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2001. 12. 30
美しいものを見た。
暮れなずむビルの谷間に覗く金色。
──今年最後の満月。
この東京にも、日本のどこにも、ワシントンD.C.にもベルリンにもパリにも北京にもローマにもイェルサレムにも、バーミヤンにもハワイ沖にもニューヨークにもカブールにもコソボにも、たとえ空は雲で覆われていようとも、今年最後の満月は、昇る。
月を天の鏡と呼ぶのなら。
その鏡の映す人の想いがいつも穏やかなものであるように、と。
有り得ることではないけれど、願うくらいはいいだろう。
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2001. 12. 28
毎年恒例、会員制の超高級割烹が、今年も職場に開店した。
早い話が忘年会である。いつも通りの、どこかの店に繰り出すのではなく社員が職場で料理を作り酒を買ってきて職場で行う、忘年会。
本年度のメニューは、鯛の刺身、ハマチの刺身、キムチ鍋、餃子、タラモサラダ、アボカドとトマトのサラダ、きんぴらゴボウ、イカの梅肉和え柚子風味に同・シソ風味、即席塩辛、鯛のあら煮、鯛のあらと大根の鍋、乾きものに、ビールに日本酒と、確かこのくらいだったはず……。
鯛もハマチもまるごとを買ってきて会社で捌いたものだし、餃子も皮こそ買ったが餡は会社で作って5〜6人で手分けして包んだものだ。
判っている。普通はやらない。いや、出来ない。というか、多分やろうとも思わない。
が、やってしまうのがウチの職場の面々なのである。
何がすごいって、これらの料理が、午後4時過ぎから仕込み始めて6時にはほぼ出来上がっていたことだろう。
この忘年会と春の花見は気合いと入れ込みようが違うのである。
味はもちろん全て絶品。
40〜50人かもしくはそれ以上の人間が、満腹で食べきれなくなるほど量もたっぷりあって、聞けばこれで費用はおそらく5万ほどだというのだから、店に繰り出すのが馬鹿らしくもなろうというものだ。
ちなみに、料理を仕込んでいる間、その場にいたみんなで交わしていたのはこんな会話。
「これさあ、会社の業務内容に入れたら?」
「居酒屋、とか料亭とか?」
「そうそう」
「それよりさ、求人広告に書けば。『料理も覚えられます』って」
「いやそれよりさー、採用条件に『包丁の使える人』って書くとか」
「訊かれるんだ、『料理できる?』って」
「そうそう。入社試験とか面接の時、大根と包丁置いてあったりするんだ」
もちろん冗談だが(アタリマエ)、その気になれば料理に関するイロイロを基礎からきっちり覚えられて、レパートリーも増やせるのは、嘘偽りのない事実である。
それにしても、使い捨ての紙製どんぶり買うよりお買い得だったから、と買い出し部隊が買ってきたお椀39個(これが店にあった全在庫だったらしい)は、どこにどうやってしまい込まれたのであろうか。
お開き前に退社したため、それを年明けまで確認出来なくなったのが、いささか心残りではある。
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2001. 12. 26
満月を30日に控えた冬の東京の夜空は不思議な色をしている。
地上の光を映して鈍く光る雲の、隙間からのぞく空は、とても不思議な色をしている。
やはり地上の光と汚れが空気が邪魔をして漆黒にはならない空が、空気の比較的綺麗に澄み渡るこの季節、月の光をも淡く映して、吸い込まれそうな深みを見せる。
昼間の青空よりも、澄んで高く見える空。
今年最後の満月は、12月30日、その姿を空に浮かべる。
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2001. 12. 21
夜、ラジオでヒットソングのランキング番組を聞いていると、パーソナリティがこんなタイトルコールをした。
「先週18ランクの大幅ジャンプアップをしたこの曲が、とうとう今週ベスト20に飛び込んできました! Strawberry
Flowerで、『愛のうた』!」
(聞き覚え、ないなあ、アーティストにも曲名にも?)
