2001年11月の私淑言

 


2001. 11. 25

やってしまいました(^^;)。

何かというと、またしても私の声である。
起きて数時間はただでさえ高いとは言えない声が低めな上、自宅で電話に出る時は営業用に高くしたりもしないため、しょっちゅう男と間違えられ、密かにそれを面白がったりもしているのだが、今回はさすがに申し訳ないと思ってしまった。
被害者は、行きつけの図書館(笑)の司書さんだ。
電話が鳴ったので、いつもの調子で電話に出たのだ。
「はい」
「化け狐(仮名)さんのお宅でしょうか?」
「はい、そうですが」
「○○図書館ですが、化け狐(仮名)さんはいらっしゃいますでしょうか」
この時点で「あ」と思ってはいたのだ。聞き覚えのある声だと。
だが、とりわけ声を低くしたつもりもなかったので、ついついフツーに答えてしまった。
「はい、私です」
が。相手の司書さん的にはじゅーぶん低かったらしい。司書さん、黙り込んでしまわれた。
「……………(この間約3秒)……………」
この3秒間に彼の脳裏を駆けめぐっただろう言葉を、私は推測できる気がした。
何しろ顔を見れば名前が浮かび、名前を見れば顔が浮かび、声を聞いてもその人と判るくらいには『顔見知り』になってしまっている相手なのだ。
きっと司書さんは思ったはずだ。
おかしい、と。今自分が話しているのはあの人のはずなのに、声はまるっきり男だ、と。
きっと色々考えてぐるぐるしていたに違いないのだが、次に司書さんが発した言葉はこれだった。
「ご予約の本が届いておりますので、○日までに取りにいらしてください」
「はい、ありがとうございます」
答えながら私は、「プロだ!」と、思った。

それにしてもこれ以上低くならないように気を付けないと被害甚大だな、この声(^^;;;)。

 


2001. 11. 24

申し訳ないが、今回ちょっと怒りモードである。

今年の8月に栃木の黒磯市で少女を拉致監禁した2人組が、心底むかつく犯行動機を吐いているらしい。
オトナの女は自分達の言うことを聞かないから、子供を拉致して好きなように育てて自分だけを見るようにしよう、だとか、9年以上に及んだ新潟の拉致監禁事件を越えてやろうだとか、監禁し続けるのが大変だからと女の子の殺害まで考えた、とか。
冗談ではない。そんな理由で人間1人拉致されて監禁されて殺されてたまるものか。
何でも自分の言うことを聞いてくれる存在が欲しいなら、逆らわない存在が欲しいなら、いっそ等身大の人形でも相手にしていろというのだ。
女の子がよくぞ無事でいてくれたものだと思う。
犯人達のあまりの言動に、暴言と承知の上で、「コイツらこの先の世のため人のために殺っとかないか?」、と、ついつい呟きたくなってしまう私の心境は、多分みなさまにもご理解いただけると思うのだがどうだろう。

 


2001. 11. 19

今年もまた、獅子座流星群の極大日がやってきた。
今回は19日未明から明け方にかけて。イギリスの著名な天文学者氏が「今年は日本で流星雨になる可能性が高い」との予測を出していたそうで、実は密かに期待していた。
折しも新月である。問題は、天気だった。
19日午前0時。空は薄雲に覆われていた。
午前1時、もう一息。
そして午前2時も近くなった頃、空がキレイに晴れ渡った。
コートを着込んで、エアコンの室外機の上に座り込み、ベランダの手すりに頭をもたせかける。持ち出した毛布で身体をくるめば、流星観測の準備は万端。
そうして見上げたグレーの空に。
鮮やかな軌跡を描いて、光が流れた。
南にひとつ。東から南へひとつ。西の空にもまたひとつ。
見る間に光が横切ってゆく。
音がしないのが不思議なくらいに、くっきりとその存在を主張しながら光が走る。
最初のうちこそひとつ、ふたつと数えていたが、いつか数えるのを止めてしまった。
雲がかかって観測を諦めた午前3時までの間に、100個以上は見えたはずだ。
33年に1度の大出現、と騒がれた98年の比ではない。
流星痕を残したものも多く、爆発するように鮮やかに輝いたものもいくつかあった。
不夜城・東京のグレーの夜空ですらこうだったのだ。光源の少ない場所でなら、もっとたくさんの流星が見えたことだろう。実際、富士山頂あたりでは、1秒間に5〜6個の流星が見られる『流星嵐(りゅうせいらん)』が出現したという。午前2時から3時半のピークとされた時間帯には、3000個もの流星が観測された、という話だ。
テンペル=タットル彗星が宇宙に残した『生存証明』は、今年、日本の夜空にあでやかできらびやかな光の華を咲かせた。

 


