2000年5月の私淑言


2000. 5. 28 三度、あれから5年

毎年5月になると思い出すことがある。

5年前の5月、阪神大震災に嘆き、地下鉄サリンに怯え憤って沈んでいた日本列島に、爽やかな笑いを運んでくれたひとりの可憐なお嬢さんがいた。
彼女の名は、スーパーオトメ。人ではない。地方競馬場である東京・大井競馬場に所属する、彼女はれっきとした競走馬だった。
数ヶ月後にデビューを控えた彼女は、それはそれはナイーブなお嬢さんだった。
──そう、厩舎の隅に転がっていた空き缶を職員がうっかり蹴り転がした、その音に驚いて厩舎を飛び出し、ショックのあまり一般道に走り出たばかりか風薫る夜の首都高速道路に乗り入れ、爆走してしまうほどに。
目の前を駆け抜けたその姿に料金所のおじさま方もさぞかし驚いただろうが、もっと驚いたのは首都高を走っていたドライバーだろう。バックミラーにいきなり馬が映るのだから、さぞかし我が目を疑ったに違いない。
更に輪をかけて我を忘れたのはその時彼女の世話をしていた厩舎の職員で、なんと彼の御仁は慌てふためいたあまり、すぐそばにあった自転車に飛び乗って彼女の後を追い、首都高にまで乗り入れようとしたのだそうだ。
さすがにそれは料金所の方々に止められたらしいが、彼が驚かせてしまったスーパーオトメは、知らせを受けた警察に取り押さえられるまで、一般道・首都高あわせて合計4キロもの距離を走破したのだという。
ついたあだなが、首都高爆走娘
ヘッドライトやテールライトの流れを縫って首都高を駆け抜ける彼女の雄姿が映像に残っていないのが、いまだに残念でならない。

ちなみに数ヶ月後のデビュー戦において、彼女は文句無しの一番人気だったという。
97年に引退するまで、その生涯成績は21戦1勝。
引退した時点での彼女のその後の行き先も、その連絡先も、調べて判りはしたけれど……だから現在彼女がどうしているのかも、そこに問い合わせようかと思ったけれど……『思った』だけで、結局、やめた。

5年前の風薫る5月、夜の首都高を駆け抜けた一頭の馬がいた。

──記憶に残るのはそれだけでいい。彼女の赤いシャドーロールを私はきっと忘れない。

 


2000. 5. 23 言霊の呪い? 

夕飯も済ませてほっと一息、さてお茶でももう1杯飲もうか、と立ち上がったところで、ついうっかり新聞を踏んでしまった。
今は亡き伯父に『本に限らず、新聞でもなんでも、言葉を綴ってあるものは大事にしなきゃいけないよ』と言われて育ったせいで、そんな時には「ごめん」と謝るクセがついている。
だから今回も同じく謝ろうとしたのだが(というかほとんど条件反射)、
「あ……ごめ」
まで言ったところで、なんと足がつってしまった。
別に何をしたわけでもない。ただ歩いていただけである。しかもつったのは新聞を踏んだ右足、それも私的にはあまりつったことのない、太股の表側。
瞬間思った。
(こ、これはやっぱり新聞踏んづけたせいかっ!?)
──そうに違いない。
こうも思った。
(言霊の呪いというヤツかコレがっ。それにしたってこんな速攻で来るとは!)
まあこれは冗談半分ではあるのだが、そう思いたくなる理由があった。
足に限らず筋肉がつった時には、その部分を伸ばすのが一番である。今回の部位に関して言えば、最も簡単かつ効果的な姿勢は──正座
素直に新聞の前に正座して謝りました。「ごめんなさい」と。

みなさま、言霊の呪いにはくれぐれもお気をつけて。

 


2000. 5. 16 

塩沢さんの後を追ったわけでもないのだろうが、テレビデオ(テレビとビデオが一緒になったヤツ)が昇天した。
気付いたのは13日の夜、笹乃雪でお豆腐料理を堪能し、2時間ほど遊んで帰宅した時。
まあ、私が今の住まいに移り住んで以来の仲間だったのだから、寿命が来てもおかしくはないのだが……一瞬凍り付いた。
修理に出せば直るかもしれないが、サービスセンターに連絡して宅配便で送ってチェックしてもらって、順調にいっても1週間や2週間は軽い。下手をすると1ヶ月。更に、チェックに出しても「買った方がいいかもしれませんよ」と言われる可能性だってある。
(──買い換えよう。)
ほぼ即決だった。
個人的に、今期は『当たり』の番組が多いのだ。今テレビがいなくなったら、プロジェクトXが、アニメ最遊記が、国宝探訪が、永遠の仔が、世紀を越えてが見られなくなるではないか。
はっきり言って、今期1週間テレビと離れるのは普段の1ヶ月分にも相当する。
というわけで、日曜日にいそいそと某電気店へ赴き、さっさと新機を購入して、今日、配送してもらった。

