃね・・・。
 ひょっとして、やりこんでるにゃ?」
「サァミィ様、キャラクター作リマショウ!
 新シク使エルキャラクターモ増エマシタシ!」

・・・どうやら完璧に誤魔化す作戦に出たらしい。

「あ、そしたらあたし、このHUcasealあたりでも・・・」

そして、完璧に誤魔化されたらしい。
単純な奴である。


某月某日 日中

「みぃ姉さん〜。お昼だよ〜。」

しゅんすけが叫びながら廊下を歩いている。

「自室にも居なかったし、どこに居るんだ・・・?
 ・・・まぁ、大体想像つくけどさ。」

と言いつつシールの部屋の前にくる。

「まぁ、多分ここだろーなぁ。」

あー!敵に囲まれたにゃシール助けるにゃ〜!
ミィ様イツモ特攻スルノハ止メテクダサイト・・・!
何言うにゃあーもう死ぬにゃ〜!
アト少シオ待チ下サイモウ少シデ参リマス!

「うん。間違いなくここだな。」
一人で納得しつつドアを開ける。

「みぃ姉さん、御飯だよ〜。」
「・・・にゃ!?」

慌てて振り向くみぃ。
2人のキャラがボコボコにされていたが、もうどうでもいいらしい。

「・・・あ、もうそんな時間にゃ?
 今日の昼御飯、何にゃ?」
「え、えっと・・・・。」

魚料理。
昼間からそんなものを出す家もどうかと思うが、
それを彼女に伝えるのもためらいがある。

「・・・さ、ささささささ」
「さ?」
「さ、さか・・・さかな」
「お魚にゃ!?」

瞬間、目が煌いた。

「あ、あの、みぃ姉さん?」
「お魚にゃ〜♪お魚にゃ〜♪今日のお魚も全部あたしのものにゃ〜♪」
「俺の分も魚・・・・。」
「おっさかな〜♪おっさかな〜♪」
「魚・・・・。」
「にゃはははは〜♪」
「・・・・・・・てい。」

げし。

「うにゃ!?」

げしげしげしげしげしげしげしげし
げしげしげしげしげしげしげしげし。

「前頭葉に刺激を与えるかのごとく打つべし!
 打つべし打つべし打つべし打つべしぃぃぃ!」
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃ!?」

どっかで聞いたような台詞とともに首筋に連続手刀。
とりあえずみぃが昏倒するまで続けられた。

「・・・ふぅ♪」
「アノ、シュンスケ様・・・。」
「ん?何だ?シール。」
「・・・宜シンデスカ?」
「・・・・だってさ、今日を逃してみろ。
 4ヶ月連続で魚食えないんだぜ?
 たまには食ったって良いじゃないか。」
「・・・・・・。」

どうやらそれ以上何かを言う気はないらしい。
しゅんすけは部屋から出ていった。
シールもそれについて出ていった。
みぃはひとりほったらかされていった。


某月某日 日中 庭

「あー・・・くつろぐなぁ。」

しゅんすけは、ひとりでぼーっと庭をながめていた。
そよぐ風や暖かい日差しはひなたぼっこにちょうど良い。

「昼寝でもしようかなぁ・・・。」

空を眺めながら、ふとそんなことを考える。
しかし・・・。

「しゅーーーーんーーーーすーーーーけーーーー!!」

後ろから怒りの声が聞こえる。
何やら、未来から来た殺人アンドロイドのテーマが聞こえてきそうな勢いで
みぃが後ろに歩いてきていた。

「・・・あ、みぃ姉さん。どうしたの?そんなに怒って。」

などとのたまわってみる。

「・・・ふふふふふふ。あたしのお魚・・・・食べたにゃね・・・・。」
「だって、4ヶ月も食べてないんだぞ!たまにはいいだろ!?」
「却下にゃ。」

おまえ最悪。

「というわけで、覚悟するにゃしゅんすけぇぇぇぇぇぇぇ!!」

しゃきーん!とフォトンクローを構える。

「・・・俺に勝てると思ってるのか?」

しゅんすけも赤のセイバーを構える。

「あたりまえにゃぁぁぁぁ!!」

そして、戦いが始まる。

「あたしのお魚食べた罪は重いにゃぁ!」

がりがりっ!

「たまには食べたっていいだろーが!!」

ざくっ!

「知ったことじゃないにゃぁ!」

がりがりがりがりがりっ!

