2000年6月の私淑言


2000. 6. 30

朝っぱらからみょーなモノを見てしまった。
会社まで、地下鉄を2路線使って通っている。その、乗換駅で。
ホームに入ってきた電車を見るともなく見ていた私の目の前を、妙なものが過ぎった。
速度を落として過ぎて行く電車の、ドア。
それだけならごく当たり前のものなのだが、そのドアの合わせ目から、何やらグレーと濃紺の細長いモノがのぞいていた。
(……なんじゃ、ありゃ?)
首を傾げたのは一瞬。次の瞬間には、私の脳は、目から受け取った映像を解析していた。
電車のドアから生えていたモノ。それは……
男性の半袖シャツの袖と、ズボン、だったのだ。
つまりは、彼の男性、前の駅で電車に飛び乗ったはいいが、ドアに服を、それも上下とも挟まれて、身動きが取れなくなっていたのである。
危うく爆笑しそうになった。
だが、やるわけにはいかない。何しろ、彼はその頃にはとっくにホームの中央あたりまで移動していたのだ。ここで笑ったら、気付かなかった人達から白い目を向けられるのは自分である。
電車に乗って、会社に着くまで、2駅。改札を出てオフィスに入り、友人をとっつかまえれば、見たものを暴露して爆笑できる。
それだけを心の支えに、あのたった一瞬でそんな妙なモノを見つける偏った己が動体視力を半ば呪いつつ、私はその2駅を、耐えた。
だが、後から思えば、私よりも、彼の乗った車両の停車位置ピッタリのところで電車を待っていた人の方が、辛い思いをしたのではなかろうか。目の前に止まったドアから、袖とズボンが生えているのだ。しかも本人が目の前にいるのだから、笑うわけにもいかない。
更に辛いのは、たまたま彼のそばに乗り合わせてしまった乗客だろう。
笑いたいのに笑えない。
これもまた一種の拷問だと、体験したことのある方になら判っていただけるに違いない。

 


2000. 6. 29

26日から噴火が危惧されていた三宅島で、住人の方々への避難勧告が解除された由。
火山活動、とりあえず島内での噴火や、住人の方々に被害が及びそうなほどの島近海での噴火は、回避されたらしい。
有珠山が噴火したばかりで今度はこちらか、と心配していたけれど、何事もなくてよかった。

そういえば。
つい先日、会社のとある先輩と二人、天気予報サイトで週末の各地の天気を見ていたら、ふと先輩がある一点に目を留めて
「あ、ここかー。噴火しそうになってるの」
伊豆諸島は表示されていないのに、と思いつつよくよく見れば、その先輩が指していたのは
──三島(^^;)。
似てるっちゃー似てますけどね。ええまあ確かに。

それにしても、噴火の被害がなくてよかったよかった。

 


2000. 6. 25 Decision 2000

衆院選当日。
まさか有権者が彼の失言大魔王の言葉を真に受けたわけではなかろうが、投票率は予想されたほど伸びなかったらしい。
テレビの街頭インタビューとかを見る限り、今回はそんなに低くはないだろうと思っていたんだけどなぁ……。
でもって、どうやら現与党が議席の過半数を、変わらず占めることになるようだ。
選挙の結果だから、まあこれはこれとして受け止めるけれど。
野中幹事長あたりは、「与党3党で過半数を占めれば現政権続投」とか言っているらしい。

…………ひとこと、言いたい。

与党3党連立は変わらなくてもいい、しかたない。んが。

頼む、あの首相だけは、変えてくれ!!

来月サミットなんだよぉ〜(TT)。各国要人の相手しなきゃならないんだよぉ〜。
自分の言ってることがどう受け取られるのかもまもとに考えない人が国のトップって、ヤバかーないっすかやっぱり?(^^;)

 


2000. 6. 24

バレーボールのオリンピック女子最終予選を、ここのところ見ている。
本日の相手は、クロアチア。主砲イエリッチを擁する強敵である。
クロアチア相手に日本代表が熱戦を演じたのは去年のことだ。
だからかなり期待していた。1・2セットを連取した時には「これならいける!」と拳を握りしめたのだが……
残念ながら、負けてしまった。
これで日本女子の、自力でのオリンピック出場権獲得は、消えた。
残念だけれど、仕方がない。
あとは、25日の韓国戦、存分に戦って、勝利してくれることを祈るのみである。

話は変わって、25日は衆院選。
某テレビ局天気予報番組によれば、選挙の投票率が高くなるのは、前日が雨、当日も曇りか小雨で気温30度以下の時なのだそうな。判りやすいなぁ(苦笑)。
ともあれ、25日はこの条件にぴったりである。
さて、投票率は、投票結果は、どうなるのだろう。

 