2001. 11. 16

空爆下にあったアフガニスタンで、首都カブールやジャララバード、カンダハルをはじめとするタリバンの支配地域に、反タリバンの北部同盟が進攻、制圧したそうだ。
カブールからは、タリバンの支配から脱した人々の笑顔が、映像として送られてくる。
アメリカ軍が空爆の主な理由・目的としていた、『9月11日の同時多発テロの首謀者とされるウサマ=ビン=ラディン氏の身柄確保』は未だ果たされていない現状に、ふと、『内戦』の言葉を思い浮かべたりもする。
16日から、イスラム教圏は、ラマダン(断食月)に入る。
けれどアメリカ側には、攻撃を中止する意志はないらしい。
『タリバン後』を睨んで、国連は多国籍軍の投入を考慮しはじめている。
同様に、アフガニスタン国内では各勢力が動き始めていると聞く。
願わくはこれが新たな内戦のはじまりでないように。

 


2001. 11. 10

11日で終わってしまう『日本人はるかな旅』展(上野・国立科学博物館)と『美術の中のこどもたち』展(上野・東京国立博物館)を、翠條さんと見てきた。
9時半過ぎに待ち合わせて、まずは『日本人はるかな旅』。
これはN○Kで月1で放送中の同名の番組シリーズに関連する遺跡や、そこからの出土品、遺跡で暮らしていた人々の当時の生活の想像再現図などを展示してあるものだ。
旧人から新人への進化、人類の発祥から各地への生活空間の拡大。出土した土器・石器などとその制作・使用法、交易の証拠としての翡翠や黒曜石、狩猟の方法や埋葬の方法、祭祀の跡。先日発覚した遺跡の捏造やそれに絡む諸々もきちんと紹介されていて、とても興味深かった。
中でも、笑ってはいけないのだろうけれどついつい気を引かれて笑ってしまったのが、発掘された人骨についている解説。
こんなことが書いてあるのだ。
『側頭部が2段階で陥没しており、他殺の疑いもある。』
だとか、
『こういう風に(膝を後ろに折り曲げて)埋葬するのは、罪人に対してよく行われた。ただし彼が罪人であったかどうかはわからない。』
だとか。
そこに人がいて集落を作り暮らしていたなら諍いや問題が起こってアタリマエなのだとは思うが、その証拠をはっきりと見せられた気がした。
個人的に、縄文人の容貌の復元図として展示されていたイラストや像が会社の先輩にそっくりで笑いを噛み殺すのに苦労した、などということもあったが、見応えのある展示で、見終わるまでにたっぷり2時間半を費やした。
昼食を挟んで、次は『美術の中のこどもたち』。
こちらは、絵画や彫刻など日本美術に描かれ刻まれた『こども』を集めて展示してあるものである。
遊び、学び、生活するこどもたちの様子を描いた絵画、こどもの成長を願って作られた玩具や儀礼用の品々、亡くなったこどもを偲んで作られた絵画や彫刻、仏像や神像に刻まれた『童子』など、さまざまなものが展示されていて、その数は180点に及んだ。
中のひとつに『近世職人尽絵詞』というのがあって、習字をしているこどもたちと彼らに教える大人たちが描かれていたのだが、この表情や仕草が生き生きしていて楽しくて、しばらく眺めてウケてしまった。
間に休憩を挟みつつ、全て見終わってみると、かかった時間はやはり2時間半。
お茶をしながら1時間ほど話して、お開きとした。

 


2001. 11. 7

立冬、なのだそうだ。
秋分と冬至の中間点。
6日、東京で今年の木枯らし1号が吹いた。
これから3ヶ月、暦の上での、冬に入る。

 


2001. 11. 4

翠條さん、高岡さん、高岡さんのお友達のAさん、祐さんに私の5人で、2泊3日で奈良・京都へ行ってきた。
今回の一番の目的は、奈良・薬師寺は玄奘三蔵院の、平山郁夫画伯の手になるシルクロード大壁画。特別一般公開が今年いっぱいだというので、『1年に○日間』などの制限なしで公開されているうちに見ておきたかったのだ。
室生寺や長谷寺の紅葉も、時期があえば見たかった。
残念ながら室生寺・長谷寺に詣でた3日は朝から雨で、ゆっくりじっくり、というわけにもいかなかったし、紅葉にもまだ少し早かったけれど、色々と楽しい旅だった。

つっこみドコロもイロイロあったので、一応旅行記も書いておきたいと思ってはいるが、ちょっと取り込み中(^^;)なので書けるのはもう少し先になりそう。あまり期待なさらず気長にお待ち下さい。

 


2001. 11. 1

例によって例の如く就業時間終了後に始まった、有志による職場の飲み会。
通りかかった私がつまみのおこぼれにあずかっていると、レモンサワーを飲んでいたとある先輩が、ロックアイスを開封している別の先輩の手元を見ながらふと言った。
「それ、何袋め?」
答えて先輩。
「3袋目」
「そっかぁー。やっぱさー、バカにならないよな、氷も」
「そうですよね。1袋の値段はそんなでもないけど、でも」
(──そりゃあ、これだけやってればなぁ)
声には出さずにそっと思った私の隣で、先輩達の会話はさらに続く。
「やっぱさぁ、製氷器欲しいよなー」
「ああ、あるといいねぇちっちゃいの」。

 

その内また不思議な備品が増えそうですウチの職場(^^;;;)。

 


 

 

今月の『私淑言』へ  『おしながき』に戻る