ヴェルニケのドン・カルロはプレミエの年に1度見ていて、マゼールの重厚な演奏に
大いに盛り上がりました。今回もマゼール&ウィーンフィルで、マゼールの棒も前回
よりも冴えを見せて緊迫感一杯のサウンドを展開。平土間最前列の中央でちょうどマ
ゼールのひとつ右の座席でしたから、彼の鬼気迫るタクトに圧倒されそうになりまし
た。コンサートマスターはキッヒュルさんで、幕間にも他のメンバーに譜面上の指示
を与える熱心さ。
キャストはニール・シコフ(ドン・カルロ)、ロドリーゴ(トーマス・ハンプソン)、
エボリー(オルガ・ボロディナ)、フィリッポ2世(フルッチョ・フルラネット)、
エリザベッタ(マリアナ・メシェリアコーヴァ)と前回を遥かに上回る豪華さ。さす
がに凄すぎる内容でした。特にボロディナ、ハンプソン、シコフの三重唱の場面は卒
倒しそうなくらい興奮しましたし、この昂揚感はイタリアオペラ、ヴェルディ演奏の
中でも最高ではないかと。今年5月のホールオペラ「ドン・カルロ」も素晴らしかっ
たですが比較にはなりません。やはりザルツでこれだけのキャストが揃うと奇跡が生
まれるのですね。
ヴェルニッケの演出は好き嫌いが分かれるようですが、小生はこのシンプルな舞台が
好きです。実のところ、前回見たときはボリス・ゴドノフのような圧倒されるような
迫力に乏しいと感じていたのですが、改めて見ると、実に素晴らしいです。電極のよ
うな針が左右からドッキングする場面も、処刑への行進の場面も、合唱をステージ背
面に2次元的に配列する手法にもヴェルニッケならではで、ドラマと一体になった簡
素さがヴェルディの音楽を盛り上げているように感じました。ハンプソンやフルラネ
ットの圧倒的な演技も素晴らしく、エリザベッタを歌ったメシェリアコーヴァ、やや
声量不足に感じましたが、歌のニュアンスがとても良かったです。最強キャストによ
るドン・カルロは最高中の最高でした。
フェストシュピーレ・マガジンでは「リリックさドラマチック、才能とドラマトゥル
ギーへの興味」といった表題でハンプソンの記事がありました。今年の春にはアンフ
ォルタスを歌ったそうで、既にラインゴールドのヴォータン役の声がかかっていると
か。2002年のザルツブルクではアルノンクール指揮でドン・ジョバンニを歌うな
ど益々楽しみですね。なおハンプソン・プロジェクトは面白そうな企画でしたが、オ ペラとバッティングして聞けなかったのは残念でした。
|