旧機くん、今までご苦労様、そしてありがとう。ブラックボディのキミがスキだった。
そして、代替わりした新機くん、これからよろしく。

電化製品の新旧交代に時の流れを感じた週末だった。

 


2000. 5. 11 

声優の塩沢兼人さんが、10日午前0時54分、永眠なさいました。

古くは初代ガンダムのマ・クベ、北斗の拳のレイから、最近なら名探偵コナンの白鳥刑事、詳しい人ならご存じだろう究極超人あ〜るのR・田中一郎、銀河英雄伝説のオーベルシュタイン、BASARAの揚羽に、アンジェリークのクラヴィスさままで、この方にしか出来ない、この方でこそ、と思えるキャラクターの数々を演じてこられた方です。
数年前、同じく声優の富山敬さんが亡くなった時にも、「古代くんが、ヤン提督が、逝ってしまわれた・・・」と嘆いたものですが、まさかそのたった数年後にこの方の訃報に接することになろうとは。

享年、46歳。
ご自宅の階段から転落なさっての脳挫傷、だそうです。

この方に演じて欲しいキャラクターが、まだまだたくさんいました。自分のオリキャラに、いつの間にか塩沢さんの声を重ねていたこともあります。多分、これから先も、「ああ、このキャラ、塩沢さんにぴったり」と思うキャラクターがたくさん出てくるでしょう。
それでも、その希望が叶えられることは、もう永遠に、ありません。

また一人、名優がいなくなってしまわれました。哀しいし、悔しい。
今はただ、『声優・塩沢兼人』が在ってくれたことに心よりの感謝を捧げつつ、ご冥福をお祈りするばかりです。

 


2000. 5. 6 ワニ、食べてきました。

少し前に高岡裕さんがご自分のHPの掲示板で「わに料理を食べた」(この場合の『わに』は中国地方で言うところの『わに』、つまり『鮫』のことであるのだが)と宣ってから、関東勢の間で、『わに』が転じて『ワニ』(クロコダイルとかアリゲーターとかの)を食べよう、と盛り上がってしまった。
関東である。東京である。早い話が「なんでもある」。当然ながらワニの肉が食べられる店というのもあるわけで……。
希望者を募って、総勢8名で、5月6日、決行されたのだ、『ワニオフ』が。
参加者はさきさん、翠條さん、たさかさん、祐さん、ドラちゃんさん、にのらさん、睦月さんに、私。開始時刻は19時、集合時刻は18時30分に設定した。
が。「せっかく集まるのにねぇ」。思ってしまった私が来られそうな人達に声をかけ、翠條さん、祐さん、ドラちゃんさん、睦月さんとの『プレワニオフ』が、14時の新宿西口改札前から開始された。

最初の目的は、小田急美術館で7日まで開催の『日本の絵本百年展』。明治・大正・昭和を経て現在までの絵本の歴史を紹介していた。絵本の前身である『絵入り本』の赤が基調の派手な色使いにうなったり、絵本の挿し絵や添えられた文章にツボを突かれて笑ったり。
2時間たっぷり堪能して、会場を出た我々が向かった先は、Afternoon Tea Room。お茶を飲みケーキを食べ(私はスコーン)、おしゃべりに花を咲かせること1時間半 …… その間私と翠條さんは、睦月ちゃんを峰倉かずやさんの『最遊記』にはめるべく、事あるごとに連係プレーでそそのかしていた。睦月ちゃんは我が家で年越しした折り、『最遊記』の既刊5冊を読破している。と、なれば、次に向かうは当然書店だ。
店を出て、ちょっとCDショップに寄り道し、いざ本屋へ …… となった時。いきなり背後ににのらくんが現れた。何故店の数ある新宿で、待ち合わせにはまだ間があって場所も少しばかり離れているにもかかわらず、会えるのか。『魔界都市・新宿』の威力を見た気がした。
ちなみにその後睦月ちゃんは、高島屋タイムズスクエアの紀伊国屋書店で『最遊記』の小説版2冊をめでたくご購入あそばしました(^^)。

で、肝心の『ワニオフ』。待ち合わせ場所で全員無事に巡り会い、向かうはアフリカ料理の『ローズ・ド・サハラ』である。女性陣は女性専用の『シヴァコース』を、男性陣は『キリマンジャロコース』を注文した。『シヴァコース』の内訳は、

ダチョウのたたき
ワニの肉の唐揚げ
アフリカンポテト(さつまいもにスライスアーモンドをまぶして揚げたもの)
ツナと卵とトマトのサラダ
シーフードのぴり辛トマトソース炒めチーズ乗せ
アフリカンピラフ
以上に焼きアイスとドリンクで締めて3500円。