先週の放送を聞き逃していた私は、つい首を傾げてしまった。
この番組のランキングベスト20はほぼ毎週聞いている上に、職場でもFMを流しっぱなしにしているので、聞き覚えのかけらもないのがいささか不思議だったのだ。
が。
イントロが流れてきたところで、聞き覚えのありすぎるそのメロディに、ついつい大笑いしてしまった。
ヒットチャートのベスト20に食い込み、まだまだ上昇しそうなその曲は……
ゲーム『ピクミン』のテーマソングでした(爆)。
そういえばそんなタイトルだったな、あの曲……。
ご存じない方、聞いてみたい方。
ここ
(http://www.nintendo.co.jp/ngc/gpij/index.html)
で聞けます。
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2001. 12. 19
まだまだ大流行しているコンピュータウィルスBadTransだが、どうやらバグも多いらしい。
添付書類(ウィルスファイル)がついていなかったり、ファイルを開けてしまってもバグのお陰で感染を免れたり、ということもあるのだそうが。
まあここまでは普通のバグ、なのだが。
ウチに来るBadTrans感染メール、ちょっと面白い動作をするモノが時々出現するのだ。
まず、見覚えのないメールアドレスから、タイトル『Re:』のみで添付書類のくっついたメールが届く。ここまでは通常。
ところがこのメール、新着メールのリストでは『添付書類アリ』と表示されているのに、私が添付書類の収納場所として指定してあるトコロを見ても、その添付書類が見あたらない。
で、
(おかしいなー?)
と、訝しみつつ、メールを削除すると、だ。
現れるのだ、くっついてきたはずのウィルスファイルが。
……どこに?
──デスクトップのゴミ箱に!(爆)
OSやメールソフトが、BadTransが狙っているものとは違う、というのもあるかもしれないが、個人的にはものすごく便利なバグ、だったり(笑)。
しかしこんな便利で楽しいバグが出てくることはまずないので、くれぐれもウィルスにはご注意を。
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2001. 12. 13
12日、1995年以来日本漢字能力検定協会が毎年全国から募っている、世相を表す『今年の漢字』が選定されたそうだ。
3万6097票中2285票を集めて1位となった『今年の漢字』は、『戦』。以下20位までに、狂乱恐命壊爆新崩牛争変改米悲生痛和失暗と続いたという。
見ているだけでなんとも暗い気分になってくるが、衝撃的な事件がより印象に残りやすいとかそういったレベルでもなんでもなく、これらは間違いなく『2001年』を表す字なのだ。
鬼に笑われてもかまわない。
来年選ばれる『2002年の漢字』が明るいものであるよう願ってやまない。
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2001. 12. 8
劇団☆新感線の芝居『直撃! ドラゴンロック3 轟天対エイリアン』を、翠條さんと祐さんの3人で見てきた。
バカだバカだと聞いてはいたが、本っ当にバカ!(←誉め言葉)
そもそものキャラクターや役名からしてパロディだし、BGMも作中で役者が歌う曲もパロディなら、台詞もパロディの連続。細かくギャグは飛ばすわ下ネタはかますわ、よくもここまでやれるもんだと笑いながら呆れるほどだ。(←誉め言葉)
一応宇宙自衛隊とエイリアン(パンダラ星人)が戦うことにはなっているのだが、どちらもクセが強いしワガママだしそれぞれが場を引っかき回すしで、まともなストーリーなどないに等しい。クスクス、だったり吹き出したり大笑いしたり、ひたすら笑い続けて気力も体力も奪われた気のする3時間半だった。(←くどいようだが誉め言葉)
こういう芝居を真面目にやってくれる劇団☆新感線が、好きだ。
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2001. 12. 5
朝日新聞のネット版に、ニューヨークでとあるマフィアのファミリー73人が逮捕された、という記事が出ていた。
FBI捜査官の潜入捜査で摘発されたのだそうだ。
先輩とその記事を見ながら、
「3年間で約17億円を荒稼ぎだって」
「……サッ○ー確か3年で6億だよね?」
「AVで400億稼いで逮捕されたのもいたよなぁ?」
「負けてるぞ、マフィア」
こんなバカな話に花を咲かせていたのだが。
ふと、とある1文を見て、あることを思いついてしまった。
「……ねぇ、これ、『うち34人が支部長などの幹部』ってなってるけどさー。ファミリー全員で73人だったら笑えない?」
「総数73人で幹部34人? それって部下が1人いれば幹部ってことか?」
「そう。支部長っても、その支部、支部長と部下しかいないんだ。ど?」
部下が1人つけば幹部になれる組織。んなわけないと判ってはいるが、もし万が一そうなら笑える。
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2001. 12. 3
意外な事実が判明したのは先週末のことだ。
先輩と話をしていたら、ふとしたきっかけでドラマ『アンティーク』の話になった。
「あれ面白いよなー」とこれは先輩。
私はつい言ってしまった。
「うーん、ドラマはドラマで笑えるけど、原作の影も形もないからなー。私原作の方が好きなんだけど」
ところがだ。先輩がこれに反応したのだ。
「ああ、原作も面白いよな」
…………知ってるのか!?
