Wolfgang Amadeus Mozart
LE NOZZE DI FIGARO
Opera buffa in vier Akten
Text von Lorenzo Da Ponte nach Beaumarchais
KV 492
KLEINES FESTSPIELHAUS
6. August 2001, 18.00 Uhr
Musikalische Leitung Sylvain Cambreling
Regie Christoph Marthaler
Bhnenbild und Kostme Anna Viebrock
Licht Olaf Winter
Dramaturgie Stefanie Carp
Choreinstudierung Donald Palumbo
Il Conte di Almaviva Peter Mattei
La Contessa di Almaviva Angela Denoke
Susanna Christiane Oelze
Figaro Lorenzo Regazzo
Cherubino Christine Schaefer
Bartolo Roland Bracht
Marcellina Helene Schneiderman
Basilio Guy Renard
Don Curzio Eberhard Francesco Lorenz
Antonio Frederic Caton
Barbarina Cassandre Berthon
Rezitativist Juerg Kienberger
Camerata Salzburg
Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor




今日も平土間最前列の真中でどっぷりと珍奇なフィガロを存分に楽しむことが出来ま
した。評判通り素晴らしいプロダクションでした。演出は98年のカーチャ・カバノ
ヴァーを手がけたマルターラーによるもので、このオペラのコンセプトを現代に焼き
なおして大いに楽しませてくれました。舞台はファッション・デザイナーの工房のよ
うな設定で進められ、ステージの左右はショーウィンドウ。正面はStandesamt(戸籍
役場)と記されたガラス張りの部屋で、その奥にもガラス扉で仕切られた部屋があり
ました。さらに天井裏に相当する2階構造になっていて、仕切られた空間でフィガロ
のドラマが多元的に進行するというパターンです。こういった手法は時に煩雑になり
やすいものの、実に上手くまとまっていました。



主役たち以外の人物も細かな演技を行っていくのですが、全くリーズナブルな展開で
ドラマを邪魔することはありません。さらに音楽の状況に合わせた振付が素晴らしく
て、音楽の流れと演出がぴったり。途中1回だけ休憩が入ったほかはまるで映画でも
見ているかのような乗りの良さがあって、キャスト陣の素晴らしい歌とドラマから目
と耳が放せません。デノケやシェーファーの歌は当然のことながら最高の出来で全体
に素晴らしいキャスティングでした。よくもこれだけ歌手のキャラクターを役柄に当
てはめることが出来たものだと感心します。デノケは抜群の歌唱力はもちろんのこと
長身の容姿が伯爵夫人のイメージにぴったりで、Very Pussyと書かれたTシャツを来
たシェーファーのケルビーノはとても新鮮でストレートな役柄でした。表面的にはフ
ィガロのイメージとはかけ離れているとしても、モーツァルトが求めたオペラのコン
セプトは現代にも息づいていることを感じました。



カンブルランは時にカメラマンの役目を演じ、カメラータ・ザルツブルクから生彩感
溢れる音楽を引き出していました。レチタティーヴォも演出家のやりたい放題の脚色
で爆笑。通奏低音はYAMAHAのシンセサイザを操るキーンベルガーが担当。彼は舞台に
現れたり、または天井裏で怪しげな通奏低音を演奏。時に歌手達の演技上の手助けを
行ったり、無言ながらも重要な登場人物の一人に見えてきたのが面白いところです。
ある時はビンを笛のように鳴らしたり、ワイングラスの音階を利用して通奏低音を奏
るなどの爆笑の連発。ついにはヨーデルを披露するといった不思議な登場人物でした。
意味不明の箇所が多いプロダクションでしたが、総じて素晴らしいキャスト陣による
フィガロは極上の出来栄え。マルターラーの演出も表面的な面白さに留まらないで、
本質を捉えたところに聴衆を大いに惹き付けたようで、圧倒的な喝采が熱く続きまし
た・・・