2000. 6. 23 

「私淑言くらいはせめて、2〜3日おきに更新しよう」と心に誓ったはずなのに、1週間空いてしまったのには、ワケがある。
ネタがない(こらこら)、というのもあるのだが、図書館にリクエストしていた本が7冊一気に到着し、うち5冊が『待ち人有り』(つまり、延滞出来ないのだ)で、更にそのうち4冊がハードカバーという状況が発生していたのだ。
待ち人有りの5冊の内訳は、東野圭吾さん『嘘をもうひとつだけ』、浅田次郎さん『壬生義士伝』上下、服部まゆみさん『シメール』に、岸田今日子さん・富士真奈美さん・吉行和子さんの共著『ここはどこ──時に空飛ぶ三人組』。
多事拾遺でも書いたが、『壬生義士伝』はいい! 浅田アニキの本領発揮だ。浅田さんの作品を読んだことのない方も、時代小説は苦手と仰る方にもお薦めしたい作品である。

ただ……某明治剣客流浪譚をご存じのかたなら判っていただけると思うのだが……
私、これを読んで、斉藤一が沖田総司より年下だったというのに一瞬絶句しました(^^;)。

 


2000. 6. 17 空から見た地球

渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで、ヤン・アルテュス=ベルトランという航空写真家さんの写真展を見てきた。『空から見た地球』はその写真展のタイトルだ。
今回もデートのお相手はドラちゃんさんで、早めに待ち合わせてランチを取って、それからゆっくり写真展を見て本屋やマークシティーを散策しよう、という計画。
で、まず改札を出て、ランチを取る店を探しつつ、とりあえずBunkamuraに向かった。はず、だったのだが。ついうっかり道玄坂を登ってしまったのだ(^^;)。
が、そのお陰でちょっといい店に巡り会ってしまった。
Myzenという名のその店、『157種類の紅茶とおいしい料理の店』のアイキャッチを掲げて看板を出していた。紅茶につられて入ったのだが、これが結構なアタリ。紅茶のみならず、中国茶や韓国のお茶なども出してくれる。水代わりにサービスで出てきたのが韓国の『こん茶』というお茶だったのだが、ちょっと麦茶っぽくてさっぱりしていた。注文したのはお薦めランチの『牛ほほ肉の煮込み・紅茶ソースがけセット』。ジャンボサラダ(これが真面目に『ジャンボ』・^^;)にメインの牛ほほ肉の煮込み、つけあわせの野菜に、パンかライス、ちょっとしたデザートに紅茶がついて、しめて1300円ナリ。量もたっぷりで味もなかなか。最初にサービスされるお茶とセットにつく紅茶は日替わりになるらしい。雰囲気もサービスも味も、満足のゆく店だった。

で、本来の目的、写真展。
そんなに数はないだろう、などと勝手に踏んでいたのだが、とんでもない。出典作品数200余。それぞれがじっくり眺めたくなる写真な上に、各作品に解説がついていることもあって、ほぼ3時間、『空から見た地球』を堪能させていただいた。
南米の氷河、塩分濃度の関係でハート形の無草地帯が出現したマングローブの沼地、砂漠を行くヒトコブラクダのキャラバン、南極のテーブル状氷山、オーストラリアのグレートバリアリーフ、ヒマラヤ山脈、溶岩を噴き上げるアイスランドの活火山、刈り入れを迎えた小麦畑、ヴェニス全景、ゴミの山、スラム地区、新宿のビル群、金閣寺。
中でも印象深かったのがアフリカのサバンナの『命の木』。背の低い草がまばらに生えている中に、ぽつんと1本だけ立つ、木。その周りに円を描いて草のない空間があって、その更に外側には神経細胞のように、赤茶けた筋が走っている。その、空き地は。その『筋』は。木陰を求めてその木の下に集う動物達の歩いた跡であり、獣道、なのだ。
赤茶けた大地に立つ緑。まさしく、『命の木』、だった。
ポストカードがあれば絶対に買ったんだけどなぁ。
Bunkamuraを出てから本屋に立ち寄り、二人揃って収穫をあげたのは『お約束』である。
天気は良くなかったけれど、充実した1日だった。
『空から見た地球』の開催期間は6月10日から7月9日まで。
興味の湧いた方、是非どうぞ。

 


2000. 6. 13 めぐりあい、亜空間(そら)

電脳空間に生息していると、時々、好きなサイトの閉鎖を経験する。
先日も、大好きなサイトがあわや閉鎖の危機に直面した。月末には友人が、好きで作ったサイトを、閉じる。
管理人さまの事情で、どうしてもサイトの維持が出来なくなることもあれば、『飽きた』のひとことで閉鎖されることもあるけれど……。
知る限りでは、掲示板でのトラブルが原因となることも、多い。