「……読んだことあるの?」
素直に問いかけた私に目を向けたまま、先輩はそっと体をずらした。デスクの下には──
『西洋骨董洋菓子店』(よしながふみ作・新書館)既刊3冊。
「……誰の?」
「俺のv」
買ってるのか!
「あれさー、やっぱ小野は魔性のままがよかったよねー!」
「原作のままがいいのになあ」
すっかり盛り上がってしまった。
ちなみにこの先輩、40代の男性である。
まさか40過ぎた男としかも会社で魔性語りが出来るとは思わなかった(本人の名誉のために詳細は秘す)が、それだけでも十分意表を突かれたのに、話はこれで終わらなかった。
月曜日、別の先輩が『西洋骨董洋菓子店』に興味を示したので、「読ませてあげてねv」と頼みに行った私の、袖をつんつん引っ張ってその先輩が訴えた。
「髪切った。」
「…………ほぉ」
「小野v」
…………待て。よもやまさか、とは思うが。
「まさか店にコミックスとかコミックスのコピーとか持ってって『この髪型にしてください』とか頼んだんじゃないだろうねっ!?」
「してないしてないそんなこと!」
先輩は即座に否定したが、続けて言った。
「短くしてくださいって頼んだんだけどさ。切ってもらってるうちに、段々、これ小野に似てるなーってv」
……………………思うな!
「あんな眼鏡捜したんだけどなくってさー」
……………………そして捜すな!!(爆)
そのうち小野を見習って魔性デビューでもしてくれないものかと密かに期待する私である(笑)。
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2001. 12. 1
厳しい言葉だと、自分にもあてはまることだと承知の上で、苦言を申し上げる。
最近またコンピュータウィルスが蔓延し始めた。
9月に大流行したW32Nimda同様、メールの添付ファイルとしてウィルスを送りつけ、添付ファイルを開かなくてもメールソフトやブラウザのプレビュー機能を使ってメールを読むだけで感染させる、メールソフトやブラウザのセキュリティホールを巧妙に突いたウィルスたちだ。
コンピュータウィルスの新種は、後から後から登場する。だから常に感染の危険はある。ウィルス自体も巧妙さを増して、対応が追いつかないこともある。
しかしだ。
メールソフトやブラウザのセキュリティホールを突くタイプのウィルスは、既にNimdaで経験済みだ。それにどう対応すれば感染を防ぐことが出来るのかも、Nimdaで判っていたはずだ。親しい友人や知人がはからずも感染してしまい、そこからウィルスつきのメールが届くならまだしも、見たこともなければ身に覚えもないメールアドレスから届く添付ファイルを、開いてはいけないことなど周知の事実のはずである。
だからある程度は防げたはずなのだ、今度の大流行は。個人個人が警戒していれば。
電脳空間を泳ぎ、メールやデータを誰かとやりとりする限り、ウィルス感染の危険はつきまとう。『かも知れない』ではなく、その危険は常にあるのだ。
自分で書いていてなんとも空しくなるが、私の使っているMacintoshは世界的に非常なマイノリティで、ウィルス作成の苦労に比して世間的な被害が小さいため、Macintosh狙いのウィルスは少ない。けれどそれでもマイノリティを狙ってみたくなるマニアックな御仁がこの先また現れる可能性はあるし、それでなくてもうっかりウィルスつきのメールを他の誰かに転送してしまえば、その時点で立派な媒介者になってしまう。
だから。
自分は絶対感染しない、とは思わないで欲しい。大丈夫だろうとも思わないで欲しい。
判らない、知らない、面倒だ、で、引き起こされる被害はあまりに大きい。
対応策が判らなければ、人に訊くなりネットで調べるなり、手段はいくらでもあるのだ。
風邪を防ぐのに最大の効果を発揮するのが自身の予防と体力であるのと同様に、コンピュータウィルスに対して最大の防御となるのは、自身の警戒心と、知識、なのである。
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