先週のフォン・オッターのリートアーベントに引き続き、マティアス・ゲルネ&アル
フレート・ブレンデルを聴いてきました。プログラムはベートーヴェンの歌曲集「は
るかな恋人の寄す」とシューベルトの「白鳥の歌」を配した魅力あるものでした。既
にチケットは完売でステージ左側に追加の観客席が設けられるという人気公演。さす
がに彼ら二人のリートの世界は凄すぎました。特にモーツァルテウムに響くゲルネの
言葉、歌の美しさは無類のもので、知的で精緻なリートに誰しもが驚く素晴らしさで
した。
歌詞の言葉ひとつにも多彩な抑揚があって、そこに込められた情感、空気といったも
のが、聞くもの釘付けにしました。ブレンデルのピアノも贅肉がなくて、とてもリズ
ムが良いし、ゲルネの言葉と溶け合いながら昇華に至るといった感じ。
6曲からなる連作歌曲集「はるかな恋人」ではブレンデルの端正なピアノとゲルネの
清潔な歌声が、若々しく力感溢れるベートーヴェンを描写していましたし、「白鳥の
歌」も心に迫るほどの深い内容。前半も素晴らしかったですが、後半はより密度の高
い演奏の連続でした。ブレンデルのピアノも主張があって、ゲルネと良い意味でリア
クションを展開するといったスリリングさが何とも言えぬ素晴らしさでした。それに
しても余りにも美しく心に響くリートに会場は床をも踏み鳴らす大喝采となりました。
8/18付けのナハリヒテン紙では、ゲルネの飾り気のない自然なベートーヴェンと、
朗々とした声量で色彩の豊かなシューベルトと賞賛されていました。秋の来日公演
「冬の旅」がとても楽しみです・・・
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