電脳空間は、匿名性の高い場所である。そして、そんな場所でありながら、基本的に『世界中の誰にでも』開かれている。
だからやろうと思えばいくらでも、ハンドルを使い分け、身分を偽って、悪意の書き込みをすることが、出来るし、実際にやる人達が、いる。
哀しくて悔しい、それが現実である。
悪意がなくても、思わぬ方向に話が進んでトラブルになることも少なくはない。
現実世界以上に、そういう危険をはらんだ場所で、電脳空間は、ある。
けれど。
この不確かな世界で、確かに結ばれる絆もあるのだ。
同じものに心惹かれた人達。同じ重力に引き寄せられて集った仲間。

星の数、という言葉が決してただの比喩には終わらないこの亜空間で、同じ思いを共有する人達に出会うことの奇跡を、今更ながらに思う。

 


2000. 6. 11

電脳空間で知り合った友人がこの月末にアメリカへ留学するというので、送別会を兼ねて、オフ会をやった。
10日の夕方に新宿に集合してから、イタリアンの夕食、居酒屋での飲み、その後有志によるオールナイトカラオケと、食べて、飲んで、話して、歌って、11日朝まで一緒に過ごすこと15時間(笑)。
濃すぎるほど濃いオフ会だった。

ちなみに主役のA嬢が留学を決めたのは、なんと5月のことである。
彼女の決断力と行動力に乾杯。
9ヶ月後にはパワーアップした彼女に会えることを楽しみにしつつ、彼女の留学生活が過度に波瀾万丈でないことだけを祈っている。
いや、それ以前に、荷造りが無事に終わってちゃんと出発出来ることを祈るべきだろうか?

 


2000. 6. 6

今更な話なのだが。
去る6月2日、幼なじみのM夫妻に長男が誕生した。
M夫妻。
去年の6月、私が完徹のまま帰省して出席した披露宴の主役の二人である。
結婚してから1年で長男誕生とは、いや素速いめでたい♪
早速電報を送りつけてやろうと思ったのに、新居の住所を知らせてくれた葉書が、ちょっと行方不明(^^;)。ごめんよ、M夫妻・・・。
今年の夏は、祖母の初盆で帰省するので、その時にJr.の顔も拝めることだろう。
今からかなり楽しみにしている私である。

電報といえば。
兄の長男が誕生した時も、長女が生まれた時も、私は電報の発信にインターネットを使った。
オンラインで電報が発信できる、D-Mail
24時間いつでも発信できるのも嬉しいが、何がいいって、文章を口頭で担当の方に伝えなくて良いのがいい。
シリアスに迫るのも、泣かせを狙ってみるのも、お笑いに走るのも、アナタの自由。
メールも電話も手紙も良いけれど、たまにこういう手を使ってみるのも良いものだ。

 


2000. 6. 2

衆議院が解散して、25日は衆院選の投票日である。
4月に小渕さんが倒れ、首相が替わってからの2ヶ月は、このためにあったようなものなのだろう。
選挙になんて興味がない、誰に投票したって同じだ、と、言う人達もいるけれど。

「頼みましたよこの国を」と、テレビに映る政治家さん達に心の中で呟くために。
ひょっとしたらあるかもしれない「この人を選んでおいてよかったな」という日のために。
「こんな人を当選させたのも自分達なんだよなぁ」と反省する日のために。
そして、いざという時堂々と、
「冗談じゃねぇ、こちとら税金納めて投票にも行って、ちゃんとやることはやってんだ。テメーらも自分とか党のことばっか考えてサボってねーで、やることきっちりやりやがれ!」
と、誰憚ることなく盛大に文句を言うために。

私は、6月25日、『選挙権』という名の自分の仕事を果たしに行く。

 


2000. 6. 1 雨人間・晴れ人間

世の中には、雨人間・晴れ人間と呼ばれる人がいるらしい。

などと他人事のように書いているが、数年前まで私と兄は、ある状況に限定してだが、立派な雨人間だった。
なんとなれば。
私か兄のどちらでもいい、実家に帰省すると、その日の内に必ず雨が降っていたのだ。
更に持ってきて、兄は、結婚するまで、車を洗うと必ず雨が降るという洗車雨男だった。
兄が車を洗い終え、ワックスまでかけ終わった途端、降水確率0%をひっくりかえして『一天にわかにかき曇り』雨が降ってきたことすらあるのだから、強力である。
恐るべし雨男。
夏に渇水のニュースを見る度、兄に向かって
「ほら、困ってるよ。行って車洗ってきてあげなよ」
と真顔で言うのが常だった。

だが、そのくせ、自分達が「この日は絶対晴れて欲しい」と思う日は必ず晴れても来たわけで──お陰で私達兄妹には、いまだに当時自分達が一体雨人間・晴れ人間のどちらに入っていたのか判らない。

どうでもいいけど、強力な雨人間と同じく強力な晴れ人間が対決したら、一体どちらが勝つのでしょうね?

 


 

 

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