2001年7月の私淑言

 


2001. 7. 28 千と千尋と峰倉かずや

『千と千尋の神隠し』と峰倉かずやさんの原画展に行って来た。
原画展は前からこの週末に行こうと思っていたが、『千と千尋』はまったくの突発。
どうせなら、と突然思い立ち、ネットで池袋はシネマサンシャインの朝イチの上演時間を調べたのが金曜深夜のことだった。
上演時間は ── 8時20分。
起きられたら行こう。と決めて、目覚ましをセットして……起きました、ちゃんと(自爆)。
映画館に着いたのは朝8時を少し過ぎてからだったのだが、睨んだとおり、余裕で座れた。(ちなみに上映が終わって外に出るとものすごい行列が出来ていた)
ネタばれになるので詳しい感想は避けるが、私個人の印象で言うと、『もののけ姫』よりこちらの方がずっと好きだ。見終わった時、なんとなし、「大丈夫だよ」と、晴れた空を見上げながら10才の『千尋』に笑いかけたくなるような、そんな映画だった。菅原文太さん(釜爺)と夏木マリさん(湯婆婆)の熱演を是非劇場で(笑)。

11時前に劇場を出て、今度は峰倉さんの原画展へ。
生で見る原画は、ラフ画もモノクロ原稿もカラー原画も惚れ惚れするほど綺麗で、見惚れているとあちこちから小声で
「あーっ、これ持って帰りたいーーっ!!」
おそらくは会場にいた全員が思っていただろうその言葉に、私も心中
(うん、その気持ちはよーく判るよ)
と頷いてしまった。

 


2001. 7. 23 彼(もしくは彼女)の望むもの

職場の先輩のデスクの上に、小さな丸サボテンが鎮座している。
買ってきた当初は直径が500円玉ほどのかわいらしさだったそれ。
既に先輩のデスクを飾るようになってから1年以上が経過して、二周りも三周りも大きくなったそのサボテンだが、しばらく前からちょっと不思議な姿を見せるようになった。
成長する方向が、どうにも妙なのだ。
丸サボテンの成長というと、丸い形を保ったまま大きくなってゆくか、大きな丸の上に小さな球形の新芽が、文字通り雪だるま式にポコポコと積み上がってゆくか、だと、思っていたのだが。

彼(もしくは彼女)は、ひと味違う。

そのオリジナリティーに溢れた姿をご覧あれ。

 

 

サボテンの姿を評して、持ち主の先輩は言った。
「新弟子審査の時の舞の海みたい」
また別の同僚はこう表現した。
「納豆のCMの宮本信子に似てる」
こうも言った。
「アレなんじゃない? ほら、丸サボテンじゃなくて、アメリカとかにあるあの背の高い埴輪みたいなサボテンを目指してるとか」

ここに至ってかのサボテンは己が真の姿を目指し始めたのだろうか?
ちなみにこの写真を撮影してから、サボテンはまた少し形状を変え、先端部分が微妙に横へと曲がりつつある。
彼(もしくは彼女)がどんな姿を望んでいるのか、明らかになるのはまだまだ先のようだ。

 


2001. 7. 19 涼しさをおそすわけ。

今回はちょっとばかりホラー風味なので、その手の話の苦手な方は読み飛ばすか、覚悟を決めてここから先へと読み進んでいただきたい。

 

 

出社してすぐのことだ。
携帯に、留守録メッセージありのマークが表示されていた。
家を出る時にはそんなマークはなかったから、通勤電車の中にいるあいだに残されたものなのだろう。
(…………ダレだ?)
訝りながら、留守録センターにアクセスした。
機械的な女性の声が言う。
「お預かりしているメッセージは、1件です」
そうしてそのまま、メッセージの再生がはじまった。の、だが。

まず聞こえたのは、まるで放送終了後のテレビ画面に現れる『砂嵐』か、電波状態の良くないラジオのような、ノイズの嵐だった。
『………………ザーーーーーー ………………』

そうして、そのノイズに重なるように。

さして性能の良くない録音・再生機能をもつオモチャに1度録音してから再生をかけたような、ザラついて不明瞭な、女性、もしくは女の子の声が。

淡々と。

2度、こう、繰り返した。

 

 

──── 再生終了。

瞬間、背筋を冷たいモノが駆け上がった。
体感温度が確実に20度は下がった。
(うぉおおおおおおおっっ!!? いっ、いきなりナニ言うんですかお客さんっ!?)
ちょっとばかりパニックを起こした頭では、まともな考えは浮かばない。
(しょ、消去! これ消すにはどーすればいいんだ!?)
慌てて留守録センターの指示を聞こうとしたが、肝心の部分は既に流れた後だった。
再び指示が再生されるまで、約20秒。
後でこのメッセージのことを話した友人は
「えー、残しといて聞かせてほしかったのにー」
などと言ってくれたが、冗談ではない。こんな素敵にブキミなモノを残して何度も聞く趣味はない。速攻で消去させてもらった。

それからどうしたかって?
仕事、しました。ごくフツーに。
そうして友人や先輩に話して反応を楽しんで、挙げ句ここでみなさまに涼しさのお裾分けまでしてしまおうと考えてしまう茶寮主なのだった。

