さて今夜はガーディナー&チェコフィル。祝祭小劇場でのコンサートはオペラのセッ
トが置かれたまま演奏されることも多いようですが、今回はオペラのセットも無くて、
代わりにステージを客席側へ延長してオーケストラがレイアウトされていました。従
って今日の座席は4列目となっていましたが、これが最前列となっていました。
前半はベルリーズのローマ謝肉祭の序曲で威勢よく始まり、続いてベルリオーズには
定評のあるスーザン・グラハムが「夏の夜の歌」を歌いました。この局はメゾが全曲
を通しで歌うのが普通のパターンですが、ベルリオーズが作曲した意図に従い、メゾ、
テノール、バリトンが6つの曲を分担して歌いました。テノールはマルク・パドモア、
バリトンはラッセル・ブラウンです。やはりスーザンの出来が素晴らしすぎたので、
全部彼女に歌って欲しいと思いました。最前列で彼女を目の当たりに聞いてオッター
とならび最高のベルリオーズ歌手であることを改めて実感。「アリアドネ」でも大い
に期待できるでしょう。
後半のプロはショスタコーヴィチが「ムツェンスクのマクベス夫人」から5年後に完
成した第5シンフォニーです。奇しくもこれらを昨日と今日の2夜連続で聴くことで、
ショスタコーヴィチサイクルが出来上がったように感じます。第5はマクベス夫人の
あからさまな強烈さに比べるとソフィスティケートされているものの、内から外への
エネルギー放射は凄いです。ガーディナー&チェコフィルは緻密にして繊細さと豪快
さが上手くバランスし、次第に興奮へと導く演奏でした。この曲はちょうどアシュケ
ナージ&フィルハーモニア日本公演の圧倒的に素晴らしい演奏を聴いたばっかりです
が、またまたアプローチの可能性を見せてくれるような演奏だったと思います。ガー
ディナーは数年前にウィーンフィルを指揮して素晴らしいザルツブルク・ライブCD
となっていますが、今日の演奏も卓越した出来栄えで十二分に納得できるものだった
のが嬉しい限りです。
それにしてもフィッシャー&ブタペストの荒削りながらも圧倒的迫力のコンチェルタ
ンテ・オペラとガーディナー&チェコフィルの名演を1日で聞けたのは最高です。ま
さにザルツブルクは奇跡を呼び起こすような魔力に充ちていることを実感した次第で
す。
FESTSPIELE MAGAZIN 2001に掲載されたスーザン・グラハムのインタビューによれば、
ヒューストンにてヘンデルのアリオダンテに出演する予定で、それからセルセに取り
組みたいとのこと。2003年はガーディナーの指揮でベルリオーズ「トロイ」のデ
ィドーを歌うそうです。
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