目当てのワニの唐揚げは、友人知人から聞いていたとおり、鶏肉のようだった。調味料のせいでもあるのだろうが、まんま、チキンナゲット。多少肉が硬い気もしたし鶏肉とは違う臭みがあったようにも思うが、ワニと知って食べるのでなければ気付かないかもしれない。
意外なヒットだったのが『ダチョウのたたき』。ワニよりも四つ足動物っぽい肉で、和風の味付けがされていたせいもあって、女性陣の意見が妙な一致を見てしまった。
「御飯が欲しいよねー!」
あれがそのまま御飯やお吸い物と一緒に食卓に並んでも、きっと違和感はないだろう。コース中一番の美味だった。
料理を食べ尽くしたところで、いきなり店の照明が落ちた。何事かと思ったら、出てきたのはデザートの焼きアイス。甘い苺アイスの上に更に甘いメレンゲをのせ、それにお酒を振りかけて点火、焦げ目が付いたところで切り分けて食す、という、まあパフォーマンスを楽しむためのデザートだった。ワタクシの分は謹んで睦月ちゃんに進呈いたしました。はい

料理を食べている間も、決して誰も黙っちゃいない。食べて、飲んで、話して、笑って、過ごすこと2時間強。
かくして新宿の夜は更け、21時30分過ぎに解散となりました。

アフリカ料理、食べた限りではやはりスパイスのきいた味付けになっていたが、それほど辛くもないので、辛いのが苦手な人でも大丈夫だろう。ワニやダチョウも、クセはないので、話のネタに食べに行ってみるのも楽しいのではなかろうか。

 


2000. 5. 4 手作りジャムのススメ

半年に一度、ジャムを作る。春の苺と秋の林檎。
今年も近所の八百屋で苺を買い込んで、夕方からジャム作りに取りかかった。
ジャムを作るのには、技も腕も要らない。ただ根気があればいい。
作ってみたいと仰る方がおいでかもしれないので自己流の作り方を記すと……

材料:苺、適当(笑)
   砂糖、適当(爆)

作り方:
洗ってへたを取り除いた苺を、煮崩れやすいように適当な大きさに切る。
切った苺を鍋(焦げ付きにくいホウロウあたりが良いでしょう)に放り込んで、とろ火で苺が正体をなくすまでひたすら煮る。
しっかり煮崩れたところで砂糖を投入。砂糖の量は好みで。(モノの本には『苺と同量』なんてコワいことを書いてあるが、私は甘いものが得意ではないので多少甘みの付く程度しか入れない。)
全体が煮詰まって最初の量の半分以下になり、とろみがついて、スプーンなどですくってゆっくり鍋におちるくらいになれば出来上がり。ただしこうなるまでに1時間や2時間はかかるのでその辺は覚悟が必要。

林檎ジャムも基本はこれと同じですが、林檎の変色を抑えるためにレモンの絞り汁が入ります。

と、こんなことを書くと、「まめだねぇ」と言う方がいるのだが、実はそうでもない。
朝がパン食なのでジャムの類は欲しいのだが、如何せん私は甘いモノが得意でない。
中学の頃には既に紅茶もコーヒーもノンシュガーで飲んでいた。大学の頃、ブラックコーヒーを買って飲んでいたら、砂糖ミルク入りのを飲んでいたサークルの先輩(男性)に「大人だなぁ」と妙に感心されたこともある。
そんなヤツにとっては、市販のジャムの大半が甘すぎるのだ。
こんな理由でジャムを手作りするヤツって、あんまりいないんだろうな、きっと(^^;)。

 


2000. 5. 2 

マックG4がやってきた。自宅ではない。会社の話だ。
実際には運び込まれたのは4月28日。それから休みを挟んで1日2日とシステムを整えたりソフトをインストールしたり必要なものはアップグレードしたりと、大忙し。
中でも一番忙しいのが『マックの神様』Sさんで、50台近いコンピューターの面倒を、ほぼお一人で見て下さるのだから大変だ。少しでも負担を減らそうと、自分のマックくらいは自分で、と思っても、やはり何だか判らない事態になるとどうしても頼ってしまう。
申し訳ないやらありがたいやら。
それでもやっと、あとは大物ソフトをインストールすればほぼ躾け完了、というところまで漕ぎつけた。やれやれ。
ずっと困っていた『MOの読み込み枚数制限』も解消されて(つまりまだ直ってなかったんです、はい・^^;)、これからは快適な速度でコンピューターが使える♪
でもって、やっと自宅パソをパワーアップ出来るのだ、これで。
うちのはMac Performa5430なので、G3カードを搭載すればパワーアップはいつでも可能だったのだけれど、「会社のが変わるまで待った方がいいですよ」とSさんに止められていたのだ。
そりゃそうだ。
自宅のPerformaより仕事で使ってるのが処理速度が遅かったら、きっとむかついて仕事するのがヤになるだろう(^^;)。

それにしても……1台買ったら次から次へとパワーアップしたくなるという恐怖の『マック貧乏性』って、自分にもあてはまったんだなぁ……。

 


 

 

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