ひとときの冷気、感じていただけただろうか。
ちなみに、最初に警告文を書いてあるので、これを読んでから主に
「コワかったぞ! こんなお裾分けすんじゃねー!」
と苦情を仰られても、主は責任を負いかねる。

だって一番ゾッとしたのは、何のココロの準備もなく、まともにアレを聞いた、私自身、なんだから。

 


2001. 7. 16

午後のことだ。
キッチンにお茶を淹れに行ったら、先輩が
「見た? 冷蔵庫の中。すごいよ」。
一瞬首を傾げてしまった。
昼前にお中元の麦茶を飲もうとドアを開けた時には、別段なにも変わったことはなかった。そもそもウチの会社のことである。冷蔵庫にジュースが詰まっていようがビールが詰まっていようが酒のつまみが冷えていようが、今更誰も驚かない。ではナニがすごいと言うのだろう?
ドアを開けた私は絶句した。
冷蔵庫に詰まっていたのは──8個ほどのビールグラス。
就業時間が過ぎたらこれで美味しくビールを頂こうという寸法だ。
やれやれ、と、苦笑混じりにドアを閉めて、数時間後。
夕方6時を過ぎた頃、今度は別の先輩がこうのたまった。
「狐さん(仮)、見た?」
てっきり冷蔵庫のビールグラスのことだと思い、「はい」と言いかけた私だが、先輩は別の方向を指さしていた。
(……ナニゴト?)
また何か豪勢な土産を誰かが持ってきたのかと、そちらに赴いた私の目に映った、モノは。
黒くてどっしりした樽形のボディの──ビールサーバーさんだった。
聞けば、春に有志で企画実行した社員旅行の旅費の余りで買ったのだという。
驚き呆れる私に追い打ちの声がかかった「あれ、見たか?」。
みんなが認めるダンディであられる本部長が、指さす先にはビールグラス専用の棚。
グラスを片手に1人が仰る。
「仕事終わるのが待ち遠しいよね」
確かにそうだろう、間違ってはいない。その、はず、なのだが……。
やっぱりナニか違うと思う(^^;)。
これでも一応、会社です。普通とはとても言えませんが(大笑)。

 


2001. 7. 6

件の西瓜が届いた。ので、結果報告。

直径23〜4cm、周囲75〜80cm、重さ(推定)3kgの……
大玉でした(泣笑)。
しかも2個

お礼の電話をかけたら、従兄殿は笑いながら
「デカくてびっくりしただろう。」
── アンタも確信犯か、にーさん(涙)。
嬉しいことに間違いはないが、相変わらずウチの連中は容赦がない(苦笑)。

 


2001. 7. 5

ちょっとコワい話。

従兄に『いつもウチの親と兄一家がお世話になってます』と『ご無沙汰してます』を兼ねて毎年送るつけとどけお中元が、今回も無事に届いたらしく、先日義従姉から電話がかかってきた。
そうして、ひとしきりの挨拶と近況報告の後、彼女が。
「狐ちゃん(仮)、西瓜食べる?」
「西瓜? うん、好き。滅多に買わないけど自分じゃ」
「あ、ほんとー。よかった。じゃ、送るね」
言われた私は、ついうっかり素直に喜んでしまった。
「うわーい、やった、ありがとーっ♪」
「じゃ、近々送るから待っててねー。体に気を付けて」
「うん、そっちも。みんなにもよろしくね。それじゃ」
うっかり喜んだ満面の笑顔のまま、電話を切って、ふと考えること3秒。
我に返ってその先の可能性に気がついた。
── 玉が届いたらどうしよう(汗)。
当然カットよりも玉の方が無事に届きやすいのは明白なのだ。
ついでにもっとコワい可能性にも気がついた。
── 大玉だったらどうしよう(冷や汗)。

ナニが一番コワいって、ウチの場合、これがあながち杞憂でもないアタリ(^^;;;)。

 


2001. 7. 3

シアトルマリナーズのイチロー選手が、アメリカ大リーグのオールスターゲームファン投票で、ナショナル・アメリカンの両リーグ最多の337万3035票を獲得して1位になったそうだ。
新人選手の1位獲得は大リーグ史上初だという。
今年は、日本国内のコンビニに配布された投票用紙を使って、日本のファンからも約69万票がイチローさんに投じられたそうだが、それをのぞいても堂々の1位。
同じくマリナーズからは大魔人・佐々木投手もオールスターゲーム出場確実だというから、目が離せないオールスターゲームになりそうだ。

 


2001. 7. 1

近所のスーパーにゴーヤ(にがうり)が出たので早速ゴーヤチャンプルーにした。
我が家の冷凍庫に、ロックアイスが常備になった。
近所のスーパーの夏の土曜夕方限定発売の人気商品、サーターアンダギーの販売も始まったし、桃や西瓜、葡萄が果物コーナーで幅を利かせはじめてもいる。
冬瓜が我が家の食卓を飾る日も近い。
季節の移ろいは、こんな風にも、判る。

 


 

 

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