ザルツブルク日記 2000年8月17日
キルヒシュラガー対談〜『美しきエレーヌ』プレミエ

●キルヒシュラガー対談

Edmundsburg

左からラブル・シュタットラー/キルヒシュラガー
/ランデスマン


音楽祭理事のヘルガ・ラブル=シュタットラーとの対談として「アーティストとの出会い」と称する催しが定期的に開かれている。今日、8/17の朝10時からはアンゲリカ・キルヒシュラガーが出演した。会場は音楽祭事務局のある丘のうえに立つエドムンスブルクの一室。ピンク色の四角い建物は祝祭小劇場のふもとからでも望める。コンチェルトシェフのランデスマンも参加され、彼女の最近のオペラ、おもにウィーンのシュターツ・オーパーでのお話のかずかずと、彼女の最近のCDがオーディオで紹介された。その中でも室内楽を伴うブラームスは素晴らしかった。それにしてもまじかに見るキルヒシュラガーはとても気さくな方で終始笑顔を絶やさない。会場からは質問も沢山飛び出し、和やかなひとときであった。またエドムンスブルクの庭には花が咲いていてとても綺麗だ。ここから眺めるザルツの街も美しかった。




今日のミラベル公園か見るホーエンザルツ

●美しきエレーヌ/プレミエ
Jacques Offenbach
"LA BELLE HELENE" Opera baouffe in drei Akten

Musikalische Leitung : Stephane Petitjean
Regie, Buehnenbild
und Kostueme : Herbertzuber Wernicke
Dramaturgie : Xavier Zuber
Choreographie : Andrew George

Paris : Alexandru Badea
Menelas : Dale Duesing
Agamemnon : Victor Braun
Calchas : Buddy Elias
Achille : Lynton Black
Ajax I : Doug Jones
Ajax II : Philip Doghan
Helene : Nora Gubisch
Oreste : Dominique Visse
Bacchis : Jacqueline Van Quaille
Leoena : Henrike Jacob
Parthenis : Cecile De Boever

Solisten des Orchestre de Paris
Denis Clavier(Violine 1),Christian Briere(Violine 2), Ana Bela(Viola), Eric Picard(Violoncello), Bernard Cazauran(Kontrabass), Vicens Prats(Floete), Helene Devilleneuve (Oboe), Philppe Berrod(Klarinette), Amaury Wallez(Fagott), Michel Garcin-Marrou(Horn), Bruno Tomba(Trompete), Daniel Breszynski(Posaune), Alain Jacquest(Schalagzeug)

NEUINSZENIERUNG
PERNER-INSEL, HALLEIN
Premiere 17.August 2000 19.00 Uhr
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今日はオッフェンバックの美しきエレーヌのプレミエだ。エクサンプロヴァンスとの共同プロダクションで既に上演済みだがザルツブルクでは始めてとなる。そもそもこの作品は余り見るチャンスが少ないので見逃すことができない。会場はザルツブルクから車で約30分ほどのハラインにある。ペルナー・インゼルという大きな工場のような建物である。ここは何年か前に音楽祭正式プロとしてミュ
ージカルSOONを見た会場だ。そもそもザルツよりも山奥なので雨が降りやすい。前回も大雨が降った経験から、コンパクト傘を持参する。

会場までは音楽祭のバス・サービスがある。開演19時の1時間前にカルテン・ビューロー横のトンネルを越えたバス停から出発する。2台のバスに分乗するが、それほどの満席とはならなかった。おそらくマイカーで行かれる方も多いためだ。ホーエンザルツブルク城の裏を通過して、美しい山々を望みながらハラインを目指す。山の中を流れる小川を越えるともう会場だ。

今日の演出はヴェルニケなので大いに期待する。ちょうどトロイもそうであったようにエレーヌの物語もトロイに端を発する。ギリシャのお話をパロディにしたとはいえ、ベルリオーズのトロイと共通する演出が期待できるのではと思うのである。会場にはオーケストラピットも設えられ、真っ赤なカーテンが仮設オペラ劇場を彷彿とさせる。室内楽ヴァージョンのアンサンブルが威勢のよい響きを奏で、登場人物たちがカーテンの隙間から登場し、喜劇が始った。

ステージは半円形にカーブした室内。白い壁に中央に大きな扉がある。なるほどトロイの巨大な半円形の壁に共通したところがある。中央に円形のテーブルがあり、パロディックな演出で大いに笑わせてくれる。一番びっくりしたのはカウンター・テナーのドミニク・ヴェスがパンプ姿でバイクに乗って舞台に登場したこと。爆音を鳴らしながら、二人のカンカン娘を乗せてステージをくるくると走り続ける。これに彼独特の声でオペレッタを演じるのだからアンバランスさがとても新鮮で、見るものを釘付けとした。

全幕を通して基本舞台が変わらないが、円形のテーブルは円形のベッドになったり、円形のバスタブになったりして場面変化を表現。ま、とにかく彼らの馬鹿騒ぎが大いに楽しい。機関車の場面ではミニチュアのSLが舞台を走り抜けてとても滑稽だ。ちなみに幕切れではSLがトロイの木馬と戦車を積んだ貨物列車として走り抜けたのには大いに爆笑した。

音楽はパリ管弦楽団のメンバーによる室内楽。室内楽できくものだから、どこかバロック・オペラを思わせるところがあり、ベルリオーズのトロイヤに対するコントラストが鮮やか。オペレッタのアンサンブルもすこぶる軽快で、青リンゴをキーワードとした演出と上手く噛合っていた。幕間には案の定、雨が降ってきた。かなりの大雨で雷が鳴り響き、第2幕途中では雷が妙に舞台の場面とマッチングしたのには苦笑する。この日はザルツブルクでも久々の雨となり、夏の風物詩を感じるのであった。