「!? っく!やったなみぃ姉さん!食らえラフォイエ!!」

ちゅどーん!

「・・・やったか?」
「なわけないにゃっ!!
 そんなので倒れるわけないにゃ!
 本物のラフォイエを食らうが良いにゃ・・・」

みぃの掌に魔力が集まる。
なんというか、見るからにヤバげ。

「ちょっとまてみぃ姉さん!それやばすぎ!?」
「食らうにゃラフォイエぇぇぇぇぇ!!」

ちゅどどどどどどどーーーーーーーん・・・・

「・・・・思い知ったかにゃ?」

庭にはみぃが立っている。
あたりは一面、黒焦げと化している。
こげた所の端のほうからシールが草刈り機で掃除をしていたりする。
その真ん中で、しゅんすけがぴくぴくしていた。

「・・・・ねぇ、さん。
 いくらなんでもコレはないだろぉぉぉぉぉぉぉ!!」

がばちょ。としゅんすけが立ちあがり・・・

「メギド。」
「ぐふぅっ!?」

即、地面に叩き伏せられた。


某月某日 某時刻 庭

「・・・・・・・・。」

地面で倒れていた人影が動き出す。

「・・・・み、みぃ姉さんめ・・・。」

しゅんすけがやっと立ち直ったらしい。

「よくもやりやがったなみぃ姉さ・・・・?」

周りにはみぃはいなかった。
良く見渡すと、あたりはすでに荒野と化している。
その荒野の端のほうからシールが芝生を植えなおしていたりする。

「・・・なぁ、シール。みぃ姉さん、どこ行ったか分かるか?」
「・・・ミィ様デシタラ、『街ニ遊ビニ行ッテクルニャ〜♪』
 ・・・ト言イナガラ出テイカレマシタガ・・・?」
「・・・ありがと、シール。
 そうか、街かぁ・・・・・
 ふっふっふっふっふっふっふ・・・・」

そう言って立ちあがったしゅんすけから、怒りのオーラが立ち上っていた。


某月某日 某時刻 パイオニア2繁華街

街は今日もたくさんの人でにぎわっている。
そんな中、しゅんすけが一人なにやらやっていた。

「・・・ふぅ。こんなとこかな・・・。」

見ると、籠に紐をつけたつっかえ棒を立て、
中に食べ物・・・アメのようだ・・・を入れている。
いわゆる、「小鳥とっつかまえトラップ」というやつである。

「あとは、これで待つだけ・・・っと。」

道行く人をながめながら、紐を持ってぼーっと突っ立っているしゅんすけ。
そんな彼に声をかける人がいた。

「・・・あれ?しゅんすけ、何やってんねん?」
「あ、しーな先輩。お久しぶりです。」

ハンターズの先輩であり、しゅんすけにとっては撫での先輩・・・
みぃとも仲の良い、ハニュエールのシーナだった。

「なぁ、これ何や?」
「みぃ姉さん捕獲用トラップです。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」

しばし沈黙。

「・・・・あのな、しゅんすけ・・・・。」
「なんですか?しーな先輩?」
「いくらなんでもこれはないやろ、これは・・・。
 大体、この中のもん、何や?」
「トリガーから貰った、マグロ味キャンディーですけど?」
「あいつ・・・それはともかく。
 そんなんにみぃが引っかかるわけないやろ・・・。」
「そうですかぁ?だってこれ、ただのマグロ味キャンディーじゃないですよ?」
「・・・期待してへんけど、一応聞くわ。何が違うんや?それ。」

としーな。
それに胸を張って

「なんと、づけまぐろ味なんですよ!!」

としゅんすけ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ふたたび沈黙。

「・・・いくらみぃが魚好きでも、
 ぜったいそれには引っかからんと思うわ・・・」
「そうですか?」

あ、あれは新型づけまぐろ味キャンディーにゃ!?
貰ったにゃぁぁぁぁ!!
がたん。ばたん。
にゃ!?何にゃ!?何が起こったにゃぁぁぁ!?

「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・引っかかりましたよ。しーな先輩。」
「・・・せ、せやな。引っかかったな・・・。
 ・・・みぃ、もーちょっと、学習ってもんをせな・・・。」

呆れかえるしーなをよそに、しゅんすけは作業にとりかかる。
すばやくみぃを籠ごと袋につめ・・・ゴミ袋のようだ・・・口を縛る。
袋に何か書いてある・・・『萌えるゴミ。ご自由にしてください。』

「ふぅ♪これでよし♪さーって・・・。」

アンシエントセイバーを構え、

「逝ってこぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!」

かっきーーーーーん!!

「うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」

「あー、良く飛んだなぁ。
 ・・・あれ?どうしたんですか?しーな先輩。」
「・・・いや、何でもあらへん・・・。
 ウチ、そろそろ行くわ・・・。」
「あ、暇なんですか?そしたら、これからお茶でもどうですか?」


某月某日 日没後 自宅遊戯室

かこーん!
「あー。もう少しでストライクかぁ・・・。」

ここは自宅の遊戯室。
しゅんすけの「家でボーリングやりたい。小遣いつかっていいから。」
の一言で作られたボーリング場である。
そこで、しゅんすけはボーリングをしていた。

「よぉし。次はストライク取ってやる・・・。」
と、一人意気込んでいるところに・・・。

ミィ様、オ帰リナサイマ・・・ド、ドウシタノデスカミィ様!?
あ、シール、しゅんすけどこにゃ?
シュ、シュンスケ様ナラ遊戯室ニ・・・

どたどたどたどたどたどたどたどたどたっ!!ばんっ!!

「しゅーーーーーんーーーーーすーーーーーけーーーーー!!!!!」

再びどっかのBGMが流れそうな雰囲気でみぃが飛び込んできた。

「あ、みぃ姉さんお帰りぃ。どうしたのそんなに慌てて。」
「どうしたじゃないにゃぁぁぁぁぁ!!!!!
 自分で何やったか分かってるにゃぁぁぁぁぁ!!!!!」

えー?と首をかしげるしゅんすけ。
・・・なかなか役者である。

「何って言われてもなぁ。それより、その格好、何?」

みぃは何やらフリルのついたロリ系の服を着ていたりする。
なんつーか、ロリ萌えの人ならあっさり飛びつきそうな。

「あんたのせいで怪しいおっさんどもに囲まれて大変だったにゃぁぁぁぁ!!」
「えー?その服のこと?結構似合ってるじゃん。
 あ、そーいえばバカな猫を一匹捨てた気がするけど、まさか姉さんじゃないよね?」

ぷち。

「・・・・・・・・。」

しゃきーん!とふたたびフォトンクロー。
今度はもう片手にサイコウォンドを持っていたりする。

「・・・・・・・・。」

ちゃき。とふたたび赤セイバー。
今度はもう片手に芸の道。

「みぃ姉さん。家の中でそんなことしていいと思ってるの?
 シール。何か言ってや・・・」
「シール。しゅんすけ殺るのに手を貸すにゃ。」
「・・・了解致シマシタ。」

ちゃき。とライフルを構えるシール。
どこに持っていたのかは不明。
さすがは冥土ロボ。

「・・・シール。使用人の分際で俺にはむかぐはぁっ!?」

とりあえず、台詞の途中にもかかわらずシールが撃ったらしい。

「・・・上等ぢゃねぇかぁぁぁぁ!!」

みぃとシールの連携攻撃。
それをかいくぐっての反撃。
テク乱射。
阿鼻叫喚。

そして、屋敷の一角が崩壊するのに、20分とかからなかったといふ。


某月某日 某時刻 庭

「・・・・・・?」

庭を散歩していたみぃが工事中の「何か」を見つけた。

「・・・しゅんすけ。これ、何にゃ?」
「姉さんも知らないの?なんだろうね、これ・・・。」

見た感じ、大型の転送機のようだが・・・。

「あ、シール。あれ、何にゃ?」
「・・・タシカ、大型ノ転送機ダッタト・・・。」

見たまんまだったらしい。

「何に使うにゃ、あれ・・・。」
「・・・・・・。」

言いにくそうに目をそむけるシール。
そして。

「ミィ様トシュンスケ様専用ノ、バトルシティ転送機ダソウデス。
 親方様曰ク。『喧嘩スルナラ外デ殺レ。外デ』ダソウデス。」


数日後。
この転送機が大破するという事件が発生した。
どうやら、向こうで起きた爆発の影響らしい。
そして。

みぃとしゅんすけが1週間行方不明になるという事件もあったのだが。


それはまぁ、別の話。


−−−終−−−

                           2001.10.30 miesod@けいっち



ギャラリートップへ